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MM練習の考え方

MMとは「マーチングマニューバリング」を略した呼称で、マーチングに必要な動きの技術のことを指します。他にも「ヴィジュアルベーシック」または単に「ベーシック」と呼ばれたりもします。

皆さんはMMの練習をする際に、どんなことを考えていますか?
膝を伸ばすこと?胸を張ること?つま先を上げること?
それよりも大事なことがあります。
今一度、基礎の基礎からMMを掘り下げてみましょう。


マーチングのスタート地点

マーチングに必要な要素は?と聞かれると真っ先に思い浮かぶことはなんでしょう。

恐らく大多数のひとは
「歩くこと」
と答えるでしょう。

間違いではありません。歩かずしてマーチングとは言えませんからね。
ただし、人間は歩くための前提条件としてあることを求められます。

それは
「2本の足で立つこと」

立つことこそ、マーチングの技術の基礎であり、スタート地点になります。
MMの練習が始まるとき、必ず「テンハット」で立ち姿勢を作りますね。
この立ち姿勢でクオリティの半分が決定すると言っても過言ではありません。

立ち姿勢は、身体が地球の重力に対してバランスをとっている状態。
背骨の状態、頭の位置、股関節や膝の状態、足裏の荷重の乗せ方など、様々な要素が姿勢を作っています。

自分ではまっすぐに立っているつもりでも、構造的あるいは筋力的に問題があると必ず別の場所がカウンターでバランスをとってしまうため、立つだけで身体に負担がかかる状態になっていることがよくあります。

(例えば、足に問題があり重心が後ろに下がると、膝や股関節がカウンターをとり、背骨に波及して、最終的に頭の位置が前に出たりします。この場合はいわゆる猫背になります。)

姿勢が悪いと使うべき筋肉が働きづらくなってしまい、歩行の際に進みづらくなったり、バランスをとりづらくなったりします。
健康に立つことができるということは、「歩く・走る」といったパフォーマンスに直結するのです。

これは一朝一夕に改善できることではないので、気長に、しかし妥協せず自分の身体と向き合うようにしましょう。


スタイルをどう考えるか

良い立ち姿勢が出来たら、ついに歩行が始まります。

MMはバンドごとにスタイルがそれぞれ異なり、有名なものではストレートレッグなどがあります。
スタイルには様々な決まり事があり、プレイヤーはそれを遵守して再現していくわけですが・・・

ここで忘れてはいけないのは、マーチングの歩行は日常生活における歩行からの派生である、ということです。

歩くことの前提に「立つ」ことがあるように、マーチングの特殊な歩き方にも「自然な歩行」という前提があります。
姿勢改善と日常の歩行改善をしていくことで、身体は動的なバランスをとりやすくなり、新しい動きをするための余裕が生まれます。

つまり、日常の自然な歩行を改善することが、美しいスタイルに近づくための大事なキーとなります。


そもそもスタイルとは、人それぞれある歩行の癖を、ある一定の方向性に近づくように意識することで統一を図るもの。
なので絶対的な正解があるわけではありません。個人個人で意識すべきことは違います。

もしも形にこだわって、自分にとって無理のある動きを続けてしまうと余計に疲れてしまったり怪我をしたりしてしまいます。

特殊な歩き方は、少なからず身体に負担をかけるものです。特にストレートレッグでは常に膝を伸ばした状態で歩く(スタイルによって差はあります)ので、膝や股関節にはケガのリスクが伴います。

マーチングを頑張る人の中には、日常の歩行そのものがスタイルに寄ってしまう人も時々います。恥ずかしながら私もその一人でした。
そんな人は日常でも身体の各所に負荷が蓄積し、いずれケガに発展してしまいます。

そうならないように、MMの練習の際にはまず自然な歩行を心がけ、そこから必要な要素を徐々に足していくようにしましょう。


MMをどう練習していくか

MMの練習では

「膝をのばして」
「つま先を上げて」
「胸を張って」

など様々な指導がされますが、それは目指す形と比べて

「膝が曲がっているよ」
「つま先が下がっているよ」
「背中が丸くなっているよ」

と現状を教えてくれているだけであり、「○○しなければならない」というように考えるべきではありません
(どのタイミングでそうなっているとダメなのかを知ることも必要です。)

その理由は、歩行の本質にヒントがあります。

歩行という動作は、通常ほとんどが筋肉の反射と無意識化での制御によって行われます。つまり、頭であれこれ考えながら行うものではないということです。

例えばつま先を上げる(足関節の背屈)働きのあるすねの筋肉は、足の接地後にかかとを支点にローリングするために本来は「足首の角度を固定する」という働きをします。


ですが「つま先を上げよう」と意識すると、すねの筋肉は「足首を曲げる」という過剰な働き方をしてしまい、本来の歩行における微妙なバランスが崩れてしまいます。

筋肉は意識すればするほど筋力を発揮しやすいという性質がありますが、これが裏目に出てしまうのです。

あれこれ意識しながら歩くことは良い練習とは言えず、むしろ逆効果になると言えます。

歩行に限らず、ある程度無意識でもできること(例えば呼吸、楽器の演奏などもそう)を色々考えながら行うと、脳や身体が最適化した動きのバランスを乱してしまい、余計にできなくなってしまうことがよくあるので気を付けてください。

では、正しく歩くためにはどのように練習すれば良いのでしょうか。

それは、「歩行に近い動作でトレーニングをする」ことです。
歩行に必要な動作の一つ一つにフォーカスを当てて、それが自然に発揮される=身体に染みつくようにトレーニングをするのです。

例えばランジやスクワット、カーフレイズなどの筋トレ種目は歩行に必要な動作を含み、目的を明確にしてきちんと行えば正しい筋力発揮を習得するのに役立ちます。
(※ただし、筋肉を強くすることとは別の問題。あくまでも正しい動きの学習に利用する。)

トレーニングで正しい動きを学習したら、MMの練習に入ります。
MMの練習では無駄な意識を取り除いてごく自然に歩き、自分の状態をチェックすることに集中すると良いでしょう(トレーニングで行った動きが自然に発揮されているか、過剰に緊張している部位が無いかなど)。
練習後の身体の疲れ具合痛みのある部分なども大いに参考になります。


[まとめ]MM練習は歩行の練習ではない

ここまで書いたことをまとめます。

①歩く前にまずは立ち姿勢。健康な身体を作っていく。

自然な歩行を身に着けることで、新たな動きのための余裕を作り、スタイルに必要な要素を少しずつ足していく。

③スタイルとは絶対的な形のことではなく、統一するための方向性。形へのこだわりはケガのもと。

④歩くときはあれこれ意識せず、自分の状態を観察する。歩行改善は歩行動作をしっかりと理解し、歩行に近い動きのトレーニングをする。


自分の状態を認識するのにも慣れが必要なので、指導者が現状を教えてあげたり、動画で撮ったものを見るなどの工夫をすると良いでしょう。
大事なのは、「○○しなければならない」という思考に陥らないことです。

MM練習とは歩行の「実践」であり、現状の確認です。

実際のところ自然な歩行が正しくできていれば、MMのスタイルに限りなく近い形になっていることが多く、上手な人がいかにも簡単そうに、美しいスタイルで歩けるのはそのためです。

実践中にこねくり回すよりも、本番を想定したエクササイズを行うのが建設的でしょう。

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