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マンガボックス編集長・安江亮太のスランプさんいらっしゃい〜スランプのあとには風が吹く〜

株式会社ディー・エヌ・エーが運営するマンガ雑誌アプリ「マンガボックス」。
有名作家の人気作から新進気鋭の話題作まで、枠にとらわれない幅広いラインナップを擁し、オリジナル作品の『ホリデイラブ』はTVドラマ化、『恋と嘘』はアニメ・映画化するなど数々のヒットコンテンツを生み出してきました。
そんなマンガボックスの編集長を務めるのは安江亮太さん。多くの事業を束ねてきた安江さんはこれまで数々のクリエイターや社員の悩みに乗り、解決に導いてきました。本企画はそんな悩める“スランプさん”の課題を解決し、noteで公開するというもの。
今回の『スランプさんいらっしゃい』は昨年5月に漫画家のキャリアについて悩んでいた長谷川ザビエラーさんが再び登場。相談以来、スランプを抜け出し、なんと青年誌での連載が決まったんだとか。そんな長谷川ザビエラーさんに、「相談してから今まで起こった変化」をテーマにお話しを伺います。

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安江亮太
やすえ・りょうた
DeNA IPプラットフォーム事業部長 / マンガボックス編集長
2011年DeNAに新卒入社。入社1年目の冬に韓国でのマーケティング組織の立ち上げを手がける。2年目に米国でのマーケティング業務。その後全社戦略の立案などの仕事を経て、現在はおもにマンガボックス、エブリスタの二事業を管掌する。DeNA次世代経営層ネクストボード第一期の1人。
Twitter: https://twitter.com/raytrb

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長谷川ザビエラー
はせがわ・ざびえらー
漫画家。自身の経験から来る童貞臭い泥臭い漫画をTwitter上でアップし、人気に。『イブニング新人賞』にて奨励賞、準大賞を受賞。『イブニング』にて読み切り漫画『抜刀』を掲載。今春から、連載予定。
Twitter:https://twitter.com/zabieraaaaaaa

とにかくがむしゃらに頑張っていたら、風が吹いてきた

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安江:ザビエラーさん、お久しぶりです! 今日は来ていただき、ありがとうございます。サビエラーさんとは昨年の5月にスランプさんに出ていただいて、その後スランプから抜け出して、ご活躍している姿をみて、今回は「スランプさんのその後」ということでいろいろお話しをお伺いしたいと思ってます。

ザビエラー:安江さん、お久しぶりです。あのスランプさん以来、本当に道が見えたというか、もう頭があがらないです。今日は改めて感謝の言葉を伝えにきました!

安江:またお会いできてとても嬉しいです! あのときの相談は、「漫画家としてSNSと連載どちらを頑張ればいいか」というものでした。僕はそれに対して、今の時代に売れるためには何が導線になるかわからないから、どちらも頑張れと言ったんですよね。

安江:「連載を持ちたいのか、SNSでアップしていくのか、どちらがいいのか」という悩みに立ち戻りたいと思うんですが、売れるためにという観点でいくと、僕はどちらもやればいいんじゃないかと思うんですよね。
長谷川:え、どちらもですか?
安江:はい。テキトーに言ってるわけではなくて、僕は生き方として、潰しを効かせながら生きる方がいいと思うんですよ。
マンガボックス編集長・安江亮太の、スランプさんいらっしゃい〜雑誌連載とSNS、どちらに絞っていけばいいですか?〜


ザビエラー:はい、そうでしたね。

安江:ただ、ターゲットは意識してやってみた方がいいと。

安江:僕の経験上、無料で公開していようがなんだろうが、届くべきひとに届いたら売れるんですよ。今長谷川さんは自分の漫画を誰に届けたいですか?
長谷川:僕の描いてる漫画は自分と似たような童貞で冴えない男たちに読んでほしいと思ってるんです。そこに届いてほしいんですよね。
(同上)

ザビエラー:あのとき、僕が漫画を描く理由を深堀りしていただいて、「ターゲットは過去の自分だから、その自分を救うために描いていくのが大事」とおっしゃっていただきました。それからSNSに作品をあげるときに、そのことを意識して描くようになったんです。

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安江:その後、すごかったですね。

ザビエラー:ありがたいことに、何度かバズを経験して、フォロワーもうなぎのぼりで増えるようになりました。

安江:今では、SNSに漫画をアップするたびにバズってる印象があります。SNSでご活躍しているのは拝見していたのですが、その後、連載の方は何か進歩はありましたか?

