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はたらく相棒

「ㄟ、是不是今天有東西出貨?訂飛機嗎?」(あれ、今日って出荷するものあったよね?飛行機予約した?)

「啊!・・・怎麼辦!?」(あっ!・・・どうしよっ!?)

相棒のうろたえた叫びを聞き、逆に冷静になり、トラブルシューティングモードに切り替わるわたし。

ここは、台湾の南部にある地方都市、台南のスクリュー工場。
海外営業部のわたしたち二人は、今朝もまた、新たな困難に立ち向かっていた。
相棒とわたしの仕事は法人営業。
お客様は日本の会社やその台湾支社だ。
製造業での一般的な営業の仕事、つまり、商品の見積、注文、納期調整、出荷までの管理、クレーム対応などをしている。

隣のデスクでパニックを起こしおろおろしている相棒に対し
「大丈夫、大丈夫、還有辦法吧」(大丈夫、大丈夫、まだいけるよ)
と、とにかく彼女を落ち着かせようと声をかけるわたし。

わたしたちの上司にあたるマネージャーは
「來得及喔,先聯絡給負責人吧!」(まだ間に合うよ、とりあえず担当者に電話して!)
と、後方のデスクから的確なアドバイスを飛ばす。

相棒は前日に出荷予定品の航空便を手配するつもりが、すっかり忘れてしまっていたのだった。
しかし、出荷当日ではあったものの、朝早くに気づいたため、業者への連絡でなんとか航空便手配が間に合った。
相棒はこうした出荷手配を忘れがちであるため、相棒自身にも頼まれていることなのだが、わたしは毎朝直近の出荷予定品をチェックするようにしている。

出荷予定品の航空便手配がどうしても間に合わなかった場合、出荷当日になって商品の製作や検査が間に合わず出荷延期となってしまった場合など。そんな差し迫った問題が発生したときにこそ、わたしの出番がやってくる。
なぜなら、相棒が苦手とする日本語でのスピーディで円滑なお客様対応はわたしが得意とするところだからだ。わたしはすぐに国際電話で先方に連絡し、トラブルシューティングを開始するのである。

***

わたしがお客様からのメールを確認していると、出荷した品物に添付している検査資料に不備がある、というクレームが届いていた。

「え?どうして!?」
今までにないクレームで、今度はわたしがうろたえることになった。
検査資料は品質管理部が作成し、出荷品に添付する。品質管理部はベテラン社員ぞろいなので、ミスが起こる可能性は低かった。

「我要問品管」(品管*に聞くね)*品質管理部
相棒がわたしに代わってすぐに品質管理部の担当者に確認してくれたので、わたしもスピード感をもってお客様対応にあたることができた。

問題の原因は、品質管理部が顧客特記事項を失念していたことによる検査資料数量不足であった。
品質管理部には社長を通じて再発防止策を確認した。

社内では基本的に台湾華語(台湾の公用語である中国語を台湾華語という)と台湾語でのコミュニケーションとなるのだが、わたしの台湾華語は流暢ではないため、他部署で普段やりとりの少ない社員と円滑に会話をすることは難しい。そこで、このようなスピーディな対応が求められる場面では、相棒がわたしに代わって台湾人とコミュニケーションをとってくれ、日本語を交えつつわたしに必要事項を伝えてくれるのだ。

「有你真好」(相棒がいてくれてよかった)
「我也有你真好」(わたしこそ、まなてぃがいてくれてよかったよ)
こうして相棒と短所を補いつつ問題解決を果たしたとき、いつも互いを励まし感謝しあう。

このように、互いの短所や苦手分野を補い合いつつ、相棒とわたしは互いの仕事ぶりから学びを得て、少しずつスキルアップしている。デスクも隣同士で、互いの仕事ぶりを互いに観察しつつ働いているため、お互い成長を日々肌で感じあいつつも営業戦士としてライバル的な一面もある。
とてもいい関係が築けてきたと思う。

2021年4月30日、相棒は会社を去った。
またどこかで再会できたなら、またお互いに成長を確認しあえたらと思う。
台湾世間は日本よりも狭いわけだし、再会する日もきっと遠くない。

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