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ナードコアを好きな人はセンスがいい。

20年くらい前にナードコアテクノというジャンルをはじめて、何年かブランクはあるが、今もやり続けている。

要するに日本語のネタを(違法)サンプリングして、テクノやハウスなどのダンスミュージックに使用するという当時としても、今でもあまり陽の当たらない音楽だ。

1998年頃だろうか?大学生の頃だった。
俺は、PCの無料音楽作成プログラムMODというのを使っって吉幾三の「俺ァ東京さいぐだ」を魔改造しNO DISCO CITYという曲を作った。
これをクラブイベントなどでライブしていたのだが、これを聞いた当時のテクノDJ周りの先輩達が気に入って、悪乗りして何万円もかけてくれてDJ用のアナログレコードを完全にインディーズでリリースした。

せいぜい200枚程度だったが、表立って語られる事はないが、実はアンダーグラウンドのクラブミュージックアンセムとして今でもクラブでかかり続けている。


ちょうど、この頃、こういった違法サンプリングをしたテクノ楽曲を作る若者が当時、自然発生的に日本中に現れていた。
各々は各自、クラブやライブハウスで活動していたが、それがインターネットの普及により、つながるようになり、イベントが行われ、シーンめいた物が出来上がっていった。

こうした電気GROOVEや海外のテクノミュージックに洗礼を受け、インターネットを通して繋がった日本のアンダーグラウンド違法サンプリングテクノシーンを「ナードコアテクノ」と呼ぶようになった。

日本にそんなシーンがあるのか、と当時サブカル雑誌で鳴らしていたQUICK JAPANやカルチャー誌「STUDIO VOICE」などに取り上げられ、当時としては結構な話題になった。今それを知っている人は30代半ば以上のおじさん達だけだろう。

こうしたインターネット+DTMの動きは直接的でないにしろ、その後に日本のエレクトロニックダンスミュージック界に影響を与えているはずだ。


このシーンは当時のクラブ雑誌や音楽雑誌にはことごとく無視されたが、僕のソロユニット、レオパルドンの完全に違法サンプリングで民生用のPCの無料音楽ソフトで作られたファーストアルバム「Cake or Girl」は渋谷タワーレコードのインディーズチャートで1位を獲得するなど、違法にも関わらず、全国のアンダーグラウンドなテクノ好きなどに知られることとなった。

その時に実は金のにおいを嗅ぎつけたおじさんが俺に大きなレーベルからリリースをしないか、と誘われたが、「違法サンプリング」であることに重要性を置いていた俺は「漂白化」されると面白さを失う事が分かっていたので、それを断ったことがある。そこからずっと日陰音楽、ある程度「負い目のある音楽」という運命を背負っていくことになる。

当時はナードコアテクノと括られていても、それぞれアーティストによって全くスタイルがことなっていた。
のちに一部のナードコアは海外に受け入れられ、海外のハードコアテクノや、同人、オタク、音ゲーなどの流れと合流、J-COREなどと呼ばれたりした。

当初ナードコアテクノシーンの主力の位置していた俺も、J-COREの流れには合流することはなかった。もともとのルーツがハードコアテクノではなかったので、微妙に居心地が悪く彼らの文化になじめなかったからだ。

俺のルーツはシカゴハウスやデトロイトテクノの色が強かった。
ナードコアはJ-COREとなったが、それでもオールドスクールの広義の意味でのナードコアは一部の好事家に世代を超えて支持され、その流れを組むアーティストも現れていった。

時は過ぎて2019年。
日本にナードコアを求めてやってきたアメリカ人青年イアンの手によって同人誌にて「ナードコア大百科」が作られた。

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イアンという人物は、ナードコアが好き過ぎて日本に来てしまった。(今はアメリカに帰ってる)そして、日本でナードコアDJ/アーティストとしてデビューし、全編ドリフのネタの作品を作り上げたり、とにかく奇特ですさまじい行動力と熱量を持った日本の一部のアンダーグラウンド打ち込み音楽文化を書物にまとめることで後世に残した重要な人物だ。

そんな中、俺は割としばらく俺はラップをやってみたり、FUNKOTをやってみたりといろいろと音楽遍歴を重ねていくのだが、ここに来て、やはり音楽的な本質というのを己に問うてみたところやはり(初期の)ナードコアテクノと呼ばれていた音楽に還りはじめた。

そもそも俺がダンスミュージックに求めていたものは、無意味性と狂気、非日常性、とにかく聞いて驚くような物だった。その点で行くとFUNKOTもそうだったし、DJ音楽としての合理性も高かったので相性が良かったのだ。
当時から思っていたが、FUNKOTがすごくナードコア的だった。

FUNKOTを追求し、FUNKOTについて自分が発見した事、見出した事をインドネシアFUNKOT界の伝説のDJに実際に会いに行き、直接聞いたことでいろいろと確かめられた事もあったし、自分の中ではFUNKOTが一段落した後、ナードコアに対する自分の落とし前という意味でもあり、贅沢ホリデイズで「節子」をリリースした。

これは自分の中で非常にエポックメイキングな作品で忘れる事はできない。
2017年に発表されたとき、この曲は話題にならかったが、同業者やミュージシャンに非常に受けたのを覚えている。


