【読書】キネマの神様に会いたい

今日は本のレビューです。

概要

書名 キネマの神様
著者 原田マハ
発行 2008年

昨年末から原田マハさんの著書を少しずつ読んでいるところなのですが、先日このお話が実写映画化されるというニュースを知り、予約が殺到する前に急いで図書館で借りて読んでみました。

あらすじ

シネコンの誘致を仕事にしていた主人公・あゆみが 、社内の風当たりの強さに負けて退職し、ほぼ同時期に入院した父親が借金三昧であることが発覚します。もうどうにもならんと言う状況で、ひょんなことからあゆみは、父のおかげで映画雑誌の編集者になります。その雑誌のWebサイトで、映画好きの父が映画評論のような連載を始めることになります。 連載が話題になり、あゆみの元同僚のおかげで 英訳されて世界中に読まれるようになり、思いもよらぬ方向へ人生は転がっていきます。 映画のお陰で世界が変わり、人とのつながりが生まれていく、という物語です。

原田マハさんの小説の魅力

この本を読んで、安直ですが、映画館で映画を見たくなりました。主人公や、主人公の父親をはじめ、 この本の主要な登場人物はみんな映画が大好きです。 この本は、小説でありながら映画の素晴らしさ を存分に伝えてくれる作品です。ちょうど、個人的に、映画ってこんなに面白いんだ!と思っていたところだったので、ますます映画熱が高まりました。

先日書いた『楽園のカンヴァス』を読んだときには、絵をもっと見たくなりました。原田マハさんは、小説家として優れていらっしゃると思うのですが、私が特にいいなと思うのは、小説を基軸にして、 映画の世界、絵画の世界など、小説以外の世界の素晴らしさを伝えてくれることです。これは、今まで美術館の立ち上げに関わったり、展示会を仕掛けたりといった原田さんの幅広いキャリアが活かされた結果で、こういった小説を書けるのは、小説家デビュー前に他の畑を歩んできた原田さんならでは だろうな、と思いました。

人物設定が良い

原田さんの小説は、人物描写とか人物設定が上手いなと思います。この小説に出てくる主人公の父親や、主人公が働く会社のメンバーひとりひとり、みんなキャラが立っています。多くの登場人物が出てきても、誰が誰だっけとなることは少ないような気がします。どの登場人物も憎めないと言うか、本当に悪い人はいないという感じです。
例えば私は宮部みゆきさんの『模倣犯』を読んで、おもしろかったのですが、人はこんな風に残酷になれるんだ、と恐ろしくてたまらなくなりました。原田マハさんの小説は、そういった恐ろしさはなく、安心して幸せな気分で読み進められるところが良いなぁと思います。
登場人物の中で特に好きなのは、主人公の父親と 興太です。どちらも一癖ある人物ですが、憎めない 性格をうまく描写されているなと思います。

紹介される名作の数々

映画がテーマの小説なので、色々な映画が作中に登場します。ニューシネマパラダイス、フィールドオブドリームス、ビッグフィッシュ、フォレストガンプ、等々。映画の話が延々と続くにつれ、私も昔の映画を見てみたいなと思いました。

結末について

結末のもっていきかたについて、原田マハさんの別作品『まぐだら屋のマリア』を読んだ時思ったのですが、きれいにまとまりすぎて少し物足りないところもありました。フィクションなのでまとまってもらって一向に構わないのですが、途中の描写がリアルなだけに、結末に少しうまくいかないところがあってもいいかなと思いました。まぁこれは完全に個人の好みです。

まとめ

映画好きには是非読んで欲しいですし、映画が好きでない人でも楽しめる素敵な小説です。今年の終わりに映画化されるのがとても楽しみです!

以上

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