夏休みの帰省で再会したのは、冬に消息を絶った幼馴染だった。彼女は何を思って行方をくらまし、地元に帰ってきたのか。逃げた女と追う男の邂逅。
histoire(イストワール)は、フランス語で「物語」。 士族の家に生まれ、外国人居留地にある女学校に通い、外交官に嫁いだ「みよ」。傍目から見ると華やかな暮らしの中にも、色々とあるようで……。
父を亡くした母の再婚により、兄と共に夫の実家で同居する伯母の下に預けられた「僕」。しかし、伯母一家も1年も経たないうちに亡くなり、兄弟は唯一の生き残りで、血縁上も戸籍上もほとんど繋がりのない「ミリちゃん」と共に暮らすことになる。 僕より年上の「ミリちゃん」だが、当時はまだ少女だった。それでも彼女は、親代わりになって兄弟の面倒を見て……。
自己紹介を兼ねたエッセイです。
「……そんなわけで、最近のうちの人といったら、もうお名前を考えていらっしゃるのですわ」 それから一週間も経たない大正十二年九月一日は、湿度が高く暑苦しい日だっ…
「だいぶ大きくなったようだな。まだ動かないのか?」 東京の騎兵第一連隊付で、この八月に陸軍中尉に昇進した兄は東北旅行の帰路、友人と共に訪ねてきた。 年齢が近…
「お医者さまって、男の方なんでしょう。恥ずかしくないの?」 余裕があるとはいえない家計で、三児の子育てに忙しい八歳年上の姉が祝いの贈り物を持って訪ねてきた。 …
京都で独り暮らしをしている母は上京することが多かったが、その時は必ずと言ってよいほど鎌倉にも足を運んでいた。 彼女の結婚の前年に嫁いできた兄嫁が結婚二年目と…
「お母さま、今までありがとう存じました」 婚儀が執行されたのは、大正十一年七月十九日のことだった。 人々は専ら数え年で年齢を数えていたが、公的には満年齢を使…
「行って参ります」 風呂敷包みを手に、五十分の道を毎朝歩いて通った。病気のため高等女学校二年を一年留年したが、それ以外は欠かさなかった。 高等女学校五年を六…