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話の方向性を、間違えてしまった気も~『弥栄の烏 八咫烏シリーズ』(阿部智里)~

*この記事は、2020年5月のブログの記事を再構成したものです。


前巻の『玉依姫』と裏表の関係にある作品です。小野不由美の「十二国記」でいうと、『魔性の子』と『黄昏の岸 暁の天』にあたる関係ですね。

↑kindle版


前巻であまりに「十二国記」的と感じたためか、類似点が次々に目についてしまいました。記憶(ないしは力)を取り戻せない登場人物とかね。いえ、間違いなく模倣ではなくオリジナル作品ではあるのですが。


『玉依姫』を読んだ時点で、八咫烏の世界はとんでもないことになっていると想像はついていましたが、予想を超えていました。真の金烏(八咫烏の世界の支配者)の参謀役となった雪哉は、偽悪者をきどっているだけかと思っていたら、ついにとんでもないことをしでかしました。


この巻では「過去の罪」というのがキーワードの1つなのですが、それへの対処の仕方が、個人的には全く気に入りませんでした。もちろん、あの結末だからこそ、今後の展開が気になるとも言えますが。


でもどうしても、話の方向性を誤ってしまった感がぬぐえないんですよね。この後、外伝は1冊出ているものの、とっくに出ているはずの本編の続きがいまだ出ていないのは、作者自身が続きをどうしていいか迷っているからかもしれません。

<注>2020年9月に、第2部の最初の巻にあたる『楽園の烏』が出版されました。


「十二国記」の3分の1の国(領土)の数の八咫烏の世界ですが、話のスケール自体が3分の1にならないことを祈ります。


見出し画像には、この話では猿が大きな役割を果たすため、猿の画像を使わせていただきました。

↑文庫版




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