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「文学部不要論」は不要論 其の弐


前回は文学部のデメリット(というか、まあそんなに強みではないと思われる点)についてつらつら書きました。

ここからは逆にそんな文学部で学ぶことの強みとは何かを、考察していきたいと思います。

なお、以下の内容はあくまで私個人的な意見なので、異論反論はご勘弁ください。

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外国語のスキルが嫌でも身につく

まずは英語プラスαの語学力のスキルが身につくということ。

例えばフランス文学科ならフランス語、ドイツ文学科ならドイツ語が、英語の(もちろん日本語も)他に自由に読み書きできなければ、話になりません。

本屋さんで販売されている、日本語訳の文庫本を読んでそれで終わり。

これはあくまで趣味の領域であって、専門として研究する場合は、最低でも原著の文章で読めないといけない。

私は哲学科だったので例を挙げれば、専門分野によっては、ドイツ語やフランス語のほかにも、ギリシア語やラテン語、場合によってはヘブライ語とかアラビア語の能力も必要になったりします。

その為には必要な外国語を必死で学び、否が応でも外国語スキルを身に着けることができるというわけです。

他の学部でも外国語を学ぶことは勿論ですが、文学部の場合は学問の性質上、特にその傾向が顕著だと思われます。

文章力がそれなりに鍛えられる

当たり前ですが文学部に入学したからには、専攻を問わず、膨大な量の読書をしてナンボです。

そして試験では専攻により多少の違いはあるかもしれませんが、それなりの「アウトプット能力」も求められます。

ここでいう「アウトプット能力」とは、課題図書や与えられたテーマに関して、自分なりに考え、よく咀嚼して、それを文章として表現すること。

この作業の繰り返しによって、それなりの文章力というものが鍛えられます。

この能力は、たとえその内容が実学向きでなかったとしても、実社会で役立てることができると思います。

「答えのないもの」に挑戦するということ

昔、学校の先生からこんなことを言われなかったでしょうか。

「算数には『絶対的な答え』があるけど、国語にはないよ」。

「絶対的な答え」といっても難しいですが、ひとまず「全ての人にとって正しく、どのような反論の余地も許さない答え」とでも定義しておきます。

その「絶対的な答え」でない分野、「答えのないもの」に挑戦すること。
それこそが文学部で学ぶ醍醐味の一つ
だと思います。

哲学で例をあげます。

「近代哲学の父」ことルネ・デカルトは「我思う、ゆえに我あり」(コギト・エルゴ・スム)という有名な命題を発見しました。

この命題は確かに一定程度「絶対的な答え」だと評価されています。
(余談ですが、デカルトは元数学者でもあります)

ではこの「絶対的な答え」が発見された以上、そこで西洋哲学は完結したかといえば、そうではなかったのです。

例えば前提条件としての「絶対的な答え」は認めても、そこから導きだされる答えに異論を唱えたりという哲学者たちが、後に現れてきました。

日本文学にも「○○派」などという流派があるでしょう。

多様な考え方や表現。
それらを認めながら、自分なりの考え方を深めていく。

この作業が楽しいと思える人には、文学部は向いていると思います。

実は多くの人に好まれているのかも?

前段のデカルトに代表される考え方は「大陸合理論」と呼ばれます。

それに対してジョン・ロックやディビット・ヒュームといった「イギリス経験論者」たちが、ノーを突きつけました。

大陸合理論vsイギリス経験論の戦いはその後「ドイツ観念論」によって「綜合」あるいは「止揚」され、欧米諸国は西洋哲学の考え方に大きな影響を受けながら、ピューリタン革命やフランス革命、そしてアメリカ合衆国の建国という激動の時代に入っていきました。

「文学は役に立たない」という人たちは、このような事実をどう考えるのでしょうか。

たとえば「孫子の兵法」や「論語」を好んで読まれるだけでなく、実際にビジネスの現場でも応用している経営者の方々のお話も、よく耳にしますね。

「文学部で学んだかどうか」ということと、「文学部の存在価値の有無」は、イコールではありません。

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まあ、「文学部不要論は不要論 其の弐」ということで。
またつらつらと書いてみました。今回は、この辺りにしておきます。

また気が向いたら、続きを書く機会が来るかもしれません。

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