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「日曜の朝は遥か遠く」


始めに気づいたのは、やはり子供たちだった。



――ビシュン。ビシュン。

ビー玉が連続して俺たちの陣地に撃ちこまれる。

ボンッ。ボンッ。

それは”当然の如く”コンクリートをぶっ壊して廃工場を削り取っていく。

「チクショォ、あんな過去の”ブツ”まで持ち出してきやがって…!」

「狙撃手の距離には私じゃ届かないわよ!どうすんのよコウキ!」

シャランラシャラララン。
元・女児向けアニメの”ブツ”で光弾を撒きながらアカリが叫ぶ。

「わぁってるよ!俺だって今考えてんだよ!」

――タツヤを呼んできてあいつの”ブツ”で…

…いや、あの距離に届かせるにはあいつの”ブツ”は時間がかかりすぎる、ダメだ。

そもそも今連絡を取る手段もねえ、独力で何とかしなけりゃならねえ…!

バァン!バァン!

「ッ…クソッ、時間がねえ…!俺にも、俺にも”ブツ”があれば…!」

古今東西の”創作物”が、力を持つようになったのに気づくのは。

お陰で今じゃ日曜の朝が暇で仕方ない、放送禁止を食らったのだ。

一週間で言うなら今の時代は月曜だ。


「……あの、何故…そこまでして、私を助けようとするのですか?」

”あいつら”に追い掛け回されてた少女が、とても不思議そうに聞いてきた。
――何故だって?

「決まってんだろ、男って言うもんはそうするべきだって育てられたんだよ!」

「――」

「――それに毎回付き合わされるあたしのことも考えてほしいんだけどね!もう本格的に持たないわよ!何とかしなさい!」

――だから、この話は。

俺たちがまた、日曜の朝にヒーロー番組を見られるようになるまでの――


「――これを」

少女はそう言うと、俺にレバーのような何かを渡してきた。

「――これは?」

少女は黙って俺を見つめ、静かに頷いた。

「――わかった!よくわからんがやってやるぜ!」


――俺たちの、戦いの記録だ。



「――」

すぅ、と少女は息を吸い込み、その台詞を言った。


「――貴方に、力を!」


【続く】

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