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歌うことば〜作詞ワークショップ③

第四回作ってみよう④自由なテーマで8月25日(水)

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この日は自由。全て自由。前回、決まったテーマが不自由だった人は好きなことが書ける。逆に、自由すぎてどうしていいかわからない人は、テーマがあるほうが書きやすいと気づくだろう。それだけのことだ。

いきなり書くのもしんどいだろうから、助走がわりに曲を紹介する。8月なので反戦歌を紹介することにした。

①1950 イタリア映画「越境者」の主題歌「しゃれこうべの唄」(日本語訳つきで)
②東京放送合唱団の「しゃれこうべの歌」
③森繁久彌バージョンの「しゃれこうべと大砲」
④浜田真理子バージョンの「しゃれこうべと大砲」

を順に聞いてもらう。これらは全部同じ歌(メロディ)なのだけれど、歌詞がちょっとずつ違う。時代とアレンジの仕方によって、少しずつ意味が違ってくるということを歌詞に出てくる「鐘の音」を例に話した。

①の訳詞では大砲が出てこない。「俺が死んでも教会の鐘はならずじまい」鐘は教会の葬式の鐘。
②になると大砲が出て反戦歌らしくなる。鐘はこれもおそらく葬式の鐘。
③は②と歌詞は同じだが、「鐘の音も知らずに死んだ」のあとに、結婚行進曲がギターアレンジで流れる。教会は教会でも結婚の鐘の音である。
④は②③と歌詞は同じ。結婚行進曲もそのままピアノで演奏した。

こんなふうに鐘の音は、時に葬式の教会の鐘になったり、結婚の鐘になったりする。

さらに、④は2009年のNHKドラマ「白洲次郎」の中で使われたもの。白洲次郎に農業を教えた青年が戦死して骨で帰ってきた時、田んぼの畦道を通る葬列のシーンで流れてきた。その鐘は教会の鐘でなく、村人が手に持って鳴らす小さな鐘だった。

「鐘」という言葉ひとつとっても、これほど多様なイメージが喚起されるのが楽しい。そんなのたいしたことではない、と言われそうだけど、わたしはこういうところがすごく面白いと思っている。

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それから、もう一曲反戦歌を紹介した。おおたか静流さんのアルバムに収録されている朗読詩「安典さんへ」とおおたか静流さんの楽曲「あの夏のまま」の二つ。

「安典さんへ」は長野県にある戦没画学生の絵が展示されている無言館の来館者用のノートに書かれていた手紙をもとにした詩である。日高安典さんという学生さんが描いた絵のモデルだった女性が、戦後五十年近く経って、絵に描かれた自分の絵に会いに行くというストーリーで涙なくしては聞けない素晴らしい詩だ。

その詩にインスパイアされておおたか静流さんが「あの夏のまま」という曲を作っている。ふたつを並べて聞いてみると「安典さんへ」と「あの夏のまま」は同じストーリーなのだが、文字数、情報量が全く違う。「あの夏のまま」には手紙ほどのディーテイルは書かれていないけれど、手紙のエッセンス、「わたしの心はあの夏のままです」という部分が繰り返される。それだけで十分なのだなあ。この二つは、詩/手紙が歌詞になる瞬間ともいえてとても興味深い。

そんなおまけのような話をして、自由なテーマで歌詞を書いてもらった。この日も同じ班の人と鑑賞し合ってもらう。

実は県民会館スタッフに頼んで、参加者同士、初回から五回まで、必ず違う人と隣り合わせになるというルールを作った。仲のいい友達と参加しても、ばらばらに座ってもらうのだ。それで、四人ずつの班分けをする。五回もやると大体全員と顔見知りになれる。一度も言葉を交わしたことがない、という状況を避けるためだ。

だって、知らない人の前で自分の書いた詩を読むなんて、そんな恐ろしいことわたしなら緊張して嫌だもの。

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第五回 発表

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ついにこの日が来てしまった。参加者の人にこの講座で書いた歌詞を自分で読んでもらう。県民会館の方に演台を作っていただいた。

この日は文字をスクリーンに映し出すことはせず、朗読のみで味わう。歌は何度も読むことができない。それをちょっと試してみたかったのだ。一度聞いただけで、全て理解することはなかなか難しいとわかる。

みな力作で、でもとても楽しんで作られた様子がわかった。あえてみんなと同じやり方で作ってみることで、自分なりの作り方も見つけることができたかもしれないとも思う。お一人お一人にその場でコメントは添えたけれど、じっくりまた読ませてもらって、感想などお送りしようと思っている。(参加者のみなさんには後日メルマガ的に感想お送りすることになった。まだ送ってませんが、年内にはなんとかがんばります。)

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    終わってからもみんなで余韻に浸っている感じ。

何より嬉しかったのは、二ヶ月にわたる五回の講座で一人も脱落した人がいなかったことだ。むしろ終わるのが残念、もっとやりたいと言っていただけてわたしも嬉しかった。コロナ禍の夏、はじめの一歩をみんなと経験できてよかった。県民会館のスタッフのみなさんには雰囲気作りをしていただいたりお世話になりました。この講座、これからどんなふうに転がっていくのか楽しみです。メロディつけることもやってみたいですね。わたしもがんばらないとなー(のび太ポーズ)。おしまい。



一週間に一度くらいの頻度で記事をアップできればと思っています。どうぞよろしくお願いします。