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アパートのはなし

今自分が一人暮らしの住処としている、このアパートが大好きだ。

このひとつ前に住んでいたのも、同じくアパートだった。今のアパートから徒歩2分しないくらいの距離にあった。
そこは駅徒歩2分くらいのシャーメゾンで、結構カッコいい感じの外観と内装の家だったのだけれど、1F真西向きで、窓をあけたらすぐ隣のおうちなもんでどうも日当たりがよくなく、雨でも晴れでも薄暗くて、玄関を開けたタイミングでその日の天気を実感するような家だった。

新卒になったと同時に住んだ物件だった。当時は日当たり重視せず立地重視で家を選んでいた。
新卒ではいった会社の社風や部署が自分と合わなくてひどく苦しんだり、学生の頃から長く付き合っていた人とお別れしたり、父が突然亡くなったので社会人生活と諸々の手続きの両立ができず休職したり、それと同じ時期にずっと続けていたバンド活動も止まってしまったりと、正直順調とは言えないいろんなことが重なった2年を過ごした家だった。

で、ちょうどそのアパートの更新時期が近づいたタイミングが、父が亡くなってしばらくたって、ようやく気持ちと出入りしまくっていたお金が落ち着いてきた頃だった。「このつらかった時期のご褒美を自分にあげてもいいだろう」と、引っ越しを決意。
街は大好きだったので、同じ街で、もっと元気に生活できる物件を探し始めた。

この街にきたときから、とにかく感じがよくて信頼をがっつりおいている街の小さな不動産屋がある。トータス松本みたいなきっぷがいい雰囲気の代表さんと、占い師みたいな雰囲気のベテランのおばさまでやっているお店なのだけれど、おばさまが街や物件を案内してくれる感じがローカル情報満載で大好きで、その時もそこに物件相談をした。

そこでとにかく次は日当たりがいい部屋でできれば動物を飼いたくて、ペット可物件を探していたのだけれどやはり数が少なく、ワンルームの家賃と家設備が見合う感じがしない。
うーんどうしよう…やっぱり今の家更新するか〜??と店頭でなかば諦めていた頃、代表さんから提案いただいたのが今の家。

「実はオーナーさんに頼まれてウチが主導でつくっていてあと1ヶ月ほどで完成する物件がある。ペット可になる方針が急遽NGになってしまったから、ペットは飼えないのだけれど、今まんぷくさんが住んでいるアパートからすぐ近くで、まだ情報解禁していないから部屋が選び放題だよ。角の一番いい部屋でも、いま住んでいるところよりすこし家賃さがる。
白を基調とした部屋は南東むき。角部屋は南西に小窓もつける予定。建築中だけれど、天井も高いから確実に明るい部屋になるよ。気分転換の引っ越しには絶対もってこいだよ。」

そう言って特別にと、建築中の物件のドアなどの備品資料を見せてもらい、完成後の雰囲気をおおまかに教えてもらった。
いまとなっては当時のきもちを細かく思い出せないのだけれど、こんなきっぷのいい人たちが私に教えてくれるなんてさぞいい物件なんだろうと飛びついた。
建築中の家も見学させてもらった。完成していないから実際の雰囲気はわからなかったけれど、広さは申し分なかったし、こんなに感じの良い不動産屋さんがすすめてくれるのだからと信じてみることにした。
それが今の家だ。気づいたらここに決まっていた。

2月から入居開始になったのだけれど、他の部屋のだれよりも早く契約したおかげもあってしばらく大きなアパートに一人で住んでいる状態になるとのことだった。
なので入居開始日に鍵をもらって、前の家からカーテンと毛布と寝袋だけもって(なんせ徒歩2分位の距離だった)なにもない部屋で寝てみるなどをした。
起きたら、明るい。とにかく明るい。でも厳しい日差しではなくて優しい陽の光だった。なんの家具もまだないのに、それだけですぐにここに引っ越し決めてよかったと思えた。
その翌々日には友人4人に手伝ってもらい、自力引っ越しをした。
届いた家具を組みたてたり、収納何をおいたらいいか友人と一緒に考えたり、ニトリに買い出しに行ったり…
友人たちが本当に心を込めて私の引っ越しを手伝ってくれて、最後にはへとへとだったけれどみんなでピザを食べたりして、家が出来上がった。
みんなでつくった家だという感じがした。とっても嬉しかった。

住んでみると本当に日当たりがよくて、毎日明るい。目の前も住宅街の道路なので家が隣接しているわけではなく、それでいて静かな方だと思う。
新築なので設備は本当にきれいだし、実際この家賃でこの設備は本当にお得だったなと思う。なにより、友人みんなに手伝ってもらったので思い入れがある。
この家に住んでから、ちょっと挫折もあったけれど、今の仕事にも出会って順調に生活できている。家具も一通り揃って、一人なら一生ここで暮らしていけるような住み心地だ。

だから、今住んでいるアパートが大好きだ。


…なのだけれど。実はおそらく今年中に引っ越すことになると思う。
恋人と一緒に暮らすことになるので、さすがに1Kの間取りには住めないからだ。次の部屋探しもいましているのだけれど、それは別のおはなしとして…………
恋人と住むことになるのは本当に嬉しいし楽しみなのだけれど、今のアパートが好きすぎて、いつかくる引き渡しの日のことを思うといまからすでにとっても寂しい気持ちになっている。うう。次の人にわたすのが惜しいと思うくらい素敵な物件なのよ、この家は。


どうか次に住む家も、素敵な縁にたくさん恵まれて楽しく暮らせる家でありますように。


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