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《花冷.》

 「元気でいなくちゃ。」と心が奮い立ったのは、祖母の落ち込んだ様子を聞いたからだった。

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 胃の痛みとの付き合いは長い。疲れがたまるとあらわれる「症状」というのは人それぞれにあると思う。花粉症でくしゃみが止まらなかったり、偏頭痛が起きたり、肩こりがひどくなったりと。わたしの場合は小さな頃からそれが胃痛(時々、頭痛。)なのだ。それでも、立っていられないということはほとんどないのだけれど、昨日はそのごく稀なことが起きた。この頃の花冷えがこたえたのだろう。

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 昼食を作ったものの食べられず、夕食も作ったものの食べられなかった。どちらの時も布団にもぐり込んでいた。その中にいると、祖母と母のいる食卓がずいぶん遠いところのように感じられる。小さな家の隣の部屋にもかかわらず。

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 「まながいない。」とうつむきながら夕食をとっていたという祖母の様子は、翌朝母から聞いた。いつもは一汁三菜にデザートまで食べられる彼女なのに、おかずを残したのだそう。「まなが作ったから」と頑張って食べようとしながらも。

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 愛おしくなった。わたしの不在をそこまで寂しがってくれる彼女のことが。そして、うんと元気でいなくちゃと想わされるのだった。愛してやまない人にはいつも美味しくごはんを食べてほしいから、笑っていてほしいから、上を向いていてほしいから、いつもわたしが元気いっぱいでいなくちゃと。

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