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筋トレをマーチングに生かす~考え方・プッシュアップ~

ほとんどのマーチングバンドでは、筋力トレーニング(筋トレ)が練習メニューに入っていると思いますが、何のために筋トレをするのかを考えたことがありますか?

すぐに疲れてしまうとき、できない動きがあるとき、なんでもかんでも筋肉を強くするだけでは解決しません。

スポーツでは当たり前、もしかしたらスポーツをする人でも誤解しているかもしれない筋トレの基本的な考え方と、実践編として身体の協調を使ったプッシュアップを紹介します。

[基礎編]筋トレの目的

ひとくちに筋トレといっても、様々な目的があります。

 ・筋力、筋持久力アップ
 ・筋肉を大きくする
――――――――――――――――――
 ・姿勢を改善する
 ・運動効率を上げる
etc...

ここでは2つのグループに分けてみました。
それぞれどう考えればよいのか見ていきましょう。

①筋肉を強く大きくする
言葉の通り、絶対的な筋力の強化です。各部位の筋肉単体で発揮できる力を大きくするのが目的です。
筋肉は大きくなれば力も強くなります。大きい筋肉は見た目的にもかっこいいので、大きくたくましい引き締まったナイスバディを目指す人は、より重く効率的に追い込む筋トレをします。

②筋肉を使えるようにする
良い姿勢や効率良い動きを作る、つまりパフォーマンスアップを目的とするなら、全身の筋肉をバランスよく協調させて使えるかが大切です。
筋肉はどこかが使えないと別のところでかばう性質があるので、放っておくとバランスが偏ってしまいます。なので、強化ではなく「活性化」を目的にトレーニングをします。


一般の方やトレーニング初心者にありがちなのは
「姿勢が保てないのは○○の筋肉が弱いからだ!」
と勘違いしてその部分を重点的にトレーニングする、というケースです。

よく考えてください。筋トレをして筋力を上げなければ身体を支えられないのなら、世界中のほとんどの人は自重に耐えきれず潰れてしまうと思いませんか?

生まれたばかりの赤ちゃんは筋トレをしないのにどうやって歩けるようになるのでしょうか?


生活に必要な筋力というのは、元から備わっているもので、日常の中でその筋力を維持しています。姿勢が悪くなったりすぐに疲れてしまうのは、現代人の偏った生活によって使いたい筋肉が使えなくなっているのです。

「筋力の強さ」と「姿勢や動きの良さ」は別物として考えましょう。
「姿勢を正すために腹筋を鍛えましょう!さあクランチ!プランク!」というような情報の浅いものは間違いなく”エセ”筋トレです。気を付けましょう。

[基礎編]筋力アップとパフォーマンスアップ

①筋力アップの場合
筋肉を強く大きくするには、特定の部位を狙って力を発揮させ、重りを持ち上げる限界ギリギリまで追い込むという作業が必要です。

追い込まれた筋肉は筋繊維が傷つきますが、これは栄養をとって休養することで元に戻るのですが、筋トレ前の状態よりも少し大きいところまで回復します。

この性質を最大限利用することで、筋力アップを図ります。
種目は沢山ありますが、共通して言えることは、「あえて効率の悪い動きをする」ということです。

これは、筋肉を協調させないように特定の筋肉だけ使うことで負荷を集中させ、追い込みやすくするためです。


②パフォーマンスアップの場合
動きの効率化や姿勢改善のために必要なことは大きく分けて3つ。

・使えていない筋肉を活性化させること
・全身を協調させること
・身体の使い方を覚えること

追い込むトレーニングとは反対に、いかに効率良くラクに動けるかが重要になります。

目安としては、「しんどい、きつい」と感じた時点で目的からは外れています。
効率良く動くためには、力は弱いが持久力のあるインナーマッスルを使えるようにする必要がありますが、きついと感じるときには力が強くて疲れやすいアウターマッスルを多く使っています。

また、活性化させた筋肉を使って動きを作る際に、使い方を脳と身体にインプットするという練習も必要です。
流れで動きを行うためには、単体の動きを無意識レベル行い、それらを繋げなければなりません。

