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つきのむら(創作小説・短編集)

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自作短編小説です
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#小説

むーちゃん

むーちゃん

「むーちゃん!」
 スーパーマーケットの入り口で、いきなり背後から肩を叩かれた。振り向くと、白髪頭の小柄な老婆が立っていて、私と目が合うと、しわくちゃの笑顔になった。
「やっぱりむーちゃんだ! 心配してたのよ、いきなりいなくなるんだもの」
 私はこの老婆をまったく知らない。“人違いです”と告げる間もなく、老婆は自動販売機の前まで走っていき、2本の缶コーヒーを両手に持って戻ってきた。

「少しくらい

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飛行機雲

飛行機雲

 青い空に、一筋の飛行機雲が流れていた。
「そろそろ行くわよ」
 母親に言われて振り向いた。両親の離婚のため、俺は母親に連れられて母親の実家に行く。中学進学の時期に合わせて引っ越しするのだ。そこにはあんまり会ったことがない婆ちゃんが住んでいる。
「田中君に挨拶したの?」
「ううん、後で電話する」
「そう」
 俺のつまらなそうな口調に合わせるように、母親も口をとがらせた。田中とは小学校の6年間、ずっ

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逆回転

逆回転

 もうおしまいだ。
 俺はアクセルを思い切り踏んだが、車輪は空回りするばかりだった。
 なんでこんなことになってしまったんだろう? 時間をさかのぼってみる。

 半年前、大学時代から恋人同士だったユキと同棲を始めた。

 3か月前、俺は上司と喧嘩をし、勤めていた会社を辞めて、ユキが立ち上げたばかりの事務所の仕事を手伝うことになった。ユキは「これからは二人分、稼がなくちゃね」と気丈な笑顔を見せた。

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ばけもの

ばけもの

 同棲していた彼女と別れることになった。
 彼女は複雑な育ち方をしていて、付き合い始めたころから、
「結婚はできない」
 と言っていた。
 それでも俺は彼女の良いところをたくさん知っていたし、彼女が作るご飯は美味しかったし、彼女の笑顔が好きだったから、一緒にいたいと思った。
「複雑な事情を持った異性とは付き合わないほうがいい」
 なんていう一般論もあったが、関係ない。俺は彼女と一緒に生きていきたい

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ふるさとの高い空

ふるさとの高い空

 10年ぶりに帰ってきた。我がふるさと。

 小学校5年生に上がる年に、親の都合でいきなり引っ越すことになった。友だちに挨拶もできずに、この地を離れた。

 帰りたいなあ、友だちに会いたいなあと思いながら、帰ってくるきっかけがつかめなかった。ちょっと前に、同級生だった山下がネット上でつぶやいているのを発見。連絡を取り合って、会うことになった。

「コウちゃん」
 駅を出たところで声をかけられた。見

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