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トマトの色はその人生を表す

はじめに

今から皆さんにお話しするのは、あまり役に立たないトマトの選び方と、私が目指すトマトに関する事です。

この選び方が役に立たない理由はひとつ。
トマトを愛しトマトを見続けた人にしか理解できないからです。
ただ、これが少しでも皆さんのトマトライフに役立つのであれば幸いです。

色が与える印象

トップにあるトマトがふたつ並んだ画像をご覧ください。
Twitterで「どちらが美味しそう?」と尋ねたところ、こんなご意見を多くいただきました。

左…赤くて甘そう、歯ごたえが無さそう
右…硬そう、青臭そう、酸っぱそう

左は八百屋さんで購入したフルーツトマトで、右は私が育てた中玉トマト。
糖度は左が10.1、右が9.8とほぼ同じで、平均的なトマトの糖度が4〜5程度であることを考えると、どちらも甘いことには違いありません。
硬くて酸っぱいというのは青さの残る未熟なトマトのイメージだと思いますが、実は硬くて酸っぱいのは左なんです。
意外でしょう?
なぜ印象と実態が違うのか。
それは皆さんが表面的な色の比較で判断してしまったからです。
右のトマトは決して未熟ではないのです。

私の選び方

さあ、ひとつ目の本題です。
私のトマト選びの基準は色の深さ。
赤さではなく、深さです。
人生というのは1枚のキャンバスのようなものではないでしょうか。
様々な出会いや経験という名の絵の具で、人生というキャンバスは彩られていきます。
最も年齢を重ねた人間が、最も深みをもった人間とは限らないことを皆さんはご存知だと思います。
そしてそれはトマトも同じ事。
トマトの赤い色は年齢を表すものであり、深みを表すものではないのです。
私が思う美味しいトマトは、緑のキャンバスに少しずつ、少しずつ、様々な明度や彩度のオレンジを塗り重ねた色の深みをもつトマトです。
是非もう一度ふたつのトマトをご覧ください。
右のトマトには青さよりも塗り重ねたオレンジの深みを感じませんか?
とはいえ、これは本当にたくさんのトマトを見て感じていなければ理解はできません。
トマト農家でさえわからない人が大勢いるほどです。
人間もトマトも、見るべきポイントは本質的に同じだという事だけ知っていただければと思います。

私が目指すもの

さも私が作るトマトだけが深みをもつというような表現をしましたが、実はフルーツトマトの多くは同じような色の深みを持っています。
「それならトマト兄さんはフルーツトマトを目指してるの?」と思われるかもしれませんが、いえいえ、全く違います。
フルーツトマトの中には攻撃的な甘みや酸味をもつものもありますが、私が本当に表現したいのは糖度・酸味・旨み・食感の調和です。
糖度は飽くまで要素のひとつ。
フルーツトマトの栽培には水分ストレスや塩ストレスをコントロールする高度な技術が必要ですが、それではガリッとした食感になりやすく私が求める食感にはならないのです。
私がいつも考えているのは「如何に生長を遅らせ、自然の力を吸収させるか」。
太陽・気候・土壌の助けを借りながら、ゆっくりじっくり育ったトマトは強烈なインパクトこそありませんが、調和の取れた滑らかで優しいトマトになります。
植物は育てる人間に似ると言いますが、私が育てるトマトはその言葉通り、時に全力で頑張り、時に全力で怠け、時に全力で病み、時に全力でヘソを曲げ、それでも進み続け、たくさんの支えを受けて、なんとか結果を残してくれるトマト。
色の深みはそのトマトの生き様を表し、それを育てた人間の人生をも表します。
自分の歩んできた道にあった全てのものが調和するその時を信じて、私はトマトというキャンバスの前に立ち続けるのです。
時に怠けながら(笑)。

おわりに

世界中で最も栽培されている野菜はトマトであると聞いたことがあります。
真偽は定かではありませんが、世の中の多くの人々に愛される野菜である事は確かです。
それぞれの生産者にはそれぞれの目指すトマトがあり、どれが優れていると一概に言えるものではありません。
食べ方が変わると印象が変わるトマトもたくさんあります。
いつものスーパーでいつものトマトを、というのも良いですが、本当に自分の好みに合ったトマトを探してみるのもきっと楽しいですよ。
その時は是非、トマトと生産者の人生の深みを感じてみてください♪

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