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一般人の手帳を買い取るという行為がもたらす社会的意義についての考察。

先月まで一緒に住んでた元シェアメイトでゲーム作家のシラドーくんが、「他人の手帳を千円で買い取る」という謎の手帳コレクター活動をはじめました。

んで、さっそくそれらを12/6 まで荻窪で展示しているみたいです。

展示詳細: https://www.facebook.com/events/299547410253053



考えてみると、手帳って何よりパーソナルなモノですよね。

仕事や趣味やデートのスケジュール、目標とか日記的なこととかアイデアのメモとか、1年間の自分が濃縮されすぎていて、一生読むことはないと思いながらも捨てれません。

私は他人の手帳になんて全く興味がなかったのですが、数冊見せていただくと、それは噎せ返るような個性の洪水で、ついつい夢中で読んでしまう面白さがありました。

毎月星座占いを写経している人、限りなくどうでもいい文を(誰に見せるわけでもないのに)毎日書いている人、本当に使ってたの?ってくらいシンプルな人、
びっしり小さな文字で埋め尽くしている人、カラフルな付箋で倍くらいの厚さになっている人など。

あたしには理解できないような手帳との関わり方がそこにはあって、
< どっかの誰か知らない人 > 
のスケジュールや日記は、リアルな短編小説のようで想像を掻き立てられました。


それは、会ったこともないし顔も知らないけど、
ついつい面白くて読み込んでしまうツイッターと似ているかもしれません。


誰だか分からないからこそ、素直に興味が持てるし、
誰だか分からないからこそ、先入観なく楽しめる。

知り合いの人の手帳だったら、そうはいかない。

知らない誰かだからこそ、この人は男性かな女性かな? 何の仕事しているんだろう? 何歳くらいかな? 字がきれいだな。 絵がうまいな。 何でこのひと手帳にこんなこと書いてるんだ? 推せる...!

とか、ニヤニヤできるんですよね。


今やSNSでの顔出しは当たり前になっていますし、会いたい人が居たらすぐに合えてしまう東京ですけれど、高校生の頃には、顔も知らないメル友が居たことを思い出しました。
顔の見えない文通は、なかなかドキドキするものでした。


顔で判断してしまいがちな世の中で、
顔の知らない相手を知る行為は、なかなか世界が広がるものです。

確かに生きていた [ 誰か ] の時間をのぞき見ることが、こんなにも好奇心がかき立てられるものだとは思いませんでした。

そして、一般人に興味を持って、お金を払って個人の手帳を買い取る(しかも熱心に、売ってもらえませんか?!って言ってわざわざ買うw)活動をしているシラドーくんは、芸術と経済の文脈の中で、何か新しい価値観を投じることができそうな気がしています。

それは、「一億総クリエイター」時代とか呼ばれているネット社会で、「いやいやコンテンツと言えるレベルに達していないからクリエイターと呼べる人は限られている」だとか反論している人たちが居ますけれども、

「千円」という決して安くはない金額で、
(しかも100冊買うことを目標としているので「十万円」の予算で)
一般人の手帳を買おうとしているシラドーくんの活動は、
「一億総クリエイター」を別の次元から肯定することになるな、と。

しかも、ブログやツイッターやニコ生やUstやツイキャスやサウンドクラウドで自ら発信しているクリエーター志望の人ではなく、

「いやいや私の手帳なんて面白くないですよ」

とか言っている一般サラリーマンの手帳とかに金銭的価値を付与して

「読みたいから売ってください。一生大切に保管しますしギャラリーで展示したいんです」

と言っているわけですよね。これってすごいことなんじゃないかと。



「クリエイターではない人をクリエイターに見立ててしまう芸術」とでも言えばいいのでしょうか?


