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物が語る、故に物語。

ライブビューイングでミュージカル『刀剣乱舞』髭切膝丸 双騎出陣2019を見た。
感想はずばり一言、すごかった。これに尽きます。
いままでのミュージカル『刀剣乱舞』とは一線を画した、より演劇寄りの作品になっていたことに驚いたし、演出にも、そして主演二人のポテンシャルの高さにも度肝を抜かれた。

双騎は発表された時点で「加州清光単騎出陣に倣って、ライブ形式になるのでは?」という見方が強かったように思うのだけど、今回このような形で提示してもらえたのは素晴らしいことだ。
三浦くん高野くんへの期待とか信頼とか、この座組みだからこそできる作品を作ろうという制作側の強い意思を感じたし、実際に観ていてそれがヒシヒシと伝わってきたのでとんでもない。

双騎はいろんな解釈ができるし、見た人の数だけ答えがあるからものすごく賛否があるようだけれど、わたしはひたすら絶賛の言葉しか出ません。
曽我物語の本筋と違うとか、源氏兄弟でやる意味があったのかとか(ある)、いままでの刀ミュの形でよかったのではないかとか、あれこれ重箱の隅をつつくのは無粋というものです。
短い期間にあれだけのものを作り上げた彼らをまずは賞賛したい。

Twitterで初めて2.5に触れた方がツイートされていてとても同意だったのだけど、双騎は「自分に教養がないことを思い知らされる」作品なんだと思う。
古典だとか伝統芸能だとか、あらゆるものを取り入れてエンタメに落とし込んでいるので、元々演劇やエンタメ全般が好きな人、ふんわりとでも歌舞伎のお約束事や曽我物語を知っている人は楽しめる。ものすごく楽しめる。
そしてかなりの確率でこれまでの刀ミュ作品の中でダントツに好きだと思う。
でも、刀ミュが演劇の入口でそこからまったく間口が広がっていなかったり、徹頭徹尾『源氏兄弟』が見たかった人にとっては「なんだこれ」となるだろうなとも。
きっとそういう人たちが求めている源氏兄弟がそこにはいないから、不満の声が出るんだろう。
でも、想像していたものと違うから、理解できないからイヤ、好きになれない、というのはとても勿体ないことなので、これを機会にいろいろなものに触れてみるのはどうだろう。
キャストさんをきっかけに、いろんな作品を見て知見を広げて欲しい。そうしたら刀ミュはもっといろんな楽しみ方ができる。
実際に学生の頃から歴史が嫌いで、その中でもとくに幕末大嫌い!だった自分が、少しずつその辺に興味を持って学んでいるのは刀ミュのおかげと言えるし。
そして否の意見はツイートしたり掲示板に書き込んだりするだけでなく、どんどん運営に声を上げるべき。観劇したなら尚のこと、そのためのアンケートなので、送ってください、あなたの声。

わたしはとにかく双騎の演出がとても好みなのだが、瞽女(ごぜ)の語り、最初と最後の人形のような源氏兄弟と彼らに被せられる仮面という装置の使い方がすごくいい。ダンサーさんが黒子のように振舞っていたのも、浄瑠璃や歌舞伎を想起させる。
口上や隈取、血飛沫などの歌舞伎的表現も、死の間際の心情を吐露する歌唱というミュージカルの王道を踏襲しているところもとても好き。こういうところが、とても愛しい。
そしてこの作品は膝丸のための物語でもあるのか、とも思いました。
箱根権現の別当から授かる太刀のシーンとかまさに。
つはものからの繋がりがそこにある。
それから、兄者が弟丸のことが大好きなことも伝わりました。
弟丸ちっとも気付いてなさそうだけど。
二振りの逸話もまるっと包括した絆やら縁やら、どれだけ離れ離れになろうと巡りあう運命なのだと公式が言い切ってるのが凄かった。

双騎はもしかしたら2.5次元作品と一般の演劇作品の間にうっすらと引かれた境界線を、ひらりと飛び越え得る作品なのではないかと思う。
2.5に偏見を持っている人にも、自信を持っておすすめできる。
勿論、個人的にはこれまでの刀ミュもおすすめできるけど、取っ掛かりとして一番抵抗なく入れる作品になったのではないかな。そう思います。

そうそう、二部にも触れておきたい。
二部とんでもなく大変な構成じゃないですか?
2人でやるにはあれが最大限かもしれない。息が上がっていてもなお歌い続けなければならない、激しく動きながら難しい曲もハモる、ハモる。
あの振り付けはほんとに鬼だ。
これはずっと酸欠状態だろうなあと、現地ではなくライビュ会場だから冷静に見れたけど、ほんとものすごいよ、あの運動量。
辛さ、しんどさも垣間見えるのに、それを笑顔で呑み込んで、限界を越えていこうと藻搔いている様は最高にエモい。エモでした。
三浦くん高野くんはダンスはもちろんのこと、声質も歌唱法もまったく違うのに、それらが合わさるとピタリとはまるしものすごく美しい。
互いのよさを打ち消し合わず、何倍にも何十倍にも膨らますそのポテンシャルたるや。
ファルセットもとてもきれいだったな。高野くんはもっと本格的にボイトレしたら新しい扉が開きそう。勘がいい人だろうから、あっという間に技術的な部分も習得しそう。いつか本格ミュージカルでの二人の共演も見てみたいと思わされた。
茅野さんが今後の演劇界を担っていくであろうと称したのもわかるし、そうなって欲しい。切磋琢磨して、ともに成長して欲しいものです。
そして、花組芝居の加納さんの舞がとてつもなく素敵でした。
一部での演じ分け、語り、ひたすらの母の愛。
若い二人を包み込む懐の深さ。
本当に本当に素晴らしかったです。生で見たかった・・・
花組芝居の公演にも行かねばならんなと強く思いました。

なるべく淡々と冷静に感想をまとめようと思うのだけど、ライビュでの衝撃とディレイでの発見が相俟って余計にまとまらなくなってしまった。
一度の体験でこんなに心を奪われる作品にはなかなか出会えないので、再演本当に待ち遠しいです。
また成長した彼らと出会える日を楽しみに、そして次こそは劇場で何度か観劇できますように。

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ありがとうございます!!!
あさくひろく
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