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すべての謎解きイベントはリアル脱出ゲームのパクリである

お前それクリムゾン・ルームに対しても同じこと言えるの?

2004年に発表された「クリムゾンルーム」というネットの無料ゲームを発端に、爆発的に盛り上がった「脱出ゲーム」。そのフォーマットをそのままに現実 世界に移し替えた大胆な遊びが「リアル脱出ゲーム」

ん?「そのまま現実世界に移し替えた」……?

パ、パ、パクリだーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!

なんて阿呆な物言いをするつもりはありません。

いつも「パクリ騒動」のたびに、議論と私怨でごちゃごちゃな意見が散見されるので、きちんと「いいパクリ」「悪いパクリ」について考えられるようになりましょう、という記事です。あなたのその怒り、友達じゃない謎がパクられてても怒れるの?

マギラワシイアレコレ

■オマージュ(モチーフ)

オマージュ(英語: hommage)は、芸術や文学において、尊敬する作家や作品に影響を受けて、似たような作品を創作する事を指す用語である。しばしば「リスペクト」(尊敬、敬意)と同義に用いられる。

オマージュは、何かに影響を受けて作品を作ること。よく言われるのは「オマージュ元の作品に気づかれると作者は嬉しい」です。冒頭で例に出したリアル脱出ゲームも、分類的にはこちらです(と思う)。謎解きイベントの世界で言えば「〇〇が面白かったからウチもループ系作品を作ろう」と思って「女子高生は5億回死ぬ」みたいな公演を作ること――って、これはパロディか?

■パロディ

パロディ(英語: parody、ギリシア語: παρωδια)は、現代の慣用においては他の芸術作品を揶揄や風刺、批判する目的を持って模倣した作品、あるいはその手法のことを指す。

日本ではパロディは「二次創作」をイメージされることが多いですが、本来はこういうこと。古典の授業をしっかり聞いていた人に向けてなら「本歌取り」がパロディというと伝わるかもしれません。また現在は「揶揄や風刺、批判」だけではなく「愛」をもってパロディすることも多いですね。オマージュとの違いは「元を知らないと楽しめない」とか「元がすぐわかる」あたりになります。

オマージュ(モチーフとして使ったりも含む)、パロディについては、著作権的にも芸術的にも全く問題はありません。(オマージュ・パロディ元に敬意を払おう、みたいなそういうことは置いておいて)影響を与え合って面白いものを作ろう。また、そうした元となった作品を明記しなければいけない、なんてこともありません

■文章盗用(引用の不使用)

この辺りから問題になってきます。他人の書いた文章を引用を用いずに使うこと、これはもちろん文章の盗用です。といっても、短い文章が似ることなんて当たり前に存在します。「あなたが好きです」「おめでとうございます、脱出成功です」「それではいったいどうすればよかったのでしょうか」etc……。短い文章がかぶってしまうことや、事実を表現した場合は問題ないとみなされることが多いです。下記の参照サイトを。

■トレース・模写

イラスト界隈で毎日のように「トレパク警察」さんはしゃいでいる、あれです。これはいくらでも説明が出てきますので、参考URLで。

このあたりまではわかりやすいものです。ここから下が「どういうことなの?」と個人的にもわかりにくいものです。というのは「ゲームのルールやアイディアに著作権はない」というものです。

ゲームのルールに著作権はない

ゲームと知財という観点ではまず著作権が思い浮かぶかもしれません。
が、「ゲームのルール」って、まさに「人為的な取り決め」ですよね。
つまり、「表現されたもの」ではないために著作物ではないというのは教科書レベルの話です。
つまり、私がスコットランドヤードと同じルールのカードゲームを製造・販売することは著作権の侵害にはならないということです。

この記事がまんまわかりやすくおもしろかったので、ぜひ一読ください。スコットランドヤードという例も、ちょうど議論がわかれそうで面白いところです。人によっては「人狼ゲーム」を商標登録しようとしている人や「リアル謎解きゲーム」を商標登録しようとしていることのことが頭に浮かぶかもしれません。

いまとなっては古い話ですが「東方シャドウハンターズ事件」あたりも参考になる事件だと思います。

■パズルのルール

さて、ゲームのルールがこういう状況だということがわかりました。では、パズルのルールはどうなのでしょうか。

そのなかでパズルの著作物性が争点になったのです。結論としては、パズルの個々のルールはアイデアなので著作権はない、ただし個別の問題は「全体として作者の個性が表われた創作的な表現であると認められる」としています。

パズルのルールに著作権があると、無意識に作っているクロスワードパズルや漢字パズルが全部ひっくるめで大変なことになっちゃいますからね。こちらにあるように、「個別の問題は創作性がある」と認められたようです。

■なぞなぞの著作権

では、「個別の問題」でもこんなものはどうでしょう。「パンはパンでも食べられないパンな~んだ?」。「こんなの都市伝説みたいなもんだから著作権はない」みたいな顔をしているのが浮かびます。

なぞなぞの「答え」だけであればアイディアの部類なので、著作権は無いと考えられます(余程長ければ別ですが)。
なぞなぞの著作権は「問題文」もしくは、「問題文と答えのセット」にあると考えられます。
以前ブログにも書きましたが、「物を説明するなぞなぞ」「漢字の成り立ちに関するなぞなぞ」は、著作権が認められなかった判例があります。

の通り、個別のアイディアや答え自体には著作権がないと言われそうです。しかし、問題文に独自性があったり、または答えの導き方が独特なものは「その問題自体」は著作権が認められそうです。

■デザイン

ボードゲームパクリが起きるたびに言われるのがこちら。「ルールには著作権は認められないがコンポーネントには著作権・意匠権が認められる」

上で紹介したスコットランドヤードや戦国時代をはじめ、アナログゲームにはカード、フィギュア、ゲームシート等のコンポーネントが含まれます。
これらの絵柄や造形は当然「表現されたもの」ですので、創作性を満たす限りにおいては著作物として認められます。
著作権の場合と同様、カード、フィギュア、ゲームシート等のコンポーネントを意匠登録して守る事も考えられますが、コンポーネントのデザインを変えられてしまえば無意味なのも同様。

そりゃそのとおりですよね。トレパク・模写で何かを作ったら問題になることは想像の通りです。

まとめ

・「問題の中身」をパクると問題になることもある
→問題に「ならないこともある」。古典的ななぞなぞの場合や、同じルールを用いて自分で作成すれば同じ問題になってしまうルールの場合などに、問題にならない場合もありそうです。

・「問題の解き筋」をパクると問題にならなさそう
→アイディア・ルールに著作権を認められない。クロスワードパズルを誰でも使うことはいい。私は専門家ではないので、細かいことは専門家に聞こう。

・「問題をまるまる」パクるとデザインの著作権で問題になる
→デザインには著作権がある

・商標に問題がないオマージュは問題がない
→みんな、リアル脱出ゲームみたいなゲーム作ろう!!!!!!でも「リアル脱出ゲーム」って宣伝して売ったらダメだよ


おわり

三月ちゃんをいろんなイベントに出張させることが出来ます。ヤバそうなイベントに自分で行く気はないけど誰かに行ってきてほしいときに使ってください。