楽器でいう単音を音階につなげていくように、実践で使う動きは実践に近い形で練習するのが定石です。


[基礎編まとめ]マーチングに必要なトレーニングとは

ここまでのポイントをまとめましょう。

筋力と姿勢や身体の動きやすさはイコールではない
・筋力アップは特定の筋肉を追い込むように運動する
・パフォーマンスアップは筋肉を活性化し、協調させ、動き方を習得する

さて、今回考えたいのは、マーチングで上手くなりたいときにするべきトレーニングとは何か。

ここまでしっかり読んだ方はもうお分かりかと思いますが、全身の筋肉を協調させて動きを効率化するトレーニングを選ぶと良いでしょう。
(その上で、足りない筋力を強化するのは考え方としてはアリです。)

しかし具体的にどんな種目を選べばよいのか、自己判断することも難しいかと思います。

そこで、有名な筋トレ種目を用いて全身を協調させる動きの作り方を紹介します。

[実践編]プッシュアップ(腕立て伏せ)

プッシュアップは自重トレーニングでトップクラスに有名な種目なので、やったことがある方も多いと思います。

パッと見では肘を曲げ伸ばししているように見えるため腕を鍛える種目と思われがちなのですが、正確には肩関節を支点に上腕(肩から肘までの腕)を前に押し出す動きで、解剖学的には大胸筋(上腕の動きに関連する筋肉)を鍛えるのに適したトレーニングです。

また、プランクのように胴体が浮いた状態になるため、体幹トレーニングとしての側面もある非常に便利な種目です。

このプッシュアップを効率よくラクに行う際のポイントは、「背中から腕を遠くに押し出す」意識で床を押すことです。

背中から、というのは比喩表現ではなく、肩甲骨を腕の一部として認識するということです。
上のツイートのように、肩甲骨が前に出てくれば肩の位置も前に出ますね。

このとき、背中から脇の下を通る前鋸筋(ぜんきょきん)が働きます。メインで動く大胸筋とサブの前鋸筋協調させることで、ラクに大きな力を出すことができるということです。
(上手く使えていれば脇の下やや背中側がギューッと締まる感覚が出る人もいますので参考にしてください)

また、前鋸筋には肩を下げる働きがあったり、体幹の重要な筋肉(腹斜筋など)と関係があります。ここを活性化させると肩こり緩和や体幹の安定化などさらなる効果が期待できます。


次に、骨格を参考に動きを見ていきましょう。

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鎖骨と肩甲骨は肩で繋がっており、そこに上腕の骨がはまっています。つまり、鎖骨と胸骨のつながる場所が腕の付け根である、と言えます。

そう認識すると、鎖骨を支点として肩の位置を変えるという動きが理解できるため、自分が今まで思っていた以上に腕を長く使うことができます。

プッシュアップの場合は「より遠くに腕を伸ばす」という動きに繋がりますが、肩と腕を3次元的に認識することでより複雑で繊細な動きにも対応することができるようになります。

体幹を安定させて腕だけを分離して動かす場合にも、肩甲骨や鎖骨のイメージが役に立ちます。
正しいボディイメージをインプットすることも立派なトレーニングということですね。

[実践編まとめ]特定の部位以外にも注目しよう

協調させるプッシュアップのポイントをまとめましょう。

・背中から腕を遠くに押し出す
・鎖骨と肩甲骨の動きを意識する

筋トレではついつい特定の筋肉ばかり意識してしまいますが、目的としては「ラクに動けるようになる」ことが第一なので、なるべく力を発揮しやすいように工夫してみましょう。コツとしては、骨(こつ)の動きに注目することです。

あえて筋肉から意識を外して骨の動きに注目することで、最小限の力(インナーマッスルの働き)を自然に引き出すことができます。


なにより今回一番言いたいのは「筋力と姿勢や身体の動きやすさはイコールではない」ということです。大事なことなので繰り返し書いておきます。

正しいトレーニングをすること以上に、なにが目的でどうすれば良いのかを考えることが、個人の成長に繋がります。常に効率が最善になるよう考えておきましょう。
何気なくやっている筋トレも、工夫次第でパフォーマンスアップにつながるものになるかもしれません。

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