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読書「若い読者のための第三のチンパンジー②」~農業によって人類は本当に発展したのか?

先日、NHKで放映されたジャレド・ダイヤモンド氏の「ヒトの知恵」という番組を見ました。そこではアメリカの進化生物学者ジャレド・ダイヤモンド氏が学生たちにヒトの起源、行動の理由を説いており、非常に面白い内容でした。そこで彼の著作”若い読者のための第三のチンパンジー”という本を手に取りました。今回も引き続き本書で学んだことを書いていきたいと思います。

・農業は人類に恩恵をもたらしたのか?

農業が始まったのは1万年ほど前と言われています。農業のおかげで食料の生産量は飛躍的に増え、より多くの人間が生き延びられるようになりました。農業に関してはそういった人類発展につながった最大の発明といったイメージがありますが、一方で農業は様々な悪徳の道しるべでもあったとダイヤモンド氏は述べています。

農業を始める前、人類は狩猟採集民としての生活を強いられてきました。そのため、農業によって健康や長命、安全、余暇が私たちにもたらされたのだと信じられてきましたが、実はそうとは言い切れないことが調査の結果から明らかになっています。

まず健康面では、狩猟採集民の方がたんぱく質や様々なビタミンを摂取していたため農民よりも長命であり、病気で苦しむこともほとんど無かったことがわかっています。一方で農民の食生活は炭水化物にかたよっており、限られた品種の作物に依存していたため疫病などで作物に被害が生じると、たびたび飢饉に見舞われていました。

こうした健康状態の差は当時の人々の骨のようすからもわかっております。狩猟採集民は人口の5%が50歳以上まで生きられたのに対し、農民は1%程度でした。また、平均身長も狩猟採集民のほうが農民よりも15cm以上高いことがわかっています。ちなみに現代人も狩猟採集民のころの平均身長には追い付いていないそうです。

農業がもつ否定的な影響は3つの点から説明できるとダイヤモンド氏は述べています。一つはたんぱく質やビタミンなど多彩な食物を口にしていた狩猟採集民に対して農民は高デンプン質の植物にかたよっていたこと。二つ目は農民は数種の作物に依存していたため作物が凶作だと餓死の危機に瀕してしまうこと。最後に農民になり人口が密集することによって伝染病や寄生虫のような病気にかかる人が増えたこと。

狩猟採集民はヒトという種におけるもっとも長続きして成功した生活様式をとった最後の人間となります。農業は今日まで恵みを与えて続けてきたと考えがちですが、いま一度見直す必要があるのかもしれません。

(感想)
本書を読むまでダイヤモンド氏が言うように私も農業は人々の最大の発明だと考えていました。狩猟採集民の方が様々な栄養が採れていたため健康的だったということを知り、子供の頃に「好き嫌いしないで食べなさい!」と家族から口酸っぱく言われていたことを思い出しました。多様な栄養を採るということが健康に繋がるということはこのような変遷からもわかるのですね。最近では炭水化物を抜くダイエットやビーガンといった多様な食生活のトレンドがありますが、そのなかで健康的に過ごすためにはこのような点を頭に入れておくことが大切なんだなと思いました。

また、農業が拡大するにつれて狩猟採集民の生活は次第に追いやられていきました。時には殺し合ったこともあったそうです。こうした点からも人々がいかに共存するということに失敗してきたことが分かります。このような歴史からもお互いを認め合うことの大切さを再認識させられました。

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