ザビエラー:実はこのスランプさんをみて、「うちの連載に向けて、ぜひ持ち込みをしてほしい」と2社からお声がけをいただいたんですよ。

安江:すごい! 僕としても、このスランプさんを始めてからというもの、いろんな方に見てもらえて、特に同業の方によくお声がけいただいているので、嬉しいですね。

ザビエラー:ただ、あの相談を受けて、それまで持ち込んでいた編集者さんともう少し真剣に話してみようと決意して。何回かお会いしていく中で、やはり僕の漫画に対して真剣に向き合っていただいて、なによりとても情熱を感じられて、この編集者さんと一緒にもう一度作品を作っていこうと思ったんです。

安江:なるほど。

ザビエラー:その編集者さんが『イブニング』の方だったのですが、何回かネームを直しているうちに編集長が代わり、今後はWEBにも力を入れていくという方針に変わったんです。そこでSNSで反響の大きかった僕にもチャンスをいただけて、面白いネームを描いて、イブニングのWEB版に掲載してほしいという条件になりました。

安江:おお! ザビエラーさんに風が吹いて来たんですね。何があるかわかりませんね。

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ザビエラー:そうなんですよ。だからやっぱり「SNSも頑張って良かった」と改めて思いました。

安江:「連載もSNSもどちらも頑張った方がいい」と言った手前、心配していたのですが、僕もその言葉を聞いて安心しました。じゃあ今は連載に向けてネームを出しているんですか?

ザビエラー:いや、それが実は……このたび連載が決まりまして

安江:ええ! すごいスピードですね!

ザビエラー:「ネームが面白かったら掲載させてくれる」という言葉を受けてから、とにかく必死に2日で30ページぐらいのネームを描いて、担当からフィードバックを受けて、というのを5回ぐらい繰り返しましたね。

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安江:2日で30ページ! ただならぬ情熱と執念を感じます。編集者もそのスピード感で、掲載に結びつけるために努力されたんでしょうね。

ザビエラー:編集者さんからは「これから『イブニング』がWEBに注力するのに、このくらいの速さと瞬発力が求められている」と言っていただいて。まず編集長から読み切りを本誌に掲載するOKをこぎつけてもらいました。

安江:先日ツイートされてた漫画『抜刀』ですよね。ザビエラーさんらしい童貞感があって良かったです。


ザビエラー:ありがとうございます。その『抜刀』が来春から連載になるんです!

安江:いやー、おめでとうございます! 順風満帆ですね。

これからの漫画家はデジタルで売れるための方法も考えた方がいい

ザビエラー:そうなんです。あれから上手くいきすぎているぐらいで。この半年で一気に変わりましたね。それで今日安江さんに聞きたいなと思ってることがありまして……。

安江:おお、なんでしょう。なんでもお聞きください。

ザビエラー:ぶっちゃけていうとお金の話なんですが、WEB連載の場合、このあとどういうフローでお金が入ってくるのかなと。特に新人の場合、単行本がどれだけ売れて、どのぐらい印税が入ってくるのか気になります。

安江:なるほど。以前活躍する漫画家さんたちと対談した際にもお話したんですが、漫画家の基本的な収入は原稿料+印税になります。

ザビエラー:なるほど。

安江:原稿料はページ数あたりの単価を単純に掛ければ出てきますよね。新人の場合は、だいたいページ単価1万円前後が相場で、例えば隔週40ページで月80ページ描くとすれば、ざっくり80万円になる計算です。どれだけ描きこむかにもよりますが、そこからアシスタント費をやりくりすることになります。

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ザビエラー:そうですよね。アシスタントをしている友だちが「アシスタントを何人も雇ってしまうと、かなりギリギリになる」と言っていたので、それも不安です。

安江:うーん、そうですね。作画環境にもよるんですが、作業部屋を新しく借りるとなると、家賃もかかってきてしまいます。

ザビエラー:なるほど……。最初はアシスタントは最小限で、自宅で描くしかないですね。背景とかちょっと下手くそですけど「それはそれでザビエラーらしいな」という声もいただくので。

安江:少年漫画は描き込みが多くなりがちだから大変ですよね。少女漫画だと、登場人物の表情で魅せることが多いので、背景が少なかったりするのですが。

ザビエラー:そうですね。僕も描いていく中で、アクションで魅せると見開きになったり、躍動的に動かさなかったりしなければならないので、その分描き込みが大事になってくるなと感じています。

安江:最初は描き込みの塩梅も難しいと思うので、3巻ほど連載を続けて「長期連載とはこういうものか」と一度知っていただくのがいいのかなと思います。

ザビエラー:3巻も続くのか心配ですね……。

安江:ザビエラーさんなら大丈夫ですよ! あと、大手出版社は単行本3巻分は連載を続けてくれる編集部が多いので、実際のところどうなのかは担当の方にに聞いてみてください。

ザビエラー:おお、そうなんですね! でも例えば3巻出た場合、印税ってどうなるんでしょうか?

