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 初めて自分から踏み出す瞬間は、何事においても、歳を重ねても、勇気がいる。
 55年生きていても、カフェも、雑貨屋も、床屋でさえ、その扉に手をかけるその瞬間がなんだか怖くすら感じて、ひとりではたどり着けない。例え、うまく扉が開いて、その向こうに我が身をどうにか移動できたとしても、長居が出来ない。例えば、カフェに入って、おどおどしながら、コーヒーを注文できたとしても、あっという間に飲み干してしまい、すぐさま手持ち無沙汰で落ち着かず、伝票を手にそそくさと会計に尻を浮かすしか出来ない。
 そんな男がこれを書き始めた。自己紹介のつもりの稚拙な文字の羅列だ。まず勇気を振り絞った。扉は開いた。
 もちろん、書いている場所は、カフェの席であるはずはなく、ひとり気楽な車内で思いを巡らせている有り様。

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