そんな神のようなギャラリスト、聞いたことないですよ。




あたしはまだ売ってないんですけど、展示を見に行く時にお土産として過去の手帳を売ってこようと思っています。


個人的には、自分の一年を千円で買ってもらって、それを一生大切にしてもらえるって思っただけで、なんだか人間としてとても肯定されたような気持ちになっているので、これはもはや慈善活動なのではないかとさえ思います。



そして、ひとりのただの変わった趣味が、あたしの想像力を掻き立てここまで語らせてしまうってのは、なかなか面白い化学反応な気がしています。


さて、長くなりましたが、ご興味のある方がいらっしゃれば、ぜひ。
タイミングが合えば一緒に行きましょう。ではでは。


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今年の冬、荻窪で、あなたが知らない誰かの手帳が読めます。

ゲームクリエイターを生業にする志良堂正史のもう一つの顔は使用済みの手帳コレクター。2014年の夏から始まった彼の収集活動は、ウェブを通じ多くの人々の興味関心を集め、11月現在50冊あまりの手帳コレクションを有するに至りました。「他人の手帳を読む楽しみを人々と共有するため」「もっとたくさんの手帳を集めるため」今回、志良堂正史は初めて自身のコレクション展を開催いたします。展示期間中、どなたでも会場で志良堂の手帳コレクションを読むことができます。そして、志良堂本人による手帳の買い取りも会場にて随時実施いたします。最低買い取り価格は1冊1,000円から。少しでも興味をお持ちになられたら、ぜひ荻窪の会場までお越し下さい。人が無意識のうちに書き記した人生の裏側を覗き見るという、唯一無二の高揚感が得られるこの貴重な機会、お見逃し無く。

-展示情報
(※志良堂は会期中常時在廊予定です)
会期:2014年11月15日(土)、16日(日)、29日(土)、30日(日)、12月3日(水)〜12月6日(土) 時間:11:00〜19:00 
会場住所:ガレリアアノニマ
杉並区天沼3-31-30 ホワイトキャッスル荻窪101
地図URL:
http://homepage3.nifty.com/g-anonima/map.html

-お問い合わせ:
shirado1980@gmail.com 
twitter:@shiradomasafumi

-手帳コレクター 志良堂正史の言葉
他人の手帳を読みたいと思ったことはありますか?
みんながみんな自分だけのために書いている、あの手帳です。
勝手に読んだら怒られますよね。
それにもし、あなたが手帳を持っていたら、読まれたくないはず。
でも、僕はずっと読んでみたいと思っていました。
なぜなら秘密が好きだからです。

そして、2014年4月。
とうとう他人の手帳を集めはじめました。
買い取り価格は1冊1,000円から。
6日後、
ひとりの見知らぬ方がインターネット越しに名乗り出てくださり
念願の他人の手帳を手に入れました。
さっそく読んでみると、
秘密を覗き見る喜びにとどまらない、
豊かな楽しさにあふれていました。
まったく知らない人なのに妙に共感したり、
持ち主のキャラクターが浮かび上がってきたり、
落書きや空白にも物語を見出せたり……。

これは、もっと集めねば!


それから半年間—。
色んな人に声をかけて、笑われたり、引かれたりしながらも
手帳のコレクションは増えていきました。
2014年中に10冊集めるつもりが、
コレクションは50冊を越えました。
そして、手帳が集まってくるうちに
この楽しみを独占するのはもったいないと思うようになっていました。


こんな感じで手帳展、開催します。
他人の手帳を読む、ちょっと新鮮な体験が、あなたを待っています。
もしよかったら、あなたの手帳もぜひ、買い取らせてくださいね。

-手帳コレクター 志良堂正史プロフィール

1980年生まれ。
広島県出身。
北海道の競走馬育成牧場でサラブレッドの調教や世話に従事したのち、ゲーム会社にてプログラマーとして経験を積む。
その後、フリーになり、ゲーム『ツキのないがいこつ』(PC)『シルアードクエスト』(PC & iOS)を発表。現在は人工知能の会社であるエウレカコンピュータに所属。
RPGやコマンド選択ADVなど、文字のやりとりが中心のゲームを愛する。最近は手帳から得られた感覚をゲームの世界に再生すべく、ゲームと文字について考える日々を過ごしている。

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