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33.A Gift From IWAKI いわきからの贈り物(10)

■最後はいつもうまくいく!!

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美術館の屋上は円形になっていた    

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屋上からの夜景

2010. 06.11

蔡さんの個展当日である。

前夜遅くまで苦戦して組み上げた廃船の前に立ってみる。そこには昨日、遅くまでかけて皆で作り上げた苦労の影も、腰の痛みを我慢して積み上げながらも何度も何度も崩れたあのセラミックの山の様子は感じられず、完成された一つの作品として、私たちの前にそびえ立っていた。

もう船の上に上る事も触る事もできない。厳かな「いわきからの贈り物」という作品が存在するのを感じる。一晩のうちに蔡さんによって命を吹き込まれたかのようだ。この私が受ける感動が、動力のない船を世界各国に動かして行くのかもしれないと思い感無量。

蔡さんがニースの市長や館長と一緒に作品のすべてを案内して廻る。かなりの人数の取材スチールカメラマンやビデオカメラマンが周囲を囲んでいる。いわきの船のところでは、蔡さんがいわきチームのメンバーに声をかける。蔡さんとニースの市長といわきチーム全員で記念の写真を撮ろうと言うのだ。蔡さんはもちろん、我々もネクタイを締め、晴れがましい感じでカメラのフラッシュを浴びる。

そしてオープニングセレモニーでは、蔡さんのスピーチの中でいわきチームが紹介され前に出る。沢山の人から拍手され、気持ちが高揚する。この後、招待客の為のディナーパーティがあるというので、美術館の屋上で待つ。初めて上がった屋上からの見晴らしは最高で、なぜ今までここに来なかったのかが悔やまれる。明日朝早く日本に帰るので、この雰囲気この景色はこれから先見る事がないと思い、何度もカメラのシャッターを押す。美術館は円形になっており、いろいろな角度からニースの街を見渡せる。すばらしい造りに大感激。

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蔡さんがいわきチームのテーブルに

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呉さんもいわきチームの一員


屋上の景色が暗やんで周りの街並に明かりが灯る頃、ようやくディナー会場に呼ばれる。席は既に決まっていて、我々いわきチームの席に、蔡さんの奥さん・呉さんの席もある。昨夜まで一緒に作業した本当にいわきチームの仲間という思いで、いわきチームのカードをもってもらい写真を撮ったりする。食事も美味しく、全てを終えた心地よさで会話も弾む。

あとは、いわきから持って来た図録の残り3冊を誰にプレゼントするかが、残っている私の仕事。蔡さんが我々の席に来て談笑する。蔡さんが先程のIWAKI TEAMのカードの裏に「小別勝新婚」と書く。この意味は、『しばらくの別れは、新婚の時の時間より勝りますよ』と言う。そう言われると次にまた蔡さんと一緒に仕事ができるまでのしばらくの時間の楽しさが思われ、うまい表現をするなぁとまた感心させられる。

我々が作った図録「蔡といわきと彼の作品」は、一冊は中国の作家の方に差し上げた。彼は「レオナルドダビンチと蔡國強」というタイトルの本を中国で出版し、すごく売れている作家ですと紹介される。いわきの事も彼に書いてもらえば、中国ですごく売れますよと蔡さんが言う。
もう一冊は、現在の「いわきからの贈り物」の作品の持ち主の、デンマーク人の方に差し上げた。彼は「今、この作品を展示する美術館を検討していますからその時は是非デンマークに来てください」と言ってくれる。次はデンマークかとつい思ってしまう。

蔡さんの話では、「この船の作品は魅力的ですが、背景にある話が今の世界の人々が興味をよせ、共感できるものがあるのでしょう」と言う。
パーティは、まだまだ終わりそうもなく続いているが、我々は明日5時に起きて空港に向かわなければならず、名残惜しくもパーティ会場をあとにする。

通い慣れた美術館からホテルへの帰りの道筋、いわきチームの誰もがニースであったいろいろな出来事を思い出し、充実感と満足感にひたっているのか言葉が少なげだった。

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