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たぶんこいつらは悪人だという話。

沖縄にDJで遠征に行った時の帰りの話です。

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楽しい気持ちの余韻を楽しみながら、帰りの飛行機に乗ったのですが、俺の隣に、いかにもモテそうな長身で清潔感あふれるイケメン(一人は光GENJIの赤坂みたいな感じで、一人は市川海老蔵みたいな感じ)の尖った靴を履いた30代の男2人が座ってて、なんかこういう見た目がシュッとしてる人と一緒になるとなんかコッチが劣勢人種みたいな気がして苦手なんだけど、指定席の関係でそうなったので、離れるわけにもいかず約3時間程度のフライトを隣で過ごすことになったわけだ。

そうすると、嫌でも彼ら二人の会話が耳に入ってくる。

フライト中は暇だし、聞き耳を立ててしまうって気持ちは分かってもらえると思うんだけど、最初は何の話をしてるかよく分からなくて、話の概要が全然見えなかった。

とにかく、よく喋っている。

3時間の間ほとんど会話していたと思う。

男二人でよく三時間も会話が持つものだ。きっと二人は大の仲良しで、それも二人ともイケメンなんて類は友を呼ぶんだな、俺の仲よい奴らにはここまでのイケメンはいねえなー、なんて思っていた。

で、光GENJIの話を海老蔵がくそウケてて、大笑いをしてたりしてるんだけど、聞いてる俺は一ミリも面白さが分からない。

どうも話の全体像が見えなくて、何か別の言葉で話しているような、外国人が話しているような感じだった。

ただ、なんとなくエロい話をしてるっぽいな、下ネタ好きなんだなー、と。

たとえば自分の知らない趣味の世界や、全く知らない業界の話だったら、興味深く聞けたんだろうけど、これが聞いてても、ちっとも面白くないんで、二人をラジオ代わりにするのはやめて、少し居眠りをしていた。

ふと気付くと二人はまだ話をしている。

どうやら家族の話をしている。

妻と子供の話になった。

聞いてる限り、しっかりした仕事もしてるようだ。

海老蔵の話を聞いて、光GENJIが、「それは良くできた奥さんだな〜」と褒めると海老蔵は「だろォー!?」みたいな感じで、ご満悦の様子だ。

さすがイケメンは良くできた奥さんをお持ちですな。

しかし、そのうちに「LINEを見られるのが一番ヤバい」「カカオって知ってる?」みたいな話になった。LINEもカカオもチャット用のアプリだなー、なんて思ってると、また女の話が始まった。

