歌声とは音なのか

息子が好きなテレサ・テンを通して思った事

2021年2月3日11

私には中2の息子がいる。彼はテレサ・テンが大好きできっかけは小3の頃一つの古いカセットテープを手にしたことだ。
このテープは私の両親が聴いていたもので30年近く前のものだと思う。
再生するうちに当然のごとく切れて聴けなくなり、そして予期せぬ出来事が苦手な自閉症の彼はパニックに陥るのだった。
この年のクリスマス。
サンタクロースは彼にCDアルバムを一枚プレゼントしてくれた。
テレサ・テンの名曲は数多あるが、彼は『ジャスミン慕情』という曲を好んで聴いていた。
‘’男は船で 女は港‘’
などなど、小3の少年が聴くには随分艶っぽい歌詞だったが、まぁいいか。

私は介護の仕事をしていて当時は戦前、戦中の曲を好むお年寄りが多く、ふと『蘇州夜曲』を覚えて歌ってみようと思いついた。
いわゆるサブスクで検索すると、失礼ながら名前は覚えていないが日本人歌手の方とテレサ・テンが歌うものが出てきた。
そこではたと気がついた。
テレサの声はやわらかい。そして耳に入る声が音として心地よいのだと。中国語歌詞で言葉の意味は分からないのだがそう感じた。

息子は耳が良く、風の音やサイレンの音、動物の鳴き真似などを妙にリアルな音声模写をよくする子どもだった。
もしかすると曲そのものではなくテレサの声(音)そのものを楽しんでいたのかもしれない。
幼い子どもをも魅了する声。まさに音楽。

時は流れて、今ではCDを聴いている様子は見られなくなったがテレビで昭和歌謡の番組があると変わらず正座で拝聴している。
その背中にそっと声をかけても母の声には振り向かない。

もう一度声をかける。
ねぇ、今度お母さんと一緒にエレカシ聴かない?と。


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