見出し画像

読書「アフリカ経済の真実 -資源開発と紛争の論理」~ダイヤモンドを買うとテロリストが儲かる~

アフリカのマリでクーデターが起きたとき、ニュースでは多くの犠牲者と今後について討論されていた。ボコハラムといったテロリスト組織を耳にしたことはあったぐらいで、アフリカの実情を知らない私には全く理解できなかった。

そんなときに書店で目にしたのが、吉田敦著「アフリカ経済の真実 -資源開発と紛争の論理」であった。

目を通すと読みやすそうだったので買ったところ、一日で読み切ってしまうほど面白かった。本日はその感想について書きたい。

・店頭に並ぶ血で染まったダイヤモンド

本書はアフリカ経済が発展しない理由を先進国と結び付けて考えている。例えば先進国によるダイヤモンドの広まりはアフリカ大陸内の「闇取引」を加速させたと書かれている。

ダイヤモンドはアフリカのコンゴ民主共和国で採掘され、ヨーロッパをはじめとした先進国に送られ、ジュエリーショップにて販売される。そんなダイヤモンドの中には裏ルートで送られるものも多い。裏ルートというのはダイヤモンド採掘所を暴力で奪い取った集団が先進国に密輸する手法である。そのためには殺人や賄賂も厭わず、血で染まったダイヤモンドが売られているともいえる。

ダイヤモンドは言わずと知れた宝石界の王様であるが、私はそんな王様の出所を全く知らなかったことに気づかされた。

ダイヤモンドのような貴重な資源は先進国のターゲットになりやすく、同時にアフリカではテロリストや民族間による紛争や政治家の汚職を助長していると言える。先進国の物欲がアフリカを混沌に追い込んでいるのである。

こうした実情が世間に広まるとやみくもに不買運動を起こす人々がいるが、これは正しくない行動と考える。本質的にはダイヤモンドによる利益を不正を働く人々に渡さない対策が優先的であり、こうした安易な行動は経済の停滞を起こす。こうした本質から外れた行為は新型コロナウイルス対策によって過度な自粛を求めることや不当に扱われている家畜を食すことを止めることにもよく似ている。

・紛争はテロリストにも政府にもメリットが大きい

90年代にはコンゴ民主共和国やアルジェリアで紛争が多発した。犠牲者は500万人以上ともいわれている。そしてそうした国々の政府というのはまったく体を成しておらず、先進国からの資金援助なども政治家の私腹の肥やしになるだけとも書かれていた。

読んでいて驚いたのが紛争が絶えない本当の理由である。戦争をすると経済が活性化される。反政府勢力のテロリストにとって戦争は資金調達のための大きなチャンスである。そしてそれは紛争下で行政をとる政府高官にとっても汚職や賄賂などによる経済的メリットが大きくなるのだそうだ。そんな状態だからどちらも本気で停戦を望んではおらず、紛争は繰り返され、関係のない市民の血が流れ続けるのである。

・まだ助からないマダガスカル

最後の楽園と呼ばれる手つかずの自然が残された(といわれる)マダガスカルも例外ではなく、先進国によって蹂躙される目にあっている。マダガスカルではサファイヤが採れることからコンゴでのダイヤモンドと同じことが起きてしまっていて、ガイドブックや写真集に載る国とは大きく異なるのだそうだ。

・アフリカでの紛争を終わらせるためには

私はアフリカにおいて紛争を止めて経済を発展させるためには、政府役人の育成が必要なのではないかと考える。

本書で紹介されるアルジェリアは経済政策の失敗が治安悪化に直結し、大きな紛争を引き起こした。今後繰り返さないためには、政府役人を若い頃から欧米でエリート育成し、価値観を変えて母国に返すという施策をおこなう必要があるのではないか。

先進国からの支援金を増額することやNGOといった組織を派遣すべきという声もあるだろう。しかし、支援金は政治家への賄賂やテロリストへの資金にも繋がる。またNGOがせっかく建設した施設も金目になると思えばそうした反政府組織によって強奪されてしまう。

時間がかかる対策ではあるが、国民(政府役員が優先)を育成し、先進国の政治や価値観に触れさせることでエリート候補生を内面から変えていく。汚職と賄賂にまみれた政府を変えていく取り組みが何よりも大切であり、そうした対策に先進国は多大な資金を費やすことが必要だと思う。

・笑ってしまうほど不正の多いアフリカ

本書を読み進めるうちにアフリカ各国の不正の多さに呆れ、笑ってしまうほどであった。当たり前ではあるが他国には他国の事情と問題がたくさんあることに気づかされ、そのなかでも比較的統治された日本という国はとても恵まれた国なんだなと思うことができた。

また、海外旅行に行く際にはその国の歴史や背景を学んでから行くべきだなと思った。事前に知ることで、より多角的な見方ができ、その旅行が更に有意義になると思う。新型コロナウイルスが落ち着いて海外に出かける際はパンフレットと合わせて、そうした本を買って読もうと思う。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?