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地方×中小企業が考える、ものづくりの未来 #Makuakeミライカンファレンス2021

2021年9月12日に行われたMakuakeミライカンファレンス2021。「ミライを創る挑戦者が集い、ミライについて考える」というテーマのもと、Makuake実行者様や各分野のプロフェッショナルを招き、さまざまな業界の未来について語ったイベントの様子をレポートでお届けします。

『いま、地方の挑戦者がアツい。〜ニッポンのものづくり〜』のセッションには、広島県福山市でデニム生地を作るカイハラ株式会社 執行役員/営業本部長の稲垣博章氏、大阪で石鹸の製造販売を行う木村石鹸工業株式会社 代表取締役社長の木村祥一郎氏、新潟県三条市でアウトドア用品などの企画販売を行う株式会社山谷産業 代表取締役の山谷武範氏の3名が登壇。

Makuakeプロジェクトへの挑戦の経緯や、地元のものづくりに対する想いなどを伺いながら「日本のものづくりの未来を作るために、地方×中小企業ができること」について語られた。モデレーターは、株式会社マクアケ関西支社長の松岡宏治氏が務めました。

創業経緯とこれまでの挑戦

松岡:
現在、日本の企業のうち99%を占めると言われる中小企業の挑戦と成長が、日本の未来に大きく関わっています。本セッションでは、ゲストの皆様の挑戦や地方の可能性といったお話を伺い、地方発のものづくりの未来をどのように作っていけるかについてお話したいと思います。それではまず、皆様の自己紹介をお願いします。

稲垣氏(以下、敬称略):
カイハラ株式会社の稲垣です。当社は創業128年、広島県福山市に本社を構え、デニム生地の製造販売をしています。もともとは備後絣という織物を祖業としておりまして、1970年に日本初のデニム用のロープ染色機を作ったのがデニム事業の始まりです。

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松岡:
今ある日本のデニム生地の半分ほどがカイハラさんで作られているそうです。では続いて、木村様お願いします。

木村氏(以下、敬称略):
木村石鹸は大正13年創業の洗剤、洗浄剤を作っている会社です。もともとはOEM中心で表に出る仕事ではなかったのですが、2015年に自社ブランドを立ち上げ、2020年にはMakuakeでシャンプー、コンディショナーを作らせていただきました。

◆木村石鹸のプロジェクトページ

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松岡:
木村石鹸さんの製造に関する特徴を教えていただけますか?

木村:
釜炊きという方法で石鹸を作っています。非効率だからあまり表には出していなかった情報でしたが、自社ブランドをやる上ではわざわざ職人が手間暇かけて作っているということがアピールポイントになるんじゃないかと思い、今は木村石鹸の特徴としてお伝えしています。

松岡:
職人さんが手で触ったりしながら状態を確認する作り方ですよね?

木村:
そうです。職人がヘラで泡の状態を見たり、舐めたりすることもあります。最近の職人は舐めないですけどね(笑)

松岡:
時代とともに変わってきているんですね!では最後に、山谷様お願いします。

山谷氏(以下、敬称略):
新潟県三条市から来ました、山谷です。私たちの会社はお二方とは違い、自社で商品を製造するのではなく周りの企業に作ってもらって販売する企画会社という形です。三条市とお隣の燕市を合わせた燕三条という地域は、金属から木材、紙までなんでも作れるものづくりがしやすい地域です。当社自体は、漁具という漁師さんが使う道具を販売するところから始まり、20年前からECサイトで燕三条の商品を売ることに特化し始めました。

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松岡:
山谷産業さんのTwitterをフォローしているんですが、ユーザーの声を拾いながら商品企画、販売を行なっていらっしゃいますよね?

