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明るく朗らかに生きてゆきたい

先日、図書館で借りてきた小川糸さんのエッセイ『針と糸』を読んだ。小川糸さんの本は、鎌倉を舞台にした『ツバキ文具店』シリーズを読んだことがあったが、可愛くてクセのあるキャラクターと主人公の日常が描かれていてとても好きな作品だ。鎌倉に実在するお店が出てくるのも魅力の一つで、鎌倉がだいすきな私にとっては、とてもワクワクさせられる物語である。

そんな小川糸さんのエッセイを読むのは今回が初めてだった。ベルリンやラトビア、モンゴルなど様々な地域に移り住んだ糸さんだからこそわかる、日本との違いはとても刺激的だった。
特に印象深かったのは、ベルリンの日曜日は日本のお正月のように静かで、家族や友人達とゆったりと過ごすものだというところだ。日本に住んでいると、土日はショッピングに出かけたり映画を観に行ったりごはんを食べに行ったり、当たり前のように街は賑わっている。でもベルリンはそうではなく、日曜日は決まってみんなで休むものだという。日本はいつでも欲しいものが手に入ったり、とても便利で豊かな国だ。だけど、常に何かを手に入れることに必死になっていて、心が休まる時間があまりないように感じる。糸さんが実際に暮らしたベルリンの人たちのように、日本ももっと余白のある暮らしができたらいいのにな、と読んでいて感じた。

糸さんが文章を書くきっかけになったお母さんの話は、心がぎゅーっとなるような思いで読んだ。詳しいことは書かないけれど、糸さんの温かい物語があるのは、過去の辛い経験があったからなのだと思う。辛い経験は、できればしたくない。毎日が楽しく元気で過ごせたら、それほど幸せなことはないだろう。でも、生きていればいいことばかりじゃない。受け入れがたい出来事も沢山起こる。でも、糸さんはどんな出来事に対しても前向きだった。なかでも印象的だったのはこの言葉だ。

つらい時こそ、朗らかに笑うこと。そうすれば、もっとつらい経験をした人にとっての希望になる。
〈中略〉
朗らかに健やかに日々を楽観的に過ごしていれば、自分の人生が、決して闇だけの世界で成り立っているのではないことに気づく。

小川糸『針と糸』

どんなに辛いことが起きようとも、朗らかに笑うことを大切にしてきた糸さんは、自分が書く文章を通じて読む人の心を救ってくれる。

私自身も、適応障害にならなきゃよかった、もっとああすればよかったと後悔することが沢山ある。だけど、起きてしまったことを悔やむことより、これからをどう生きていきたいか考える時間をもらえたと思えば、この経験も救われる。糸さんのエッセイを読んで、全ての出来事に無駄などないのだと改めて実感させられた。

私も糸さんのように、明るく朗らかな女性になりたい。それが今の生きる希望である。

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