009 引き出しの中の言葉
「大学で何を勉強してきたの?」
「どんな仕事をしているの?」
そう問われたら、自分がしてきたこと、していること、分野。用意している言葉をつらつらと並べることはできる。そして、そのどれもが、社会的な課題が絡められている。
だけど、気付いてしまった。
本当は、社会課題の解決の方法よりも、心に傷を抱えたたった一人への寄り添い方を知りたい。知りたかった。
今はまだ、未来の為にどうすればいいのか、見つけられずにいるけど。
それでも少しずつ、今まで言えずにいたことを、言葉にしようと思う。たった一人に、寄り添えるように。
ではどうやって、言葉にしていくのか。どうやって、想いを込めるのか。
誤解を恐れずに言ってしまえば、人が発する言葉は、きっと誰かの寄せ集めだと、思っている。
それはつまり、いつかどこかで聞いた誰かの言葉たちが、私の引き出しに溜められて。いつか引き出されるということで。
かつて誰かが私に気持ちを込めて投げかけてくれた言葉が、私が今度違う誰かに同じ想いを投げかける時に、私の言葉の一部になったりするんだろう。
そうだとしたら、私が発した言葉も、誰かの一部になるかもしれないということだ。引き出しにしまっておきたいと、大切にしたいと思える言葉に。
「落ち込んだ時こそいいことの兆しが見える」
一年前の春、大切にしたいと思える言葉に出会ったように。私も、私が発した言葉が誰かにとって大切にしたいと思える言葉になれたら。そんな風になれたらいいな、と思う。
だからまずは、引き出しの中にある言葉たちを紡ごうと思う。
言葉で、寄り添えることができると。いつか。
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