見出し画像

コーチングを通して探究論文のテーマについて対話する

2022年度から「総合的な探究の時間」が新しく高等学校学習指導要領に組み込まれます。
皆さんは「探究」についてどのようなイメージがあるでしょうか?
研究者しかできない?授業から出たら役に立たない?そんなに深めたいものがない?


私は「探究」という行為、つまりは「自分が気になることをとことん突き詰める」というのはとても人間らしい行為だと思っています。
生まれたての赤ちゃんは自分の好奇心のままに探究していますよね?
でも成長するにつれて常識やその日やるべきことによって、好奇心のままに探究したいという気持ちがどんどん薄れていくことが多いです。
それでも自分の興味関心を突き詰めてその愛を語れる人は、大人になってもその探究心が色々な分野で活きるし、人としてもとても魅力的です。


今回高校で探究活動が始まることで、多くの高校生が個人で探究論文に取り組むことになるのではないかと思います。
探究活動をより学校教育に馴染ませ、高校生のその後の人生の指針になるような場にするためには、探究論文のテーマ設定が特に大事になります。
生徒の興味関心が多岐に渡る中で、どうしたら有益なテーマ設定ができるように指導することができるのか?
そう考えたときにコーチングで学んだことが使えると思ったので、3点ご紹介します。


どんなテーマにも好奇心を向ける


まずテーマ設定においてとても大事だと感じたのは、どんなテーマにも好奇心をもって一緒に考えるということです。
これはコーチングの「相手の心に好奇心を向ける」というスタンスを元にしています。
「探究したいテーマがない」と言っている高校生の本当の心の声は「自分が探究したいテーマに他の人が賛同してくれると思えない」ということではないでしょうか?

探究については、アカデミックでない手法はあるかもしれませんが、アカデミックでないテーマはないと思っています。
一見学校の授業に関係ないように見えるテーマ(ゲームなど)であっても、それをどうアカデミックに捉える?という視点で一緒に考えられると、高校生が自分ごととして捉えられるテーマ設定につながるはずです。


テーマが決まったら、テーマに興味を持ったきっかけを思い出す


色々な事柄の中からぼんやりとテーマが決まったら、そのテーマに興味を持ったきっかけを思い出す機会を作ってください。
これはコーチングの「感情の裏には願いがある」というスタンスを元にしています。
「このことについて書いてみたい!」と感じた背景に、どういう不満・どういう願いがあるのか理解できると、この後の問いや仮説がより自分ごとになります。

例えば私が「教育」というテーマに興味があったときに、「教育」に関しての問いや仮説は色々な角度から立てることができます。
そこで私が「教育」に興味を持ったきっかけを深掘りすると、「海外の双方向の授業が面白かったから日本でもやってほしいと思った」というストーリーが出てきます。
きっかけが分かると、「双方向の授業はどうやって組み立てるのか?」「双方向の授業を実践するにはどのような障壁があるのか?」など、自分ごととして取り組める問いの候補を挙げることができるようになります。


問いをたくさん書き出し、ビビッとくるか確認する


きっかけが分かったら、それに関連する問いをとにかくたくさん書き出す時間を作りましょう。
一通り書き出したら、それぞれの問いを個別に見て、「この問いを突き詰めることで自分の心はワクワクするか?」ということをそれぞれ問うてみてほしいです。

これはコーチングの「答えは相手の中にある」というスタンスを元にしています。
テーマは興味があるはずでも、問いをよく吟味しないと途中で「やっぱりこれについてはあまり興味がないかも…」と熱が冷める可能性があります。
実際に論文を書き始めてからそうなるより、できる限りアイディア出しの段階で納得できていない部分を消化しておきましょう。
心が躍るかどうかは他の人と対話する中で見えてくることも多いと思うので、先生や同級生と話しながら「ワクワクするか?」「どこがワクワクしないか?」を一緒に考えられるとベストです。


問いを立てる上ではワクワクするか以外にも、その問いが検証可能かどうか、定義が明確か、先行研究があるか、などアカデミックな部分も合わせて検討したいですね。
テーマの中から検証可能な問いを立てることができたら、その問いに対して自分なりの仮説を立てます。
テストと違って探究論文の仮説は、探究する中で「仮説が間違っていた」という結論になってもOKです。
自分なりのきっかけに基づく問い、仮説、検証方法が決まったら、それが伝わる構成になるようにアウトラインを書くと、探究論文の構成が出来上がります。


コーチングのスタンスを元にフィードバックをかけることで、高校生が本当に探究したいテーマで論文が書けると良いなと思います。
私自身も高校生のときに探究論文を書いて、全然上手く書けた気はしませんが、当時から教育をテーマにしていて今も仕事にしています。
高校生のうちに「自分は何に興味があるんだろう?」とまっさらな状態で考えるのは、その後の進路選択のきっかけになるかもしれません。


どうしたら学校現場で高校生ひとりひとりの興味関心を一緒に見つけることができるのか、コーチングという鏡の探究はまだまだ続く…

この記事が参加している募集

最近の学び

探究学習がすき

すべての人が組織や社会の中で自分らしく生きられるようにワークショップのファシリテーションやライフコーチングを提供しています。主体性・探究・Deeper Learningなどの研究も行います。サポートしていただいたお金は活動費や研究費に使わせていただきます。