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野生動物と、人との距離感

 東京の奥地で沢登り(シャワークライミング)をしてきました。
そもそも、シャワークライミングっていうのは、山間部を流れる沢を水に濡れながらジャバジャバ遡上していく遊びです。深い水のたまりでは泳ぎ、岩に取り付き、滝を遡上する…。
 急峻できれいな水が流れる日本固有の、夏の遊びなんですよ。実は。

オトナのシャワークライミングin月夜見沢_200712_137

 こんだけキレイな天然ウォータースライダーを有する沢ですが、意外にもちょっと奥まった集落の裏から入っていく沢も多くあったりします。
 また沢筋は、元々不安定な地形から、あまり人が多く入らないこともあることもあり、多くの野生生物が集まってきています。

 今日の話題は、遡上を始めて間もなく、集落に近いエリアのことです。沢からも見える、並行する林道添いの森から、突然落成と何か大きな物体が激しく動く姿が目に入りました。
 「熊か!!」一瞬背筋が凍りましたが、その姿は、大きい立派なオスの鹿でした。「あ!鹿だ。」と思った次の瞬間、何か様子がおかしいことに気が付きました。その鹿は、くくり罠にかかっていたのです。

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 「くくり罠」というは、仕掛けを踏むとバネの力でワイヤーに足をくくられ、身動きが取れなくなってしまう仕掛けで、狩猟の方法や、近年では集落の田畑を荒らすシカやイノシシなどの害獣駆除にも使われている手法なんだそうです。

 今日かかっていた鹿は、まだやられた直後だったのでしょうか、持てうる力を全力で出し、必死に罠から逃れようと暴れまわっていました。外から見てると足が抜けるんじゃないか…と思うほどの力ですが、一度くくられたワイヤーは、鹿の力ではもはや取ることができないようです。

 出発して早々にすごいものを見てしまい、考えさせられました。
もしかすると、集落の方々が「食べるため」の狩猟だったのかもしれない。
それなら、まだ納得できる部分もあったかも。
 もし、これが害獣駆除の罠なんだとしたら…。
 人間と野生動物の距離感の結末って、こんなにも切ないのか…と。

 里山活動の衰退で、野生動物が町に降りてきてしまい、人間の耕作地を荒らす話は近年すでに珍しいものではありません。さらに地球温暖化によって冬に獣が「死ななく」なってしまい、その数がどんどん増えてしまっていること。これも問題です。

 ですが、もしかすると、あれもこれも、そのトリガーは元はと言えば人間が引いているものなのかも…。
 罠を仕掛けた集落の人がヒドイ…というわけではなく、食べるためではない理由で罠を仕掛けざるを得なかったとしたら。そこに引っかかるシカやイノシシの断末魔の叫びは…。我々人間に向けた切ないメッセージのようにも感じたのでした。

 野生動物と人間の、不必要に交わらない「いい距離感」を保つために、何が自分たちにもできるでしょうか…。
 本当の意味での「野生生物の尊重」を考えたいな、と思った、沢遊びのワンシーンでした。

 みなさんは、どう考えますか?どう「野生生物の尊重」を実現しますか?

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