互いに何かスマホで写真を見せ合って、この子は可愛かっただの、どこでいつ会っただのと会話してる。

要するにこの二人は妻子がいながら女と遊びまくってるらしいし、それをお互い自慢したり、情報交換していたらしいのだ。

さらに聞き耳を立てると、LINEグループにヤリチン同士の情報交換のグループがあるらしい。きっと沖縄に男二人で行っていたのもおおかたそんな理由だろう。

海老蔵は「LINEを見られたら俺の二面性がバレるから、それは絶対に防がないと」と言った。

二面性…ねぇ…

光GENJIが海老蔵に「最近、可愛いブタいた?」と聞いた。

海老蔵が「川崎であった21歳、けっこう可愛いよ。羽田で働いてて…まあ、結構ビッチっつーか…」

要するにブタは隠語で、自分が遊んでる女達を「ブタ」と呼んでいるらしい。

俺には想像がつかないルールと世界観で生きているんだな、と確実に感じた瞬間だった。

光GENJIと海老蔵はその端正な顔に似合わない下卑た笑い声で笑った。

というか、その時から彼らの笑い声は俺の耳に下卑た声に聞こえ始めた。

海老蔵が言う。

「俺たちが使ってるようなXX阻害剤(聞き取れず)と同じような○○阻害剤って成分が入ってて、女に飲ませて記憶なくさせる薬があるらしいんだよ。

何やっても覚えてないらしい。

俺、個人輸入しようかな。」

光GENJI

「それは使えるかもな〜」

俺の心の声

「とんでもねえ〜ワルだな!お前らはよ!」

「こいつら、マジでろくでもねえな〜」と思いながらも、飛行機は間もなく成田空港への着陸体制に入った。

着陸。

携帯の使用が許可されると二人は速攻でスマホを取り出して、LINEを立ち上げている。

海老蔵はスマホ二台持ち。片方のスマホにLINEが飛び込む。

そこには可愛らしい子供の写真が送られてきた。

海老蔵は微笑み、手馴れたフリック入力で、長い返事を返していた。

もちろん何を返していたかまでは分からないが、きっと一台は「よいパパ」用、もう一台は「ブタ狩り用」なのだろう…

光GENJIの方はスマホは一台でなにやらやり取りをしていた。

こいつらモラル低いし、それと同時に狡猾なんだな〜!

機内アナウンスが入る。

「ゴミを前の座席のポケットに放置しないで、持って出てくださいね」という内容だ。

飛行機は降機する際に出入り口にポリ袋があって、そこにゴミを捨てられるから、ゴミを持って飛行機の出口まで行けばよい。

当然、俺も機内で飲み干した沖縄で買った「さんぴん茶」のペットボトルを手に持った。

その時、そんなアナウンスがあったのに光GENJIはペットボトルをわざわざ前の座席のポケットに押し込んだ。

海老蔵もそれを確認しながら全く注意する様子はない。

「あー、やっぱりそういう奴ってこういう奴だよな〜」

と変な納得をした。

彼らの「ブタ狩り」に何か言えたスジではないが、ゴミを放置するのは注意できる。

彼らを注意できる!このゴミ放置を指摘することで、彼らの不道徳な存在に対して物申すことが出来る。

俺が出来る事はこれしかない!

飛行機は動きを停止し、二人はすぐに立ち上がり上の棚の荷物を降ろす。

俺はすかさず光GENJIが座っていた座席の前のポケットに深くねじ込まれたペットボトルをこれ見よがしで取り出した。

俺「…これ、忘れてますよ。」と差し出す。

光GENJI「…あぁ、どうも。」と(面倒臭そうに)受け取る。

それだけだ。

それで終わりだ。

何も起こらない、何も変わりやしない。

俺には何も出来やしない。

そうか。

彼らの事を「ろくでもない」と思う俺が差し出がましいのかも知れないな。

世間体や肩書きで見れば、俺は「汚い半袖短パンでうろつく独身、自由業の40代の前科者」で、彼らは「清潔感のあるまっとうな職についた格好良いパパ」なんだ。

どう考えても見た目や肩書きがマトモなのは彼らだ。

俺は2015年3月、法律で禁止されてる植物を持ってた。

彼らは妻子がいる身でそれを隠しながら、女性をブタと呼んでそこらで今でもやり散らかしてる。

犯罪者は俺の方。

模範市民は彼ら。

世の中、マジ超ウケるし、正義も悪も道徳も不道徳もねえんだ。

世の中、バレてなきゃやり放題。

そういうものなんだ。

ああ、クソ!楽しかった沖縄遠征のはずなのに、なんで今ここでこんな気持ちにならなきゃいけねえんだよ。

ちくしょう。

ここには酒が売ってねえや。

しょうがねえからポケットに残ってた残りのハイチュウ2個を一気食い。

クソ甘酸っぱいだけだった。

ああ、やっとバスが来た。帰ったら酒を飲みにいくか。

で、酒を飲んで考えたんだが、俺はもしかしたら、あの二人のようになりたかったのかも知れない。
まともな会社員をやったことがない。結婚もしてない。子どもも居ない。

異性を手玉にとるなどという経験は体験したことがないし、これからそのような事があるはずが無い。

自分のした事がない経験を羨んでいるだけだとしたら?

容姿が恵まれて生まれていたら、それをどう活かすのか?

それはその人次第であるから、美人やイケメンは一種の特殊能力者なのであり、我々凡百かそれ以下の容姿しか持たぬ者に代わって、私利私欲に走ることなく、X-MENのようにその力を平和利用してもらいたいものである。

でも、ゴミをちゃんと持っていくぐらいの事はやれよナ!!!!!


ありがとうの一言です。本当にありがとう!