「一瞬、永遠。そしてまた一瞬。」

――自分の荒い息使いが聞こえる。

視界の端にうっとおしくススキが自己主張してくる。

多分、この満月の夜にとても映えているんだと思う。

――でも、俺はこの目の前の女から目を離すことができない。

綺麗な正眼の構え。
刀の切っ先が揺れる。

右、回り、上段に移行、それを読んで俺は少し上に左手の刀を持ち上げる。

当然向こうは読んでやめ、今度は左、いや違うこれはまた上――違う。

八相、いや、そこから下げて脇構え。
そこまで読んで俺は動く。下段から足を――

――切る前に。一歩下がる。

目の前を、白刃が通り過ぎ、俺の髪を一房落としていった。
あっぶねえ…

そっから当然また繋げてくる。
今度こそ八相の構え、袈裟切り。

分かってりゃあ流石に防御できる、両手の刀で受ける。

あまり受けたくないが仕方がない。

――ガギィン。ギリッ。

重めの音を立てて刀がぶつかる。膂力ではこっちが上。

だが押し込むにしてもすぐ下がるだろう、それぐらいは俺にもわかる、ほらもう下がってる。

これでまた仕切り直し、一呼吸する。

くそっ。向こうは息一つ上げてねえってのにこっちはこんなにへばってやがる。

一呼吸。上、下、右、右、右。

いや違う下、脇から切り、違う。

正眼から突き、これは当たり。

最小限でよけられればそれがいいんだが、俺にはんなことはできない。
大きめにのけぞり躱す。

そっからまた――いや違う!足払い――

逆に一歩踏み込む。
勢いが乗りきらないうちに俺の足に当たるように受ける。

クソッ、上半身が傾いてる、今度こそ刀が来る!

――そう思った俺の視界には右手。

ゴシャァッ!!!

「ッぐぅ…!」

刀持った状態で殴ってくるとかありかよ!反応が遅れた…!

追撃の左手は下がって避ける。

――これでまた仕切り直し、一呼吸。

永遠に続きそうな刀の読み合いと一瞬の交錯、右、上、下、左。呼吸。

ああくそ、頭がパンクしそうだ…

ずっと読んでると頭が変になってきた。

俺の意識は”これ”の始まりへと飛んで――

【続く】

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