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安江:1巻でどれだけ刷るかにも寄るんですが、大手出版社で新人作家の場合、最近は1万部刷るか刷らないかぐらいだと思います。

ザビエラー:なるほど。

安江:例えば、単行本価格が500円だとして、1万部刷ったとします。紙の場合は刷った分だけ印税が入ってくるので、印税率が10%だとすると、50万円が漫画家に支払われます。

ザビエラー:そうなると、3巻で150万円ですね。

安江:いや、それがそうもいかないんですよ。
最初の1巻で1万部出したとしてもすべて売れるというのは難しくて。実際には80%売れる本もなかなかなくて、40〜50%ぐらいしか売れないというケースは往々にしてあります。そうなると2巻以降の発行部数は下がってしまいます。印税も50万円から30万円、20万円になってしまうのが現状です。

ザビエラー:ええ……。どうすればいいんでしょうか。

安江:そこで肝になってくるのがデジタルの売上です。今でも市場の半分近くは紙が強いですが、ザビエラーさんのようにWEBの特性を理解している作家は電子書籍で売れると思います。これからの漫画家はむしろデジタルで売れるための方法を考えた方がいい。印税も紙の単行本のような発行印税(刷った数の印税分が支払われる)ではなく実売印税(実際に売れた分の印税分が支払われる)なので、売れたら売れた分だけ入ってきますね。

ザビエラー:なるほど。単行本を紙で売ることだけが手段じゃないんですね。まだ不安なところもありますが、ちょっと安心しました!

モテるよりも、結婚するよりも、売れたい

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安江:話は変わるんですが、あれだけSNSでバズると私生活ってどうなるんですか? ぶっちゃけモテます?

ザビエラー:いやーーそこはまだ童貞感があるんですよね……(笑)。でもコミケのときにファンレターをくれた女の子がいて、それは本当に嬉しかったですね。

安江:なんですかそれ、めっちゃいいじゃないですか!

ザビエラー:ブース近くでもじもじしていた子が、僕のところに来て、手書き5枚ぐらいの手紙をくれたんですよ。ほんと泣きそうになりましたね。

安江:モテるとか野暮なこというよりも、そっちの方絶対いい。いやーグッと来た。

ザビエラー:あと、僕を好いてくれる人って、9割男性なんですよね。ちょっと童貞感ある人も多くて、それはそれで嬉しいですけど(笑)。

安江:なるほど。でもそれっていいことですよね。過去の自分みたいな人が来てくれてるっていうのは、作品としてもターゲットとしても成功してるので、いいことだと思いますよ。あとこれ、自分含め、採用面接でもよく確認するんですけど、5年後はどうなっていたいですか?

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ザビエラー:すごくシンプルですけど、身を粉にして漫画を描いて、連載で「売れたい」。それしかないですね。今は異性にモテるよりも、結婚するよりも、売れたい。その思いが強いです。

安江:おお! とても熱くて、素敵です。半年前にあれだけ悩んでいたザビエラーさんだとは思えないです。これからも応援しているので、頑張ってください。何かあったらいつでも相談しに来てくださいね。

ザビエラー:嬉しいです。突っ走っていきます。ありがとうございました! 

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『スランプさんいらっしゃい』では漫画家・クリエイターのお悩みを募集しています。マンガボックス編集長・安江さんに相談したいという方は下記メールアドレスまでご応募ください!
Mail (窓口:ライター高山):tkym@gmail.com
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ライター・撮影:高山諒
企画:おくりバント

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DeNA IPプラットフォーム事業部長 / マンガボックス編集長 2011年DeNAに新卒入社。入社1年目の冬に韓国でのマーケティング組織の立ち上げを手がける。2年目に米国でのマーケティング業務。全社戦略の立案などの仕事を経て、現在マンガボックス、エブリスタの二事業を管掌する。

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コメント (1)
こんばんは🌆
ターゲットは過去の自分って本当にそうかもしれないです。
私はエッセイ書く事が多いんですけど、昔の自分に宛てて
書いてる気が凄くします、そして皆さんがコメントをたくさん残してくれるので
みんなで私の思い出を共有している気がします(笑)
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