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オイメ

責められるのが怖い私は、誰かや何かを責めてしまいます。
あんなことさえなければ私の性格はもうちょっと、マシだった……! こうでさえなければ、落ちこぼれじゃなかったんだ……! と。

結局、自己嫌悪の責任転嫁なのです。

人に言えないことがいっぱいで、後ろめたくて、被害妄想や嫉妬だらけで。

私は子どもの頃、随分と長く、生き物をつかまえては虫ケースに閉じ込め、死なせてしまうということを繰り返していました。虫もトカゲも植物も、次から次へと。
「もうやめたい、殺したくない」と思ったのは高校生くらいの頃。それでも近年も、観葉植物を3鉢買って、全部枯らしました。

「育てたい」という欲求が強いのです。育成ゲームも好きです。ところが、生命に必要なもの、気持ち、愛情、共感能力、タイミング、記憶力、何もかもが欠如しているらしく、「お世話」というものができません。

もうやめようと、今はゲームで遊んでいます。虫を集めたり、モンスターを育てたり、そういうことはゲームで。

仕事も人生も、うまくいっているとは言い難いです。「仕事はできないけれど、創作の才能はあるんだ」って自分に信じ込ませようとしてきたけど、なかなか。食べるためとか毒があるとか、わざとじゃなく潰してしまったとか、そういう理由以外で、私は何匹殺してきたことでしょう。

わざと虐待をする、私はそういうタイプではない……と思いたいのですが、思い返せば残酷な遊びもやっていました。そして今も、非人道な動画を見て「フフッ」と笑ってしまうことも。

だから責められません。ニュースを見ていると、私と同じタイプだなぁと思う人がいっぱいいます。私は人としての自我も常識も良心もなかった。能力も劣っていた。愛情いっぱいの人が愛情のない人を責めるのが辛い。なのに私も、動物虐待、児童虐待、性犯罪、犯罪とまではいかなくても愛のない言動の数々が許せない。

同族嫌悪。自己嫌悪。思う通りにならない自分。
過去がどうであれ「私は変わったんだ」と言えれば。もっと人に対しても自分に対しても、穏やかになれるはずなのに。
……。


9月9日。コンビニ内でコクワガタを拾いました。

ひっくり返って力なくもがいており、正直もうダメだろうと思いました。
けれど秋のはじめに出会った、今年初めてのクワガタムシが嬉しくて、持っているジュースをあげようかなと考えたのち、まだ水道水の方が体に良いんじゃないかなと、水道水をあげました。

お水をあげた途端。コクワガタは、がばっとしがみつくように、お水をがぶ飲みしました。ノド乾いていたんだね……。

力強く、飲み続けるコクワガタ。少し元気になったようでした。
雨が降り始めました。

町は熱い。
黒いアスファルト。車が行き交う道。建物の数々。少ない草木。
夏は夜のアスファルトでさえ、異常な暑さです。

生き物たちを逃がした後、雨が降るとホッとします。水が飲めるね。熱さも和らぐね、と。

けれどこの間、弱ったセミも拾ったのに。なぜ私はセミにお水をあげなかったのか。水道がすぐそこにあったのに。
それに、なぜクワガタムシを特別扱いしたのか。
……。

コクワガタを、白い毒きのこの近くの、落ち葉だまりに逃がしました。

安全とは言えません。草刈りがあったり、人が踏み入ったりするし、すぐ近くは車道だし。

たしか小学生の頃、朝、車道の近くでコクワガタを見つけ、道の端に避けました。放課後、その道を通ると、コクワガタは車道に出て、車に轢かれて潰れていました。

もっと安全なところに逃がしてあげたかった。後悔しました。でも考えてみれば、安全なところなんて……。
……。


そうです、私は誰かじゃなく、自分に言いたかったんでした。

みんな一生懸命生きてる。
必死にもがく姿を笑わないで。
気持ち悪いとか汚いとか言わないで。
馬鹿にしないで。

私は命を弄んだ。笑った。
今でも殺す夢を見る。ゲームのバトルもまだ好き。
それでも、戦うことや殺すことを前提に人生を進め続けるのは、もう嫌。
まだシーモンキー飼いたいとか、ウキクサ育てたいとか思ってしまうけど。もしもやるなら、全力の全力で、ベストを尽くさないと。置き場所も決まっていない、環境も整えていない、違うことをしたくなって飽きるかもしれない、そんなときにペットの衝動買いはいけない。

命を奪わずに生きることは、私にはできない。死なせてしまった。殺してしまった。
これからも踏み潰すでしょう。食べるでしょう。戦うこともあるでしょう。けれど哀しみと敬意は持っていたい。哀しみこそが抑止力。

クワガタムシも蚊も同じ命でしょ。ただ懸命に生きているだけの……。

ノドが、心が渇きます。
自分の心の狭さが嫌になります。
嘘はつきたくないけど隠し事と矛盾はいっぱい、だから二転三転。弱みを見せれば責められるのが怖くて、今日も責任転嫁です。

いっぱい飲みましょう。水という生命体を通じて、私たちは星や空や海や生き物と心を通わせられるはず。


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