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なぜ今、「きみの社会のトリセツ」をつくるのか

6月に入り、東京では紫陽花が美しい季節になりました。『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』著者の舟之川聖子です。こんにちは。

きみトリプロジェクトとしての活動も、さまざまに広がりを見せている今日この頃ですが、ここであらためて、わたしたちがこのプロジェクトに取り組む意義について、書いてみたいと思います。

特に、この本を届けたい10代の人たちのことから思い描いてみます。これは、10代の周りにいる大人の皆さんと一緒に考えたいことでもあります。

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昨年から流行しているCOVID-19の感染症とその予防対策により、学校現場では、オンライン授業への切り替えや、会話や交流の抑制を余儀なくされています。10代の人たちの置かれているこの状況は、想像以上に深刻である、とわたしたちは考えています。

なぜなら、成長期の人間にとって必要なのは、健やかな心身の発達だからです。感染しないことのみではなく。とりわけ、他者とのつながりや自我を育んでいく時期にあるはずの人たちが、マスクで表情も見えない、触れ合うことも許されない中で、日常生活を送っています。家庭では、家族間の距離が近くなりすぎ、自立が阻害されている人たちもいるでしょう。本来は、家族に隠し事をし、友達と溜まり場で過ごし、さまざまな学びを得る時期のはずなのに。

これらがもたらす影響は、近い将来、一体どのような形で現れてくるのでしょうか。そして、このような状況下で、わたしたちは、大人として何ができるのでしょうか。

「教育は社会の基盤である」「人は学びをシェアして生きている」と考え、活動してきた市民であるわたしたちは、書籍『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』を通じて、10代の人たちに一つの提案をしました。自分なりの「社会のトリセツ」をつくって生きるというアイディアです。

「トリセツをつくる」とは、社会におけるさまざまな事物、事象を、表現と対話を通じて対象化し、客体化することです。直面している違和感や関心を一旦自分から切り離し、それは「わたしにとって」何なのかを自分の言葉で表現してみることで、自分自身を知り、他者を知り、社会や世界とつながろうとする試みです。

人は環境から強い影響を受けます。家族親戚や友人関係や学校、SNSやインターネットの世界。そこで知らず知らずのうちに内面化してしまった排除の恐怖から、「一般的にはこれが正しいと言われているから、自分もそれに合わせなきゃいけない気がする」や、「今までにないことをすると、変に思われるのが嫌だからやめておく」などと考え、本来は望んでいない選択をしてしまうことがあります。

今、10代の人たちにとって(わたしたち大人にとってもですが)必要なのは、「わたし自身がどうしたいのか」に気づくためのトリセツを「わたしが」つくることではないかと思います。自分で考え、自分の言葉で表現し、トリセツを元に他者と対話することを通して、「そうそう、わたしはこれがいい」としっくりくる実感と共に、一旦対象化するスキルを身につけます。トリセツを更新しながら、生きる習慣をつくります。

この習慣が与えてくれるのは、簡単にだまされたり、強い言葉に煽られて不安になったりすることもなく、何か不当な状況にあっても少しずつ反論もできるようになる力です。もちろん自分を守るだけでなく、仲間をつくるときにも有効です。「わたしはこれが好き」「わたしはこういうふうに考えている」が表現できると、仲間を集めやすく、自分から一歩ずつ、世界に踏み出していくことができます。

正解のない情報がどんどん増え、同調圧力が強くなり、立場の違いによる分断、格差が激しくなっている今の社会状況では、与えられたもの、既にあるものの中からだけ選ぶのではなく、自分で「トリセツ」を見つけながら、つくりながら生きることが一つの指針になっていくと思います。

そして、お互いの「トリセツ」を発表して、見ている世界を交換することで、違いがあるのが当たり前であることを前提とできるようになります。なぜなら、自分に固有のトリセツができてくるように、他の人にとっても固有のトリセツがあることを知るからです。多様性とはどういうことかを心から実感し、その上でようやく、異なる他者と社会でどのように生きていくのか、どう共に社会をつくるのかに踏み出していけるのではないでしょうか。トリセツをつくるだけではなく、トリセツを元に対話する。これら一連の行為は、それをつくった一人の人に影響を与えるだけでなく、同じ場で共に体験をする全員の視野を広げることを可能にします。

そうです、わたしたちがやっていくのは、やはり原点に立ち返り、「トリセツをつくるというアイディアを届ける」ことです。そのためには、『きみトリ』をめぐる対話の場と、その一つである「トリセツづくり」という機会が、子どもたちにとって、他者と交わり、自分を知るきっかけになってくれたらという切なる願いから、働きかけていくことです。

出版してからのこの半年、まずはわたしたちにとって取り組みやすい大人向けの場からやってみました。そして、ここからは、いよいよ10代の人たちに届けるための場をつくっていきます。

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きみトリプロジェクトでは、学校や教育に携わる皆さんに活用しやすい形として、「きみの社会のトリセツづくりワークショップ」を外部講師として提供することが可能です。「テーマに向き合う」や「自分で選択する」というと思わず身構えてしまいますが、「トリセツづくり」というライトな手法であれば、45分〜60分程度の授業の中で、楽しく実施できます。これはほんの一例です。

わたしたちが市民活動の一環で出版したこの本をもって、子どもたちと、教育に携わる人たちと共に、社会に学びの場をひらいていきたいと考えています。一緒にやってみましょう。ぜひお問い合わせください。

メール:kimitori2020★gmail.com(★→@)

▶︎『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』から、自由な発想の場が続々と生まれています。教育現場向けのワークショップの他にも、10のワークショップをご用意しています。ぜひポータルサイトをお訪ねください。

▶︎未来の先生フォーラム2021(旧・未来の先生展)に出展します。8/21(土)詳細が決定しましたら、notetwitterFacebookでご案内します。


長文をお読みいただき、ありがとうございました。
これからも、きみトリプロジェクトをどうぞよろしくお願いいたします。



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