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川崎ゆきお
2020年11月30日 13:04
「下田はいかん。あれは辞任すべきだ」「交通機関の発達が、果たして人々に仕合わせをもたらしたろうか。利便性が必ずしもいいわけではない」「下田の経歴を見たか。あれは嘘だ。それが分かっていながら、誰も何とも言わん。それを追求すると、おのれも追求されるからだ」「私は歩いて旅する。これがいい。しかし、昔は伊勢参りなど歩いて行ったものだ。お参りよりもその道中の方が学ぶところが多いと言える」 左側か
2020年11月29日 14:32
限界を超えると、そこで終わってしまう。いつもは限界内でやっていたのだが、その限界内にもレベルがあり、非常に高い限界内もあれば、それほどでもない限界内もある。その場合、限界など考えなくてもいい。限界を超える必要がないため。 限界内での戦いがあり、競い合いがあるし、自分自身に対しても挑戦する良さもあるが、いずれも限界内での話。 限界を超えるのは実は簡単なことで、一つの歯止めを外せばいい。これ
2020年11月28日 12:52
「一つ用事を減らすと楽ですね」「あ、そう」「このところ忙しくなりましてねえ。色々と用事を増やすからでしょうねえ。それで一つ減らしました。すると楽になった」「その用事、しなくて大丈夫ですか」「大丈夫だったようです。しなくてもいいような用事でして、習慣になっていただけ」「無駄を省くというやつですね」「いや、最初から無駄なことをやっていたので」「あ、そう」「それで時間にゆとりができ、
2020年11月27日 13:12
闇の中を彷徨っていた。二吉はやっとその先に光を見て、出口を見付けた。そこは明るい世界。現実の世界。きっと昼なので、明るいのだろう。「ほう、闇の中を彷徨っていたと」「そうです。でも、そちらの方がよかったかもしれません」「闇では何も見えんじゃろ」「明るくても実は何も見ていなかったりします」「ほう、それは奥深い」「それに何も見えませんが色々なものが見えていました」「頭に浮かぶものかな
2020年11月26日 13:31
「機嫌良く暮らしておられますかな」「良いときもあれば悪いときもあります。連日機嫌が良いのがいいのですが、そうはいきません。それに楽しいことが毎日続くと身体も気力も持ちませんよ。そのうち麻痺してしまい。楽しいはずのことなのにそれほどでもなくなってしまいがちです」「長い説明有り難うございます。ただの挨拶なんですがね」「そうなんですか、で、あなたはどうなのですかな」「私ですか。私のことはいい
2020年11月25日 13:57
イチョウの葉が黄色い。多くの葉は散って地面を真っ黄色にしているが、まだ枝に葉は豊富にある。いったい何枚あるのか勘定したくなるが、一円にもならない。この葉が小判に変わるわけがないので。 そんなことを思いながら、上田はすぐ目の前の枝にある葉を見ていた。それらの黄色い葉もすぐに落ちるだろう。 イチョウの黄色い葉を見るのは今のうち。もう来年の今頃まで見られない。繰り返される四季、折々の変化。上田
2020年11月23日 11:55
平家物語ではないが、どの政権も永遠に続くものではない。長く続いた藤原時代、徳川時代も、やがて消えていった。ローマ帝国もそうだろう。 ただ、その時代に生きていた人達は、孫や曾孫まで同じ政権のままだろうというのがあり、生きている間は、ずっとその政権。その先の政権など考えようがなかったのかもしれない。だからその人にとっては曾孫の代まで続くので、生きている間は、その政権のまま。 ただ、その政権内
2020年11月22日 12:51
古きに戻るといってもそれほど昔ではない。ついこの前のことで、よく見えており、思い出すまでもないこと。まだまだよく覚えているので、昨日のことのように思われる。おとといのことになると少し曖昧になり、一週間前だと、かなり薄くなり、一月前だと距離感が出る。去年のことになると、もう繋がっていないような過去にも見えてしまう。 古いといっても色々ある。新製品が出ると、旧製品になるが、今も使っている人がい
2020年11月21日 12:07
「遠くへ離れる」「どういうことだ」「自分から遠く離れる」「そういうことか」「しばし、離れるので」「それはいいわけか」「まあ、そうです。少し離れたい」 そういった世間のしがらみから離れたくなるときがある。 田村はそれを実行した。 すると「責任逃れだ」という声が聞こえてきた。まだそれほど遠くへ行っていないので、聞こえたのだろう。もっと離れなければ。 これは遠隔地へ行くわけではな
2020年11月19日 14:32
春眠。それがあるのなら秋眠もあるはず。春は眠い。それと同じように秋も眠い日がある。まだ今は秋だが晩秋、すぐに冬が来る。 武田が眠いのは小春日和のためだろうか。妙に暖かい。冬のような寒さが続いていたのだが、その日はポカポカと暖かい。しかし、眠気はそれではないようだ。睡眠不足でもない。 朝、食べ過ぎた。 それで動きが鈍くなる。これが秋の終わり、冬の初めの肌寒いころなら、眠気は来ないかもしれ
2020年11月18日 14:21
紅葉狩りに出て道に迷う。そして二度と出て来られないまま彷徨うのでは、と心配していると、茂みの奥に人里が見える。こんなところにそんな町があったのかと。 紅葉狩りの名所。最寄り駅は終点の駅で、そこからもう紅葉が始まり、駅前から既に土産物屋や赤い毛氈が敷かれた長い椅子がある。椅子なのかテーブルなのかが分かりにくいが、どちらも合っている。そこに座り、そこで何かを食べる。ではお膳の上に座って食べてい
2020年11月16日 12:55
赤塚があるのなら黄塚とか、他の色の塚もあるのではないと思い、下村は周囲を探したが、それらしい塚はない。赤塚は盛り土だろう。それほど大きくも高くもない。周囲は平地。起伏はない。ただ、家々が立ち並んでいるので視界に入らないのかもしれない。 下村は周辺を探したが塚はそこだけ。塚なので墓なのかもしれないが、他の目的で盛り土をして高みを作るというのもある。一段高いところに目立つものを置くため。 赤
2020年11月15日 12:47
「聞き違えたようだな」 瀬宮は魔獣退治に来た。彦山の魔獣と聞いていたので、山の麓で戦いの準備をしているとき、雑貨屋があるのが目に入った。コンビニのようなものだ。周囲にコンビニはない。田舎なのでそんなものだろう。最寄りの駅前にはあったが、降りた終点の村のバス停周辺にはない。 その雑貨屋に縦長の看板が出ており、彦山饅頭と書かれていた。これを見た瀬宮は全てが終わったことを悟る。聞き間違いなのだ。
2020年11月13日 12:45
秋の終わり頃、少し暖かい日があった。木陰ではなく陽だまりがあり、そこで腰掛けている老人がいる。座る場所などない。空間はあるが、座るための何かがない。しかし落ち葉が絨毯のようになっており、ないよりはまし。これが雨の降ったあとなら濡れているが、かさっとしているようだ。木の葉の紅葉、それを下で見る。そして触れる。老人はそんなことをしたくて座っているわけではなさそうだ。 観察者が想像しているだけ。