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水の鼓動が見える場所、ロシア・バイカル湖


ーギュッギュッとなる足音は日常では聞けない音楽のように、私たちを楽しませてくれたものだった。ー

ロシア・ウラジオストクが近年、2時間半でいけるヨーロッパとして日本からの旅行者が倍増している。ネットでビザを取れることでも気軽に足を運べる場所となっているのだろう。

そんな中今回は、ロシアのリストビャンカにあるバイカル湖を訪れた。世界一の透明度と深さを誇り、世界最古の歴史のあるバイカル湖。1日の気温差は20度以上にもなることがあり、寒さが非常に厳しい世界。訪れた2月には肌感マイナス30度の世界を体感した。

リストビャンカ・バイカル湖に向かう旅路は、ウラジオストク⇨イルクーツク⇨バスで1時間ほど走る。日本からは計8時間ほどかかる場所。ロシアではホステル以外英語がほぼ通じず、ロシア語を公用語としているため、タクシーを乗るときには、先に値段交渉した方が無難だ。かくいう私たちも後に交渉したが、初回2000ルーブル(3000円)ほど上乗せられ、その事実をホステルに着いてから知ることになる。

イルクーツクからリストビャンカに向かうのは乗り合いバス。バスの席が満員になるまで、出発しないのだが、満員になるまでは15分ほどもかからなかった。

出発して、高いビルを通り過ぎ、自然が増えてきた頃、見えてきたバイカル湖は想像していた凍った湖ではなく、流れの速い普通の湖だった。カメラマンと「凍ってない…」と開いた口が塞がらなかったのだが、その不安は早とちりだったことに気づく。

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見えてきた、一面の白銀世界に息を飲んだ。 

遠くに見えるあの世界へ早く溶け込みたいと思わせるほどの圧倒感。はやる気持ちを抑えながら、湖近くのバスターミナルに降り立って、ホステルへと向かった。ギュッギュッとなる足音は日常では聞けない音楽のように、私たちを楽しませてくれたものだった。

しかしその楽しみもつかの間、2人とも初めて雪道の洗礼受けることになる。撮影機材を担いで歩く往復30分ほどの雪の坂道は驚くほどの体力を消耗させる。厚着した服の中には大量の汗。「堪えろ、堪えろ、、そうすれば…」と思いながら見た先には、湖が織りなす氷面のアートに心を躍らせた。

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厚い氷の中に見える

切り込みのようなラインが生きる血脈のように、

氷の中で固まった気泡が水の呼吸のように、

普段見えない水の命の鼓動が見える。

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湖の氷の上を歩いているはずなのに、地球や宇宙に溶け込んだような感覚に一瞬陥いることがあった。すごく不思議な感覚だったが、

「この1つ1つが宇宙で、地球なんだ。」

そう思うと、しっくりと胸に落ちる感覚だった。

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「水が呼吸しているってこういうことなんだ。生きてるんだね。」

氷の不思議な模様たちを見た後にカメラマンに問いかけたこの言葉が、このプロジェクトを始めるきっかけとなった言葉だった。

自分たちが今見ている景色を、世界中の方達に伝えるべきなのではないかという使命感を感じずにはいられないほどの絶景だった。

日本からほんの8時間の先に水の命の鼓動を見ることができる場所がある。

バイカル湖を日本でリサーチしていた時には、そんなことを考えなかったが、現地の湖の上に立つと想像を超えた言葉や写真たちが、生まれてくる。1つ1つの心の感じ方を知らずに生きていくより、もっとこの世界のことを知って、それを発信していきたいと思った。

僕らはまだまだ未熟で、伝えられることはほんの少しの世界かもしれないが、【勝手に機内誌】を手にとってくれた方々に、伝わる「何か」を作っていきたい。

写真:阿部恭平  文:藤本真央

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