《60、30+.》

 ホワイトデーなので、「愛」にまつわるお話を。

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 祖父と多くの趣味が一緒であることは、以前にも綴った。美術鑑賞に、海外旅行、四季を愉しむこと。ちょうどこれを書き始める直前も、祖父が好きだった散歩道で早咲きの桜をみていた。綺麗だった。

 書くこともまたその一つだ。わたしは拙いnoteを日々のろのろ更新しているに過ぎないけれど、祖父は翻訳者として二冊を上梓している。

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 そして先日、最大の共通点に気がついた。「あー、やっぱり祖父とは趣味が合う!」と心底納得したそれだった。

 祖母だ。祖母を愛してやまないこと。これが祖父とわたしとの究極のつながりだった。美術館へ行けば、絵は大して観ないのに帰りにポストカードをたくさん求める祖母。海外旅行では、その場所の歴史にふれたい祖父に対し、ショッピングを何よりの愉しみにしている彼女。季節のお花を愛でるよりも、早く持参したお弁当を食べたい祖母と、絶妙なちぐはぐさを持ち合わせる夫婦だった。

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 それでも、恋愛して結婚して60年つれ添った。祖父の不器用さを、持ち前の明るさと器用さで包んできた祖母。祖父亡き今も、仕事関係の方々は祖母に逢いたいと連絡をくださる。それほど、祖父にとって欠かせない女性(ひと)だったのだと思う。こちらは彼女の孫に生まれてきて30年あまり。祖父を支えてきた明るさに、わたしも何度も何度も救われてきた。

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 お散歩道でも、美術館でも。祖父のことを頻繁に思い出す。初めてみるお花の名前を教えてもらいたくなったり、目の前の絵の感想を聞きたくなったりと。そして、この頃。隣で食事をする時、介護ベットで一緒に寝転んでいる時、祖母を通して祖父を感じる。

 生まれた時から大好きだった彼女に、ずっと前から惚れ込んでいた人がいたことを想う度、満開の桜の木の下で味わう至福が胸いっぱいに広がる。

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