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全部登山靴のせいだ

靴の悩みを持っている人はおそらく大勢いるのではないかと思う。私も若い頃から靴屋さんに行くのが憂鬱な方だ。もともと足が大きい。可愛い靴が入らない。

無理してハイヒールなんて履く必要はとっくの昔になくなった。今は歩きやすいのが一番。

子どもが手を離れた頃、海じゃなくて山に行きたくなった。白馬の山を見てからか、はたまた上高地か。バスツアーじゃなくて山に行ってみたい。そのための装備を始めた。

近くの街の大手のアウトドア用品店巡りをしたけどなかなか足入れの良い靴に巡り会えず山歩きが始められない。まだまだ遠い夢、憧れのまま。私には山歩きは無理なのかな〜と山の雑誌の写真を見てはため息をつくばかり。

どうしてそのお店に巡り会ったのか、確か友人がアメ横で登山靴を買った話をしていたからだったような記憶がある。上野の美術館に行った帰りにそうだ、アメ横に寄ってみよう、と思いついたのが3年くらい前。まだまだコロナ禍など想像もしない頃。

東京の方以外はピンと来ないかもしれないけれど、アメ横は上野から御徒町まで続いている商店街で、上野は数々の文化の香りの高い施設と、雑多なアジアの食品や衣料品などが売られているなかなかカオスなお店が併存するほかに類を見ない街だ。

そのアメ横、スポーツ用品店も数え切れないくらいあってゴルフ用品やスキー、山グッズと軒を並べる。その日の目的はもちろん登山用品店。狭い階段を登っていったら山にめちゃくちゃ詳しいお兄さんが待っていた。

アメ横はなんでも安売りのイメージを持っていた私が馬鹿だった。ちゃんとした登山靴ってこんなにお値段が張るのね〜と思い知るとともに奇跡的に自分の足に合う靴に遭遇。ドイツ製の皮の靴だった。

「この靴で登れない日本の山はないですよ」

と言ったお兄さんは私の腕前?足前?をご存じない。けれど魔法の靴のように勘違いした私は大枚を叩いていた。さんざん探してやっと見つかったのだから。

美術鑑賞に行った上野でヘソクリでえらい買い物しちゃったなぁと思いつつ、ワックスなど3種類も一緒に買ってしまった。

それから2度ほど低山歩きをしてのコロナ禍。去年は念願の屋久島に持っていった。ようやくそれが落ち着いたのでこの秋は高尾山に2度も登り金時山を制覇し尾瀬にも行った。来週は大山、再来週は陣馬山が私を待っている。

歩いている途中はなんで山に来たんだろうと苦しくてもうやめたい。この靴さえ買わなければきっと山に来てなかったよなぁ、とさえ思う。後ろから健脚なお年寄りがどんどん抜かしていく。足は痛くならないにしても履きさえすれば楽々山登りが得意になる魔法の靴なんかじゃなかったんだ。

それでもこんなへなちょこ山ガールの私と一緒に登ってくれる友人や家族がいることに感謝しつつまた山に向かう。その頂上の清々しさが癖になる。靴の寿命は一般的に6年くらいとか。期間限定の山歩き、歩くたびに単価が下がっていくことにも密かに喜びを覚える私ってどこまでも主婦かもしれない。

では行楽の秋を皆様もお楽しみください。

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