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ベッド55床を敷き詰めたいのに…… 歌舞伎町の消防法、厳しすぎてどうする? | 「BOOK AND BED TOKYO」のお仕事

厳しい規制を逆手にとり、
新宿店ならではのシンボルを生み出した設計

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規制を逆手にとって「プライベートルーム」をつくってみた

「泊まれる本屋」をコンセプトに掲げる、BOOK AND BED TOKYO。Manekineko & Partnersは5店舗目となる、新宿・歌舞伎町店の設計と内装デザインを手がけました。

設計をするうえで一番難しかったのは、消防法の規制!

2001年の歌舞伎町ビル火災があってから、歌舞伎町は「都内随一」と言われるほど消防法の規制が厳しい街になってしまったんです。避難導線のため1200mmの通路幅の確保が義務付けられていたけれど、新宿店に備えなければならないベッドの数は55床。1200mmも店内の面積が潰されてしまうと、どう考えても55床を入れるのは無理な状態でした。

この課題解決案として生まれたのが、「消防隊進入口を妨げないよう背の低いキングサイズベッドを採用し、通路ではなくプライベートルームとして活かす」という設計。

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消防隊の進入の妨げになる二段ベッドや、動かせないものを置くことはできないけれど、この設計であれば許可が降りたんです!
この打開策を見つけたことで、デッドスペースになってしまうはずの空間を「BOOK AND BED TOKYO初のプライベートルーム」として付加価値をつけ、宿泊単価を上げることにも繋げることが出来ました。

180220平面図

採光率の基準を満たすための余白は、
歌舞伎町の路地裏をイメージして人気スポットに

高い建物がかなり密集している歌舞伎町では、採光(館内に採り込む光の量)を左右する窓際の設計も気をつけないといけません。日常生活のなかで、室内に入る太陽光やライトの照度基準なんて意識することはあまりないと思うんですが、健康で快適な暮らしのために、一般住宅を建てる時にも窓の面積や採光率は厳しく法律で定められているんです。宿泊施設の場合は保健所が「有効採光率」の基準を定めていて、開店するには採光率の厳しいチェックを通過する必要があります。

最初は窓にベタ付けで二段ベッドを配置する予定でしたが、それだと空間全体に光が行き渡らない。そこで、窓と客室の間に余白をつくることにしました。そうして生まれた細い通路を、歌舞伎町の路地に見立ててデザインしています。

今は宿泊先も写真で選ぶ「ジャケット買い」が主流。気づいた人だけが楽しめるこの路地裏は、宿泊予約サイトやSNSで目を引くよう赤を基調とし、ネオン街を彷彿させるライン照明を採用しています。この路地裏も、新宿店人気のフォトスポットになりました。

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「表層的なデザイン」だけではもったいない。
そこに機能性を持たせ、ワンランク上の内装に仕上げる。

新宿店のデザインでは、「キャッチーな歌舞伎町らしさを、下品にならないよう取り入れてほしい」というクライアントからの要望がありました。歌舞伎町のネオン街を想起させるために、ストレートにネオンを採用する案もあったけれど、ネオンライトだけでは暗すぎて本が読みにくいんですよね。定められた照度基準も満たせませんでした。
「泊まれる本屋」というコンセプトから考えても、もう少し温かみと重厚感を持たせたいと思い、ラインライトを選びました。デザイン性だけでなく、「過ごしやすさ」と「照度基準」の両方を満たしています。

クライアントが希望する空間・デザインを実現することは大前提ですが、表層的なデザインのためだけでなく、そこに機能性や利便性をかけ算した最適解を見つけるのが私たちの仕事だと思っています。

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空間のアクセントとして設置したミラーボールは、ギラつき感を抑えるためにシルバーで小ぶりのものを採用しました。ライブハウスのような雰囲気になってしまうと、落ち着いて本を読みにくいですからね。「かわいい」と思えるくらいが、ちょうどいいかな。

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BOOK AND BED TOKYOは、創業時から「本に囲まれる」という体験価値を大切にしています。新宿店以前の店舗でも、左右の壁だけでなく天井に多くの本を吊るしているんですが、「徐々に本が斜めになってしまう」「固定器具のメンテナンスが大変」という課題があったんです。その反省を活かし、新宿店では天井に格子をつけ「漫画の各ページをクリップで止める」というデザインを採用しました。

課題を解決するだけでなく、「イベントや季節によって吊るす本を簡単に変えられる」という可変性を新たに付け加えています。

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◎ 私たち「Manekineko & Partners」については

その他のインテリアデザイン:

各種お問い合わせは hello@indigodesign.jp まで。


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