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とどけますか

「3か月経って落とし主が現れなければ…」


書類を整理していたら「遺失物受理番号メモ」なる紙が出てきました。

日付をみると去年の今頃、何かを失くして警察に届けていたのですが、
何を失くしたかの「記憶そのもの」を遺失しています。 

なので、あらためて記憶の遺失届けを出そうと思っています。


それで、思い出したのは、以前、落とし物を「届けた」ときのこと。


ある日、急いでいた時、駅のホームで、自動販売機のボタンを押そうとして
押せない男性と出くわしました。

男性は、赤ら顔で、目は半開き。ヨロヨロと千鳥足。真っ昼間だというのに、できあがっています。スーツにネクタイの営業マン風。年の頃は、アラサーでしょうか…

働き盛りの若い男性が、昼間から酔っ払っているという非日常が気になりました。

見ると、足元に、お札とお金が散らばっています。状況からして、その人が落としたのでしょう。

何があったか知りませんが、私はお金を拾い集めて渡そうとしました。 

「これ、あなたのですよね」

男性は、ヨロヨロしながら「(唸るように)ふーー、違う」と答えます。

まぁ、コントの設定としては、あるあるだな… とか思いつつ

「あなたのですよね?それ(財布)、手に持っていますよね」と、再度尋ねると…

「ふーーー、違う」と、マイペースです。

展開が進まず、お金を元あった場所に戻すわけにもいかず、停車していた電車は、行ってしまうわで、「じゃぁ、駅に届けておきますね」と伝え、改札口に向かいました。

誰でも、拾ったお金を交番に届けたことのある経験は、一度や二度あると思います。

こういったらアレですが、手続き、結構面倒なんですよね。子どもの頃は、10円玉でも届けると、おまわりさんがしっかり書類を書いてくれて、なんだか社会の一員になれた気分でしたが、今だと、はやくしてよ~んって感じですね。

駅に届けると、駅がさらに警察に届けます。なので、個人情報など書かされました。

ふたたび電車に乗るため自動販売機のところに戻ると、男性は依然として、よろよろとボタンにトライしていました。

この状況は、コントとしてはあるあるですが、もう付き合っている暇はありません。

押すのを手伝ってもいいのですが、「生茶じゃないよ、十六茶だよ」とかなったら、ややこしくなります。

ちょうど電車が来たので、「改札に届けておきましたよ」と任務完了を伝えてその場を離れました。

この流れ、オチがないので、コントとして不成立です。しばらくして、すっかり忘れていた頃、警察から封書で「遺失物を預かりました」の紙が送られてきました。

駅から最寄りの警察に届けられ、そこから拾得者へ知らせが行く。JR職員と警察官で、都合何人関わっていたかわかりませんが、JRと行政による遺失物拾得連絡システムは機能していました。

で、最近、そのときの「遺失物預かりました」の紙も出てきました。拾得後、3か月で保管期間が終わり、そこから2か月以内に申請するともらえるという規則… とっくに期間が過ぎていました。

だいぶ前、コンビニの前で、一万円札を拾ったので、その店に伝えたら「警察に届けて下さい」と、にべもなかったので、そりゃそうだなと思って届けたことがあります。

書面手続きに時間をとられた挙げ句、その後、すっかり忘れ、「遺失物預かりました」の紙を見つけたときは、期間終了から2年が過ぎていました。

「拾ったものは交番に届けましょう」と、小学校で習ったので、ただ守っているだけですが、大人になると、手続きで奪われる自分の時間の方が遺失している気がしてきます。

タイムイズマネー「時間≠マネー」といいますけど、本当は、タイムイズライフ「時間=人生」です。どっちが大事かってねぇ…

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お金をよく拾う人の理由として、ひとつは「下向いて歩いている」というのがあります。

なので、「お金、拾ったことないよ~」という人は、前か上を向いて歩いているのかもしれません。

そういえば、海岸で財布を拾ったとき、最寄りの交番に届けたのですが、あとでなんか言われるのがイヤだったので、開かずに持っていったら、現金が入っていませんでした。

でも、手続きはしっかりするんですよね… 交番の人は、暇なのか、手続きものんびり。

ところで、「cakesクリエイターコンテスト2020」なるものをやっていることに、さっき気づきまして、交番絡みのエピソードを綴った記事とともに応募したいと思います。


こちらに出てくる交番で思い出しました。去年、自分が遺失物届を出したのもこの交番でした。失くしたのは小銭入れ…

なるほど、記憶ってこうやって貯蔵庫から出てくるのですね。

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