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mari@リハビリ中ライター
2019年4月5日 00:27
「むーちゃん!」 スーパーマーケットの入り口で、いきなり背後から肩を叩かれた。振り向くと、白髪頭の小柄な老婆が立っていて、私と目が合うと、しわくちゃの笑顔になった。「やっぱりむーちゃんだ! 心配してたのよ、いきなりいなくなるんだもの」 私はこの老婆をまったく知らない。“人違いです”と告げる間もなく、老婆は自動販売機の前まで走っていき、2本の缶コーヒーを両手に持って戻ってきた。「少しくらい
2019年3月17日 22:53
青い空に、一筋の飛行機雲が流れていた。「そろそろ行くわよ」 母親に言われて振り向いた。両親の離婚のため、俺は母親に連れられて母親の実家に行く。中学進学の時期に合わせて引っ越しするのだ。そこにはあんまり会ったことがない婆ちゃんが住んでいる。「田中君に挨拶したの?」「ううん、後で電話する」「そう」 俺のつまらなそうな口調に合わせるように、母親も口をとがらせた。田中とは小学校の6年間、ずっ
2018年11月18日 14:49
もうおしまいだ。 俺はアクセルを思い切り踏んだが、車輪は空回りするばかりだった。 なんでこんなことになってしまったんだろう? 時間をさかのぼってみる。 半年前、大学時代から恋人同士だったユキと同棲を始めた。 3か月前、俺は上司と喧嘩をし、勤めていた会社を辞めて、ユキが立ち上げたばかりの事務所の仕事を手伝うことになった。ユキは「これからは二人分、稼がなくちゃね」と気丈な笑顔を見せた。
2018年8月2日 21:04
同棲していた彼女と別れることになった。 彼女は複雑な育ち方をしていて、付き合い始めたころから、「結婚はできない」 と言っていた。 それでも俺は彼女の良いところをたくさん知っていたし、彼女が作るご飯は美味しかったし、彼女の笑顔が好きだったから、一緒にいたいと思った。「複雑な事情を持った異性とは付き合わないほうがいい」 なんていう一般論もあったが、関係ない。俺は彼女と一緒に生きていきたい
2017年12月3日 11:25
10年ぶりに帰ってきた。我がふるさと。 小学校5年生に上がる年に、親の都合でいきなり引っ越すことになった。友だちに挨拶もできずに、この地を離れた。 帰りたいなあ、友だちに会いたいなあと思いながら、帰ってくるきっかけがつかめなかった。ちょっと前に、同級生だった山下がネット上でつぶやいているのを発見。連絡を取り合って、会うことになった。「コウちゃん」 駅を出たところで声をかけられた。見