山谷:
そうですね、SNSで上がってきたお客様の声を参考に、商品化に取り組んでいます。中には、彫金をやっているお客様がうちの販売しているペグをデザインしたペンダントを作るなど、 買い手が作り手になるケースまで生まれています。

Makuakeでの挑戦から得た気づき

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松岡:
ここからは、皆様のこれまでの挑戦について紐解いていきたいと思います。まずカイハラさんは「モンスターストレッチ」という伸縮性に優れたデニムをMakuakeで販売されましたよね。素材開発だけで10年かかったと聞いていますが、開発に対する思いを教えていただけますか?

◆カイハラのプロジェクトページ

稲垣:
最近はストレッチのジーンズが増えてきましたが、ストレッチだと、本格的なデニムの顔が出しづらいという課題がありました。しかし、この部分を妥協せずにやっていきたいと思い、10年間、何100種類もの糸のテスト、織りのテストを重ねて、品質も顔も含めて世の中に出せる状態になったのが2020年です。

木村:
開発の人たちはMakuakeで挑戦することに前向きでしたか?

稲垣:
そうですね、開発だけでなく営業も皆そうなのですが、普段アパレルメーカーなどを通してしか消費者の声を聞けないので、今回直接生の声を聞けたことは大きかったです。あとはアパレルブランドさんと同じ目線に立てたというのは、今後の事業にとっても良い学びになりました。

松岡:
BtoBからBtoCの展開という点で言うと、木村石鹸さんも同じ流れだったのではないでしょうか?

木村:
そうですね、ただ私たちはOEMでしたが最終製品まで作っていたので、自分たちで売る覚悟、取引先との販路のバッティングがないかというところだけが、挑戦する上でのハードルでした。また、社内的にもビジネスモデルが違うと、オペレーションも全く変わってしまうので、社員のマインドチェンジが難しかったです。

松岡:
BtoCのブランドで成果を出すのって結構時間がかかると思うんですが、どうやって耐えたのですか?

木村:
何回か転機はありましたね。最初の転機はブランドを作って展示会に出した時。営業が初めて、バイヤーさんから会社のことを褒められたと言っていました。OEMの営業って、会社自体のことを褒められることがほとんどないのでそれで嬉しくなったみたいです。あとは実際に発売された商品が知っているお店に並んだり、メディアに取り上げられたり。そういうものが徐々に積み重なって、協力的になってきました。

作り手と売り手の協力が、ものづくりを盛り上げる

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松岡:
ここまでは作る側のお話を伺ってきましたが、山谷様のように売る側の方から見て、ここまでのお話はどのように受け取られていますか?

山谷:
売る側の会社で、どこの会社に作ってもらっているということを出している会社ってほぼないんですよね。うちは逆に、ECで販売する時に「この商品はここの工場で作っています」というのを出しているんです。当社が名前を出すことで、その会社に直接BtoBの注文がいくようになる。そうすれば、さらに燕三条という地域全体が盛り上がっていくという考えです。

◆村の鍛冶屋のプロジェクト

松岡:
山谷様のような連携を作る上で、情報の透明性とか想いみたいな部分が非常に大事だと感じました。他にも意識しているポイントはありますか?

山谷:
透明性と想いと、あとはエビデンスですね。野菜なども誰が作っているのかがブランドになるように、商品もどこが作っているのかがブランドになる。そこのエビデンスを正直に見せることで、ファンになってもらえると思います。

松岡:
木村石鹸さんの「12/JU-NI」のシャンプーもその辺り気にされて作ったのではないでしょうか?

木村:
私たちのシャンプーは、開発者が良いものを突き詰めていたらできたもの。だから、いわゆる植物由来だとか、ノンシリコンだとか、キャッチーな語り口が全くない状態でできあがってしまったんです。詳しい説明が必要な商品がいきなり店頭に並んでも売れないと思い、Makuakeみたいに説明を読んで買ってもらえるところから挑戦しようと思いました。

地方におけるものづくりのメリット・デメリット

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松岡:
燕三条は日本有数のものづくりの産地だと思うんですが、地方ならではのメリットや課題を感じる部分ってありますか?

