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エンジンは求心力

2013年モロッコ旅行を改めてスキャンし直したりして過ごしている。思えば買ったばかりのT3とオートコードで行ったものだから、このカメラたちにとってもおそらく大冒険だったわけで、それで私にとってみたら初めての海外一人旅、初めてのモロッコ旅行、さらに慣れないカメラ二台で異次元レベルの異国にぷらっと行ってしまったなあと今更反省している。例えば、カメラ一台で良かったなとか、もっと色んな場所に行けたかな…とか。でもその勢いだけで頑張って撮影だけは無我夢中でしていたな、と、べた焼きを見ると感じる。熱意だけでよくぞ。

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突然だけど池波正太郎の『男の作法』という本の中の"旅行"という章からひとつ。男の作法というタイトルだけど、誰が読んでも参考になる作法が書いてあるので面白い。

(今度、南フランスへ行こう、南フランスへ行こう……)と、事あるごとにやっていると、まあ自然に行けるようになってくるんだよ。それは、いわば「求心力」だね。それで次にニューヨークへ行ってみたいと思ったら、いつかニューヨークへ行こう、ニューヨークへ行こうと絶えず求心していれば、そのうちにきっとニューヨークへ行けるようになっちゃう。 だから旅行のみならず、やっぱり求心力というのは大事なものだね。ぼくの場合、何かしたいと思ったら絶えずそのことを思っていれば、何かにつけてそのことを目指して、無意識のうちに少しずつ段取りを進めていくからね、だから自然にそうなるということになるんだよ。 − 『男の作法』池波正太郎 著 / 新潮文庫 p37 "旅行"より引用

モロッコに関していえば、特段モロッコへ行きたい、と常日頃思っていなかったけれど、どうしても身近な人が誰も行ったことのない場所へたった一人で行きたい、という野望じみた夢があったので、今思えば準備不足の私が行けたのはその「求心力」のお陰だったのかもしれない。そして、たった一人、その思い出に浸ることも夢だった。誰も知らない本当にあったことを完全に独り占めしていて、それはもはや世界征服に近いのである、わっはっは…。

私は今、(イタリアへ行こう、イタリアへ行こう……)と、心の中で密かに唱えている。

*オマケ*

以前書いた「旅行」という記事もぜひ読んでみてください。これはアランの幸福論からの引用です。

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