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闇の中の囁き

ある田舎の小さな村に、
毎夜決まった時間に奇妙な囁き声が聞こえるという噂がありました。

その声は村の外れにある古い井戸から聞こえると言われていました。

井戸は何十年も使われておらず錆びついた鉄の蓋がかぶせられていました。

しかし、夜になるとその蓋の隙間から、
誰かが助けを求めるような囁き声が漏れ出すのです。

村人たちは恐怖からその井戸に近づかず、
誰もその声の正体を確認しようとしませんでした。

ある晩、都会から来た若いジャーナリストがこの噂を耳にし、
真相を探ることにしました。

彼は夜遅くに村の外れの井戸に向かい
その囁き声を録音しようとしました。

ジャーナリストが井戸のそばに立ち止まり、耳を澄ませると
確かに誰かが低い声で「助けて…」と囁いているのが聞こえました。

彼は懐中電灯を取り出し、井戸の中を照らしました。
しかし、深い闇の中には何も見えませんでした。

声はますます大きくなり
次第にジャーナリストの名前を呼ぶようになりました。

驚いたジャーナリストは一歩後ずさりしようとしましたが
足元の石に躓き、井戸の中に落ちてしまいました。

彼の悲鳴が夜の静けさを裂き、村中に響き渡りました。

村人たちは恐る恐る井戸の方を見ましたが
誰も近づこうとはしませんでした。

翌朝、井戸を覗き込むと、ジャーナリストの姿はどこにもなく、井戸の底は無限に続く闇だけが広がっていました。

それ以来、その井戸からの囁き声は聞こえなくなりましたが、ジャーナリストの行方は謎のままです

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