子どもが心配4

子どもの脳についてわかったこと

一、二歳くらいまでは「褒めて育てる」のがいい
乳幼児期は身体系と脳神経系の土台が築かれる時期です。
とりわけ神経回路がつくられるのには臨界期があって、一歳くらいまでの期間に、神経回路が発達することがわかっています。
その時期に子供にとって良い環境を整えることが大切なのです。
具体的には、様々なものに手で触れることです。そうして何か、新しい動作が出来る様になったり、新しいことを覚えたり、、今まで出来なかった事が上手に出来る様になったりしたときは、心から褒めてあげる。
赤ちゃんは喜んで、また褒められたいと、学習への意欲をいっそう高めるのです。
一方しつけという大切な時期もあります。重要なのは発達に応じた順番です。生まれてからの数年間はしつけよりも愛情と関わりが大切なのです。
これは教育の基本であって、約六百年前の世阿弥の「風姿花伝」にも明瞭に整理されています。最初はこの世界に興味を持たせることから始まるのです。
昨今増えているように、まだ土台が築かれていないこの時期にお受験のために頑張らせるような教育を与えるのは感心しません。意味がないと言ってもいいくらいです。基本的な神経回路が構築される時期に必要なのは、自然環境からの本物の刺激です。情報が削ぎ落された人工物では、基本的な神経回路が正しく形成されません。
ー乳幼児期を過ぎたら、褒めて育てるのはそれほど有効ではなくなるんですか?ー
正しく褒めて育てることは一生にわたって大切だと思います。脳の報酬系は、動物が生存確率を高める為の根底にある脳機能だからです。
楽しいことが教育の最初の一歩です。
発達に応じて睡眠のリズムを正しくつくっていくのは、乳幼児教育の大原則の一つと言っていいでしょう。
「早寝」「早起き」「朝ごはん」というスローガンは大切な事なのです。日周リズムを獲得できないと、脳の学習機能に根本的な支障が生じてきますから。

以上は、脳科学と教育や、科学と倫理の問題まで研究対象を広げてこられた
東京大学先端科学技術研究センター・フェロー・ボードメンバーの理学博士
小泉英明氏が、養老孟司氏との対談で語られた内容からの抜粋です。詳しく読まれたい方は、「子どもが心配」PHP新書 刊をお読みください。