”デザインの才能”とは何か。太田洋晃は考える。
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”デザインの才能”とは何か。太田洋晃は考える。

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このnoteでは、外から見た「マーブル」を少しずつ発信しています。私たちのインタビューの様子から、マーブルの働き方や文化を感じてもらえたらうれしいです。

今回はデザイナーであり、マーブルの取締役でもある太田がインタビューを受けました。社長の長井と同じく創業時からのメンバーであり、マーブルのデザインの根幹を担う太田。そんな太田が語るデザインと才能についてのお話です。聞き手はおなじみ、編集者の今井雄紀さんにお願いしています。

「こういう仕事をしたい」が起点のデザイナー人生

──今日は太田さんのお話を聞けるのを楽しみにしていました。まずは太田さんがどうやってデザイナーになったのかをお伺いしたいです。

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太田:高校生くらいまではぼんやりと何かを作る仕事をしたいなと思っていました。映画『STAR WARS』のメイキングビデオが本編よりも好きだったりして。当時は漠然とそういうビデオで目にした映画美術の仕事に憧れていました。その後、大学受験をするころに雑誌『Number』に出会って、デザインをやってみたいと思ったんです。

──『Number』は誌面デザインに毎号変化があって面白いですよね。

太田:そうなんです。もともとスポーツが好きだったし、写真もすごくカッコいい。よく読んでみるとテキストもクオリティが高くて、写真・テキスト・デザインそして編集の集合体としてすごくいいものなんだとわかって、雑誌の面白さにのめり込んで行きました。『relax』『BRUTUS』なんかも大好きで。ぼく、選考も受けたんですよ。

──そうだったんですか。

太田:最終選考で落ちてしまったんだけど。ぼく以外は関東の大学出身の、準備万端の人ばかり。そんななかぼくは、『Number』が発売日前に書店に並んでいるのをみて「東京すげえ」とはしゃぐおのぼりさんっぷりだったので、結果は推して知るべしで(笑)。

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──その後はどうされたんですか?

太田:大学の先生の紹介で機械関係のカタログをデザインする会社に就職しました。基本的な印刷や校正のことを教えてもらったのは良かったのですが、どうにも面白さを見出せなかった。

さらに、入社数ヶ月の駆け出しなのにマネジメントをしてくれないかと言われて、もう少し手を動かして学びたいからと1年くらいで辞めてしまいました。その後はマーブルの社長の長井が通っていた大学院のゼミに毎日行って、彼と一緒にTシャツを作って売ることを始めて、それがマーブルの前身ですね。

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直感1割、客観9割

──太田さんと一緒に仕事をした人は、みなさん口を揃えて「速い」と言うんです。太田さんならではのデザインのやり方があるのでしょうか。

太田:最初の1割は直感で、後の9割を客観で作ることです。1割は「こうしたほうがいいんじゃないか」というアイディアの部分で、クライアントとの打ち合わせをしている時点で既に見えてきています。オフィスに戻ってすぐにラフが描けてしまうほどなので、一緒に働いているメンバーは、その1割を見て「速い」と言っているんでしょう。

──でも、残りの9割があると。

太田:地道な作業で、いつも後回しにしてしまうんですけどね。この9割は、客観的にひたすらデザインを問う作業です。「このレイアウトはユーザーにとって読みやすいか?」「ちゃんと伝わるか?」といったことを考えながらデザインを仕上げていきます。

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──なるほど。外からは見えづらい地道な9割の作業が品質をあげているんですね。そういうデザインのやりかたを若手メンバーにどう教えているんですか?

太田:その人の得意なところをさらに伸ばすように意識しています。苦手な部分をできるようにしようとしてもなかなか時間がかかるので、もともと持っている良さをさらに強くしていくほうが良いんじゃないかと。だから、多少苦手なことがあっても、ひとつでも強い武器を持っている人のほうが伸びる可能性があると思います。

ポートフォリオを開かずともわかる良し悪し

──マーブルの採用も、突出した才能の有無を意識して見ているのでしょうか?

太田:まずポートフォリオを出してもらうんですが、社長の長井とよく「ポートフォリオを持つだけでいいかどうかわかる」と話しています。

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──持つだけ、ですか?

太田:例えば、クリアファイルにコピー用紙をササッと入れてすませているポートフォリオを作っている時点で、良い作品は期待できない。この状態のファイルをクライアントさんに持っていけばいいと思っている、本当にこのクオリティで持って行っていいかどうかのジャッジができていないと僕は受け取ります。一種のあざとさがあっても構わないから、尖っている良さや、得意なこと、やりたいことが見えるほうが、数あるポートフォリオの中で光ります。

──ポートフォリオで審査した後は実際に会っているんですよね。ポートフォリオと会った印象がかけはなれていることはありますか?

