見出し画像

たかが箸、だからもったいないよ。

恥ずかしい話だが、私は20歳を過ぎるまで「箸」がきちんと持てなかった。鉛筆と同じ持ち方をしていて、その年齢まではさして恥ずかしいとは思わなかったし、親に怒られたり矯正された記憶もない。

しかし社会人になり、いろいろな人と食事をしたり取材先でご馳走になったりする機会ができ、他人に箸を使う場面を見られることが増えた。そこで「これはもしかしたら恥ずかしいことじゃないか」と思い、そこから自力で直した。あの時に気づかなければ、50歳を過ぎた今もおかしな箸の持ち方をしていたかもしれない。

当時は今以上にひねくれていたため「別に箸なんて正しく持てなくても食べられればいいじゃん」と思っていた。それでも、心のどこかに「箸がちゃんと持てないのは恥ずかしいこと」という思いがあったのだろう。20代のうちに恥ずかしいと「気づく」ことができて、よかったと思う。

最近のテレビは「食べる」番組がとても多い。ということは、人様がご飯を食べている場面を見る機会も多いということだ。芸能人だけでなく、普通の人が食事をしている場面もよく見る。

結構大変な箸の持ち方をしている人が多い。子どもや若い子たちだけではなく、私の親世代でも「なぜこの持ち方!?」と思うくらいの人がいる。食リポが多い芸能人でも、美人女優でも「ああ箸がひどい・・・」と残念な気持ちにさせてくれる人も多い。

ファミレスでも、すごい箸の持ち方をしている子やお皿に顔を近づけて食べている人をたまに見かける。どんな食べ方でも食べられるわけだし、人にとやかく言われるようなことでもないのかもしれない。でも、それこそ「たかが飯の食べ方」で育ち云々を言われるのはもったいないしアホらしいと思うので、何とか気づいてほしいとも思う。

箸を正しく持てないことはみっともないのだと気づかない人は、多分そのまま大人になり、親になり、やっぱり箸の持ち方を子どもに教えられないのかもしれない。まあ、スプーンやフォークでご飯なんて食べられるから箸の持ち方なんてどうでもいいじゃん? などという人もいるかもしれないし、しつけはその家の問題だろうから、あーだこーだと言うつもりはないけれど。

イマドキの人は箸の持ち方なんて気にしないのかと思いきや、意外に「大人になってから恥ずかしい思いをした」「箸が持てないといくら装っても台無し」「子どもの頃はうるさいと思ったけど、ちゃんと持てるように育ててくれて今は感謝してる」という人が周りの若い人にも多い。少し安心する。

私のダンナは基本的に人のやることにはうるさくないのだが、箸の持ち方には厳しい。いわく「箸の持ち方に、育った家の教育や教養が出る」。箸をきちんと持てないのは恥ずかしい。そんな当たり前のことを教えるのが、家での教育なのだろう。

20歳過ぎるまで箸を正しく持てなかった、家庭でのしつけが成っていなかった私ですら直すことができたのだから。ただし、自分で気づかないと直せないところがミソ。私たちの周りにも、50を過ぎているのに箸も茶碗もきちんと持てない人はいる。この年齢まで来ると周囲も注意する気にもなれないし、そこまで気づかなかったのだから仕方ないよね、とあきらめられてしまう。

今や外国人の方が、きちんと箸を持とうという意識がある。日本の文化に正しくならおうという気持ちがある彼らの前で、日本人がおかしな箸の持ち方をしていることを恥ずかしいと思うかどうか。

正しく持てない理由は人それぞれ。でもその先は「意識」「気づき」の問題だと思う。

たかが箸の持ち方。でも、たかが箸で育てた親や育った環境、自分の日本人としての美意識みたいなものが疑われてしまうのはもったいない。たかが箸だからこそ大切に、正しく持てたら、逆にそれだけで得することもあると思うのだ。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?