Paul Celan - 水と炎 Wasser und Feuer 訳

パウル・ツェラン 水と炎 Wasser und Feuer 訳

そうしてぼくはきみを塔に閉じこめアララギにひとつ言葉をかける、

そこから炎が燃えひろがった、炎はきみの服を求め燃ゆる、きみのウェディングドレスを: 

夜があかるい、
夜があかるい、それはぼくらに心をつくりたもうた
夜があかるい! 

それは遠くかなた海を照らす
それは海峡で月たちをめざめさせ霧状の燭台にたてまつる、
それは時間からぼくを解放させる:
死んだ銀、よみがえれ、貝殻みたいな器と盃となれ! 

燭台は時間の外と内を揺れ動く
風は盃を注ぎ満たす、
海は食物を抛りもたらす:
流離う眼、轟く耳、
魚を蛇をー 

燭台は夜の外と内を揺れ動く
そしてぼくの周りで民衆の旗が揺れる、
そしてぼくの傍で人々が郷土の棺桶を漕ぐ、
そしてぼくのもとでヨハネを取巻く聖なる地みたいに讃え奉る! 

そしてぼくはきみをながめる、
燃ゆるきみへ:
時間を考えよ、ぼくらとともに夜は山を昇る、
時間を考えよ、
考えよ、過去のぼくはいまのぼく:
牢獄と塔の主、 

アララギに吹きだす風、海中の酒呑み、
ひとつの言葉、それに対峙しきみは燃えつきる。 


オリジナル:
https://www.lyrikline.org/de/gedichte/wasser-und-feuer-68

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?