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JAPAN⇄CANADA 1-3

引越しを告げられた翌日もいつもと変わらず当たり前のように訪れ、当たり前のようにみんな朝の支度をしていました。当然私も部活があったので、いつもの時間に起きて、朝ごはんを食べて、着替えを済ませて準備をしました。気が重かったけれど、部活へ行って前日のことから現実逃避できると思い、悲しい気持ちを押し殺して友達と学校へ向かいました。部室へ入ると、仲間はいつも通りに出迎えてくれていつも通りにミーティングが始まりました。普段と変わらず接してくれる仲間の存在がすごくありがたかったです。部活で練習している間は引越しのことを完全に忘れることができました。結局この日はみんなに引越しのことを伝えなかったのを覚えています。現実と事実から目を逸らしたくて、家に帰っても引越しのことを話すことはありませんでした。

その次の日も何事もなかったかのように日常がやってきて、部活へ向かいました。そしてこの日も当たり前のようにクラリネットの練習をして1日が過ぎていきました。ただこの日は、前日と違っていました。楽器をしまっている時に、ふと家に帰りたくないなと思いました。人生いきてきた中(と言ってもたかだか17年弱だけれど)で初めての感情でした。そんないつもと違う私に気付いたのか同期が声をかけてきました。こうなったら私の感情はもう抑えられません。引越しのことを告げるや否や、涙が溢れ出し、止まらなくなりました。突然のニュースにみんな驚いて、反応に困ったことでしょう。みんなの心配ごとを増やしたくなくて言わないようにしようと考えていたのですが、やめることができませんでした。

そこへやってきたのが顧問の先生方でした。この年の異動で新たに顧問になった先生と、創部以来顧問をしていた先生の2人が泣いてる私に気づき話しかけてくださいました。着任して数日の先生に泣きながら4ヶ月後の引越しのことを伝えるのは酷だなと思いながらも、開いた口が閉じることなく、ただひたすらにその時の心情を訴えました。先生は流石の対応力で、私の話を真摯に受け止めてくれました。その時の会話の内容はもう覚えていませんが、先生に話を聞いてもらって大分落ち着いたのでした。この日はこれでひとまず解散となり、家に帰ることになりました。帰りの電車ではあえて引越しのことは話さなかったような気がします。みんな気を使ってくれたんだじゃないかなと思います。

現実を受け入れたくなくて、誰にも言いたくなかった引越しのことを部活で告げることによって心が少なからず軽くなりました。そして、辛い時も相談できる人がいっきに増えて嬉しかったです。本当の自分がさらけ出せる場所ができたことに安心感も覚えました。そしてこの日から引越しまで、とてもとても濃い最後の4ヶ月が始まりました。

-つづく-

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