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美輪さんに守られた日

私が大学に入りたての頃は、スマホはまだ主流でなくガラケーの時代。今ではスマホケースで個性を出すけど、昔は携帯電話自体がその手段だった。インフォバーやqpotは1番尖っていた。

待ち受け画面に関しては壁紙をダウンロードできるサイトがあったり、みんなネットのどこかで拾った画像を使っていたと思う。「待ち受けにすると恋が実る」とか、「合格祈願」といった、願掛け系のものもあったものだ。

それで、一時期美輪明宏の待ち受けが流行った時に「これは効きそうだ!」と思ってダウンロードしてみた。画面を見るたびに美輪さんが微笑んできて、神聖な気持ちになった。これなら良いことがありそうだ。

しかしある日、実家でお風呂に入ろうと携帯電話を洗濯機の上に置いた時のこと。今思えば置き場所が悪かった。洗濯機の蓋が開いていて中に携帯が落ちてしまったのだが、その時不吉な音がした。

「チャポン」…だと?!

慌てて中を見ると、夜なのになぜか洗濯機に水が入っていてそこに携帯を落としてしまった。なんてこった!!買ったばかりの携帯がぁぁぁ

急いで拾ったものの、画面を見てもうダメだと悟った。三輪さんの待ち受けがゲームボーイの画面みたいな暗い緑色になり、ジジジ…と砂嵐になっていた。ある意味雰囲気のある絵面になった。

携帯は買い替えざるを得ないとして、とりあえず翌日は壊れたまま大学へ行った。何度見ても三輪さんは緑色のままだ。

冴えない気分のまま校内を歩いていたせいか、階段を降りていた時に足を踏み外してしまった。
手すりがない方を歩いていたので掴まる場所もなく、バランスを崩しながら景色がスローモーションになった。

「この転び方はダメだ、終わった」

後ろでなく前に突っ込む形で倒れ、私はスーパーマンのようなポーズで10段ほどスライディングした。現実はエンドレスショックのようにはいかない。

痛さよりスライディングした自分に驚きが大きく、何秒かフリーズした。
起きあがろうとした時、近くを通りがかった知らない女性が「大丈夫ですか?!」と声をかけてくれたぐらい派手に転んだらしい。

だ、大丈夫です…ありがとうございます。
そう言って私はよろよろとその場を去った。すごい転び方をした割に、流血も打撲もしなかった。

今日まで、きっと美輪さんの待ち受けが変な色になったからバチが当たったのかもしれないと思っていた。記事のタイトルもその路線にしていたし。
でも今思えば、怪我がなかったのだからあれは不幸中の幸いだったのかもしれない。
スライディングして前歯が折れていたかもしれないし、骨折していたかもしれない。はたまた死んでいたかも。無傷で済んだのはきっと美輪さんのおかげだ。

また待ち受け美輪さんにしようかな。

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