太田:あまりないですね。性格的な面ではいろいろな人がいて良いと思っているので、予想と違ってもいいんです。それよりも、長い時間一緒にいられるかや、お客さんと気持ちのいい取引のできるキャラクターであるかを重視しています。

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──具体的にはどんなことでしょう。

太田:一緒にいてお互いストレスがないか、実際に顔を合わせて判断しますし、最低限の性格の明るさや清潔感も大事にします。デザイナーはお客さんの前に出る仕事でもあるので。

──それはマーブルらしい基準かもしれないですね。

太田:基本的に腕はそこまで見ていなくて、人となりを見ているんです。実際、美術大学出身ではないメンバーも採用しています。

──「腕は見ない」と言いつつ、太田さんがOKを出すポートフォリオは数%なんですよね?

太田:それはそうですね(笑)。磨けば光るものがあるかどうかは厳しく見ているかもしれません。

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——未経験でありながら、マーブルに入社後、一線級のデザイナーになった方もいらっしゃいましたね。

太田:Sさんですね。彼女はデザインの教育を受けたわけではないけれど、良いなと思うポイントが合っていたのでメンバーに迎えました。僕らはそれを「勘所が合う」と呼んでいます。例えばカフェに入ると、僕はデザイナーなのでメニューのデザインやお皿のチョイスなどを見て良し悪しを判断するけれど、他にもそれが判断できるポイントはたくさんある。

「メニューを黒板に手描きしたらいいってもんじゃないよね」みたいな。これまでデザインの経験がなくても、そういうポイントから下される良し悪しの判断が同じだったので一緒に働けると思いました。

──Sさんは、どんな努力をされたんでしょうか。

太田:家に帰った後もデザインをやっていたと聞きました。本人はそれなりの危機感を持ってやっていたんだと思います。そういう努力を続けていくと「いい」と「めっちゃいい」の違いがわかるようになってくる。彼女は自分のデザインに出されたフィードバックを「直してみました」とすぐに見せてくるなど、少しでも良いものを作ろうとする努力を惜しまなかった。結果、いいデザイナーになったと思います。

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いいデザイナーは、いい編集者

──いいデザイナーの条件って、何だと思いますか?

太田:「言語化できる」ことですね。

──というと?

太田:僕らのアウトプットは視覚で勝負するものですが、その手前で対象を言語化できるレベルで捉えることが大切なんです。例えば、椅子が対象物であれば、椅子を椅子たらしめる要素を言語化できるレベルまで処理できていないと、100人が見て50人しか椅子だとわからないデザインになってしまう。そういうデザイナーがバナーを作ればそれはバナーに見えない、チラシを作ればチラシらしくないものになってしまいます。さらに、対象を捉える処理を他に頼ることになってしまい、結果Pinterestで見たことのあるものを組み合わせたようなデザインになってしまう。

──長井さんのインタビューでも「国語力」というお話が出ていましたね。

太田:まさに。いいデザイナーはキャッチコピーも書けると言う人がいますが、言葉に落とせるレベルまで対象をとらえる処理ができているから成せる技なのだと思います。いいデザイナーはいい編集者でありいいコピーライターでもある、ということです。

──太田さんのお話を聞いていると、マーブルの志しの高さをあらためて感じます。

太田:つい厳しいことを言ってしまいますが、今の若い方に期待していることの裏返しなんです。何年後かにはうちのエースになってもらいたい人たちですから。エースになるためには、人一倍の努力は必要で、それができた人が活躍していくんだと思います。努力がカッコ悪い時代なのかもしれませんが、努力なしでは突き抜けたものを作るのは難しい。今の時代は、簡単にロゴを作れるサービスもあれば、オシャレな画像を見つけられるサービスもある。便利になった分、手の届かないレベルまで行きたいというモチベーションも沸きづらいのかもしれませんね。でも、その根本はすごくシンプルなところにあるのではないかなと。

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──シンプルなこと、というと。

太田:好きなもの、どうしてもやりたい仕事があるかどうかです。僕は、いま話したキャリアからも分かる通り「やりたい仕事をやりたい」というモチベーションで今の仕事を始めました。だから、好きなことをやりたいという欲は強いほうがいいと思っています。

漠然とデザイナーになりたいのではなく、「雑誌の仕事がしたい」「装丁をやりたい」という気持ちがあれば他の人より強いものを作れると思う。実際に一緒に働くことになっても、初めからやりたいことが明らかだったらそれに近い案件がきたら声をかけてもらえる。ボールを持ったら、あとは期待を超える努力をすればいいだけなんです。そのために努力を惜しまない未来のマーブルのエースに早く会いたいですね。

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(執筆:出川光、写真:岡安いつ美、取材・編集:株式会社ツドイ)

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