アーティストが狂っていることを自称しているのに、客観的にそんなに狂っていないのは最高にダサいと思っているけれども、この曲は今自分で聞いてもやはり狂っていると思うし、自分の中では何がでかかったか、というと「違法サンプリング」を使わずにナードコアテクノの面白さとバイブスが再現できた所だった。
しかし、クリエイターやミュージシャン側に受けたところで、一般の音楽リスナーに受け入れられる事は無かった。
味が濃すぎなんだろう。

しかし、節子は死んでおらず、なんと、その2年後にたまたまTikTokで大きなバズりを経験する。
しかもこれが要因が全く分からない。なぜかインドから火が付き広がり、最終的にはあのヒカキンが「節子」を使って動画を撮るまでいった。

しかし、悲しいかな、TikTokは楽曲がバズったとしても作者にスポットが当たることはほとんどなく、節子はTikTokで流行った変な曲の一つとして消費されていった。

いや、それはそれですごくうれしいのだが、TikTokの動画は短くて、演歌のイントロの語りから突如シカゴハウス的なサウンドになるアイディアの異常性の部分が評価されたのではなく、「節子じゃねえかぁ~」の声を刻んで「つっこーつっこ―」にエディットしたマシンガンサンプルの部分だけが使われそれがウケたのだった。

その後、ちなみにTikTokでのバズが終わった後、DJのREMO-CON氏に発見された節子はbayfmでしばらくの間、毎週かかっていた。ありがたいことです。

ウケてほしい所がウケない、というのはまぁよくある話だ。

そういえば、NO DISCO CITYはマシンガンサンプルだけで構成された狂った曲だが、未だに現場でかかって盛り上がっている。

ちょっとまて、みんな俺ほどじゃないけど、結構マシンガンサンプル好きなんじゃないのか?
マシンガンサンプルは特に新しくない手法だが、20年たっても古びない技だと思う。
本当に自分がやりたい事はマシンガンサンプルで日本語を刻む事なのではないかと思ったのだ。

かくして、原点に還った俺はオールドスクールナードコアⅹタモリが編み出した昭和の密室芸「つぎはぎニュース」「MADニュース」を組み合わせる事によって誕生した魔物、「ストリートナードニュース」というジャンル(?)を思い立った。

ナードコア的手法にMADニュースを組み合わせる事によってより一層、意味の崩壊ぶりと狂気度を極められるかもしれないが商業的な世界とはどんどん遠くなる。
しかし、本来俺が求めている狂気やバカバカしさはここにある気がした。

見てくれ!こいつらだーっ!
(一本につき1分ないので)




見てくれてありがとう!

これらを意味不明だと投げ出さずに三本とも見てから、この部分を読んでいるのなら、あなたは完全に「センスがいい」か、または俺の友達か、どっちかだろう。

もちろん、俺に言われたって事は、世の中的には完全に「センスが悪い」かもしれないとだけ言っておく。


ある人が「センスがいい」と言われていても、また別のある人にとっては「センスが悪い」ということはよくある。
また、世の中的にセンスが悪いといわれていても、自分にたまらなくセンスがよく感じられるという事もあるだろう。
もはやセンスがいい、というのは単なる「好み」の問題だと言っていい。

それはジャンルにもあって、たとえば今では日本でもだいぶ世の中に浸透しているヒップホップという文化で考えてみると、ヒップホップの独特のファッションはその価値観の中でセンスが良くても、たとえば、なんだろう、ゴシックメタルの人から見たらセンスが悪い、というか、好まれないという事だ。

要するにセンスが良いというのは「自分の好きな感じと貴方の好きな感じは合ってるよね」という確認に過ぎない。
あくまでも自分の価値基準だけで言い切ったいい方なのである。

だから世の中の多くの人に「ハイセンス」とされている物は俺にとっては特に何の興味もないし、逆に俺から言わせればセンスが悪いんじゃないのか?というだけの話なのである。

だが、聞いてくれ。

現実的には世の中の評価はすべて数字だ。いくら売れた、いくら儲けた、再生数がナンボだ、いいねの数がすごい、フォロワーが多い、とにかく全部数字だ。

数字は容赦がない。
数字は冷酷な評価を突き付けてくる。

数字を見れば俺の音楽は世の中的にはかなり必要とされていないし、センスが悪いということは明確なのであるが、でも、ここまで読んでくれている貴方のような「センスがいい」と思ってくれる人がいる限りは俺はネット上にオーパーツとしてこれら作り上げ、ひたすらアップしていくことにする。

何のためか?

もちろんオーパーツなので、数十年後に物好きがネットの遺跡からそれを見つけてニヤっとさせるためでもあるが、それだけではない。
拡散はさせたい。
何故か?お金のためよりもデカい目的がある。

たとえば、「こういったテイストのものを面白れるような人が「センスがいい」と言われるような世の中の方が、今よりも自分が生きやすくなる」ということだ。

だから、俺はオーパーツを作る。

そして、これを「面白い」と思うセンスのいいあなたは、自分の周りのセンスがいいなと感じる人達にこのオーパーツの存在を拡散してほしい

そして、これが分かる人間こそが「センスがいい」…いや、言い過ぎた。
少なくとも「悪くない」という空気を作っていくのだ。
そうすれば俺にとっても貴方にとっても、少しだけ話が通じやすくなって、少しは生きやすい世の中になると思うのだ。

そう。
あえて言おう、ナードコアが好きなヤツはセンスがいいんだ。

ユノーウ?🔥





ありがとうの一言です。本当にありがとう!