子どもが心配

この対談本は養老孟子氏と高橋孝雄(慶応義塾大学医学部小児科主任教授)氏が上記の「子供が心配」PHP研究所が発行した本から抜粋したものです。
1. 後悔したくない症候群
養老 私は最近、「自足」という言葉をよく使います。
   「自らを満たす・充足させる」という意味合いで、
   この「自足」の状態を悟っていないと、人生はなかなか上手くいか
   ないものでしょう。
   例えば猫は、自分の居心地の良い場所を見つければ、それで満足
   する。
   一方で、ジェフ・ペゾス(アマゾンの創業者)は宇宙旅行をしていま
   したが、これは自足以上の欲に見えてならない。
   ペゾスの例は極端にしても、個々人の過剰な欲が膨れ上がり、
   世界全体を道理に合わない方向に動かしているように思います。
高橋 なるほど、実に興味深い話です。それでは養老先生は、日本という国
   が自足する為には何が必要だと考えますか?
養老 何もかも手に入るわけではないけれど、生きているだけで満足でき
   る。そんな状況を、生まれてくる子供達に対して作ってあげないと
   いけないでしょう。何も難しいことではありません。
   親が子どもに対して「あなたたちが元気に飛び跳ねていてくれればい
   い」とさえ、願えばよいのです。
   にもかかわらず現状は、「あなたの将来のためだから」と言って子に
   過剰な教育を強制し、いまある楽しみを我慢させている。
   それは、親が自分の不安を子どもに投影させているだけです。
   子どもたちの日常の幸せを、まず考えてやらなければなりません。
高橋 まったく同感です。私はかねてより、「親は自分の願望を子に託
   すな」と訴えています。「こういう教育をしてやれば、自分には出来
   なかったこんな夢が実現するのではないか」というような気持ちが
   強すぎる。試したいのであれば、例えば我が子に英会話を習わせる
   前に、まず自分がやってみればいい。
   もちろん子供に期待する親心は当然のものですが、だからと言って
   あれもこれも押し付けて、日常の幸せを奪っては本末転倒です。
   「放っておく勇気」も必要なのです。
   結局のところ、子どもに後悔してほしくないからではなく、親自身が
   後悔したくないだけなのでしょう。
   私はそれを「後悔したくない症候群」と呼んでいます。

この本を読みながら、じぶんが育ってきた世界とあまりに差があり過ぎて、
今の子どもたちは本当に幸せなのだろうか?!と感じました。
小学校、中学校で、毎日の遊びや学びの中で体験できることをどれだけできているのかも心配です。それが、現状の大人たちなのではないかとも。
それを自分の子どもたちに押し付けていないか?!