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「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第39回 日本の命運を握るアラブ首長国連邦(UAE)の実態

 アラブ首長国連邦(UAE)と聞いて、皆様はどのような印象をお持ちでしょうか?恐らく多くの日本人が持っている印象は二つで、一つは「産油国」、もう一つは「ドバイの金持ちがいる国」というものです。この2つの印象はいずれも正しいものですが、一方で日本人のうち、UAEに親近感を抱いている人はそれほど多くない様にも思われます。実際殆どの日本人は石油がどこから輸入されているかなどには余り関心がありませんし、人生の内にドバイに行く機会がある人も数えるほどしかいないでしょう。
 
 しかし個々の日本人が持つ印象はさておき、UAEは日本にとって極めて重要な国です。彼らは日本の生殺与奪の権を握っていると言っても過言ではありません。現に日本の石油輸入のうちの34.7%をUAEに依存しており、そのシェアはサウジアラビアに次いで2位となっています。この輸入量は禁輸措置が課されたロシアからの石油輸入量の約10倍に当たります。つまり日本はUAEなしには生きられない訳です。ですから安全保障を考えるなら、私達日本人はUAEの実態について深く知っておく必要があります。
 
 この点で2022年は、日本とUAEの外交関係が樹立されてから50周年に当たります。そして余り報道されませんが、2022年11月からは外交樹立50周年を記念して、UAEから日本への旅行者がビザの事前登録なしで来日が可能になりました。そのため来年以降、日本へアラブの超富裕層が大勢来ることが予想されます。ですからこの機会にUAEについて理解を深めておくことは有用です。
 
 ではどうすればUAEの実態を知る事ができますか?この点で統計は重要です。統計を調べれば、これまでの50年間の日本とUAE、両国の関係を振り返る事ができます。それは過去の両国の絆を明らかにするとともに、今両国が抱えている問題も浮き彫りにしてくれるかもしれません。
 
 一方で日本の統計だけでなく、海外の統計にも注目する必要もあります。特にUAEは世界屈指の石油輸出国です。当然の事ながら、UAEは日本だけでなく世界中に向けて石油を輸出しています。そして事実として、UAEの輸出先の中で日本のシェアがとりわけ大きいという訳ではありません。言い換えるなら、日本にとってUAEとの関係は死活問題ですが、UAEにとって日本は取引相手国の一つに過ぎないのです。これはドバイの開発に関しても同様です。近年日本企業もドバイの開発に参画していますが、それよりも遥かに大きな金額と早いスピードで外資系企業は投資を行っています。ですからUAEの実態を知るためには、日本だけでなく海外の統計も精査する必要があります。
 
 しかし統計だけでは見えて来ない分野があります。それはUAEの人々の生活です。UAEというと「金持ちの国」というイメージがあると思いますが、一方でUAEは世界屈指の外国人比率の高い国です。確かに金持ちは大勢いますが、その生活を大勢の貧しい外国人労働者が支えています。このような実態はなかなか統計からは見えて来ず、現地に足を運んで、外国人労働者たちの話に耳を傾けて、初めて理解できるものです。ですから統計に加えて、人々の生活に注目する事は重要です。
 
 この点で私は海外の港湾で会社を経営していますが、ドバイ港にも有力なクライアントが複数います。ドバイ港は中東で最も大きな港で、欧州・アジア・アフリカのハブ港として機能しています。私はその貿易の最前線を見ると共に、港湾の現場で働く人たちの生活も目にしています。彼らの殆どは外国人労働者ですが、物価の非常に高いドバイで、日本より安価な賃金で毎日汗を流して働いています。こういった観光客では決して触れる機会の無いような状況を目の当たりにしているという点で、私はUAEについて語る上で確かに有利な立場に居ます。
 
 それで今日は「日本の命運を握るアラブ首長国連邦(UAE)の実態」というテーマでコラムを書きます。最初に日本の統計を通して、両国の関係がこれまでどのように推移してきたのかを振り返ります。次に世界の統計を通して、UAEの石油の輸出先やドバイへの投資について俯瞰します。更に私自身の海外における会社経営の経験も踏まえながら、今後日本はどのようにUAEと対峙していくべきかについて考察を述べたいと思います。長文になりますが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。

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マガジンは毎週1回、月4回更新します。コンテナ業界の裏話を含んだ自伝的小説「Container from Malaysia(コンテナ フロム マレーシア)」と、日本の構造的問題を海外の経営者の視点で統計と共に読み解くコラム「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」を隔週で更新。貿易に関心がある方、海運やコンテナ関連の株をお持ちの方、またマレーシア在住者を含む海外移住者やそれを目標にしている方、更には日本の行政や教育システムに疑問をお持ちの方に有用な情報をお届けします。

香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…

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