山谷:
メリットは、燕三条が企業城下町ではなかったので、1つの大企業に頼ることなく、独自で技術を磨いているということ。金属、木工、紙、プラスチックなど、みんなでタッグを組めばさまざまなものが作れるというのが特徴だと思います。デメリットとしては、売る部分は卸売りに頼っていて「うちはものを作るだけ」という会社が多いことです。あとは百貨店や大きいホームセンター、スーパーに納めるのが成功だと思っていて、数を売って売上を上げていくことが成功への近道だと思っていた。それがまずい点かなと思いました。

松岡:
福山はどうでしょうか?デニムでいうと備後地区という地域全体で盛んだと思うのですが。

稲垣:
備中備後はデニム生地を作っている産地ではありますが、縮小しています。そのような中で、弊社はこれまで自社の事業経営ばかりに目が行きがちでしたが、産地含めての盛り上がりがないと日本全体のデニムの生産が下がっていく。高齢化が進んでいる企業も出てきているので、私たちがサポートできることは何かを考えながら、新しい取り組みをしていきたいと思います。

松岡:
これまで1つの企業が多数のnに売っていく1対nが主流だったと思いますが、これからはn対n、複数の会社やステークホルダーが一緒になって複数の人たちに売っていくという流れがあると思います。今、木村石鹸さんも参加されている、さまざまなものづくり企業が集まって行っている銀座の展示会「The Crafted」を企画しているアパレルブランド「KAPOK KNOT」の深井様や、マスクブランド「We'll」の藤井様も似たお話をされていました。木村様は参加してみて、みんなで一緒に売っていくことについてはどう思われますか?

木村:
個性の光るユニークなブランドって、それぞれターゲットが絞られると思うんですよね。そういうブランドが集まって一緒にプロモーションやマーケティングをすることは、今の時代的にいいんじゃないかなと思っています。みんなで協力していかないとスモールビジネスってなかなか成り立ちにくいと思いますので。

松岡:
山谷様はMakuakeに他の企業をご紹介下さったり、そのプロジェクトをFacebookで拡散されたりすると思うのですが、みんなで作ったものをみんなで売っていこうという世界観についてはどう思われますか?

山谷:
燕三条はもともと工場の祭典があって、そこで仲良くなって横のつながりができています。他の会社がイベントやれば手伝うとか、Makuakeをやれば発信するみたいな感じで相互補完しながらやっていますね。

松岡:
稲垣様、デニム業界やアパレル業界はどうでしょうか?コロナでアパレル業界は打撃を受けたりもしていると思うのですが。

稲垣:
大量消費の世の中は変わり、価値観あるものが残っていくと思います。ベースにあるのはかっこいいものや着心地がいいものという考えですが、その中に持続可能な、サスティナブルな要素をどう盛り込んでいくかということですよね。ファッション業界は、環境面で一番取り上げられる業界ではありますから。その辺りを、ファッション性といかに融合させていくかがこれから大事かなと思います。

ものづくりの未来のために、地方×中小企業ができること

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松岡:
ものづくりの縦割りになっていた部分を、皆で一緒に、そして消費者も一緒にものづくりをしていけば、無駄なものを作らなくて済む。消費者が欲しいものを作るため、そこを繋いでいく存在としてMakuakeもありたいなと思いました。

では、最後に一言ずつコメントをいただきたいと思います。

山谷:
私たちが将来的にやりたいのは燕三条に人をもっと呼ぶこと。当社の商品を作ってくれている工場の見学を私たちがツアー会社として行って、気になった商品を当社の店で買ってもらうようなことができたらいいなと考えています。

木村:
地方って何もないというような、デメリットの方が強調されやすいですが、私は地方にある方が輝きやすいと思っています。逆に何もないことが地方や地域のメリットになると考えて、私たちも取り組んでいきたいと思います。

稲垣:
ファッションブランドの世界観も大切にしながら、地元の人たちにも愛される会社じゃないといけないと思っています。業界の中のカイハラと広島県の中のカイハラ、どちらも大事にしていきたいと思います。


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