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讃岐へ嫁ぐ八郎潟のつくだ煮

大学進学を機に上京して約15年間、東京で暮らしました。2009年もほぼ暮れにさしかかる頃、家族と共に秋田に戻り、翌年の2010年春に立ち上げたのがcasane tsumuguです。立ち上げた、と言っても個人事業で、学生以来の秋田を思い出しながら、というよりゼロから学び直すように、県内各地を走り回って、人に会い、話し、見聞きし、学ぶことを繰り返していました。そのとき出会った人たちは、ぼくにとっていまも大切な存在です。

秋田に戻るに至る経緯や想いは、長くなるのでまた別の機会に書きたいと思いますが、ぼくが秋田でやりたかったことは、すごく簡単に言うと、このローカルから、主体性を持って生み出すこと。

既に押し寄せていた“グローバル”なる波よりも以前から、東京を中心とする都市部と地方(=下請け的な構造)の関係は、ものづくりの生産現場に近いローカルに一番しわ寄せが及んでいて、グローバル化どうこう以前に課題が山積しているようにぼくには見えました。そんな、都市部の誰かのイエス・ノーに、ローカルが大きく左右されるような状況を、少しでも変えていきたかった。

東京時代、働いていたのは、主に全国のJR駅に隣接する“駅ビル”と呼ばれる商業施設の企画・デザイン・コンサルを主業務とする会社。駅ビルの新設やリニューアルを、施工(工事)を除いて、調査や企画から施設全体の内装デザイン、そして内装監理、オープン後のコンサルティングまで全て行う広義のデザイン会社でした。クライアントは全国各地の主要駅ビルのデベロッパーで、ぼくが働いていたのは東京の会社だったけど、秋田に戻ってくるまでの数年間、ぼくの仕事の大半は関西や広島、岡山、金沢などの西日本でした。このときの経験は巡り巡っていまとても活かされている。だけど、「casane tsumugu」で始めたのは、直接的には全く異なる仕事。本当にゼロから始めたチャレンジでした。

一般的なデザイン業は、いわゆる請負業。誰かのアクションがあって、こちらに依頼がある。要は誰かのことの一部を、対価を得て行う仕事。「casane tsumugu」はそうではなく、メーカーになろうと決めた。簡単に言うと販売者になろうと。デザインフィーをもらって生きていくのではなく、製造側、現場と一緒にリスクを背負って挑戦して、一緒に成長していきたい。そう思ったから。

ということで、だいぶ前置きが長くなった挙げ句、めちゃくちゃ話が飛びますが、そんななか出会った、秋田県潟上市(旧 昭和町)の老舗つくだ煮屋さん、「カクチョウ」こと佐藤食品さんと一緒につくった商品が、この度、讃岐の国、高松の素敵なお店まちのシューレ963で開催される東北フェアに嫁ぎます。

このご縁をくれたのは、岩手県盛岡市の素敵な家具屋Holzの平山くん。ものづくりも行う、この世界の大先輩。本当にありがとう。きっかけが平山くんなので、東北フェアは岩手の充実っぷりがハンパない。笑

佐藤食品さんとつくっている「casane tumugu」のつくだ煮、2013年にグッドデザイン賞も頂戴しています。秋田県の食品としては当時初の受賞で、たぶんいまもこの商品だけなんじゃないかなと。写真の水色の方「磯のり白魚」は、佐藤食品さんのすぐそば、八郎潟での白魚が昨今不漁のため、今回販売されませんが、黄色の「からあげミックス(若さぎ等)」と桃色の「若さぎすりごま」の二つを販売いただきます。

つくだ煮はもともと保存食なので、保存料はもちろん、この商品は添加物も一切使っていません。また、原材料の水飴も琥珀色の精製度の低いものを使用するなど、佐藤食品さんのこだわりが詰まった一品です。漁場となる八郎潟と佐藤食品さんの距離の近さは、朝水揚げされた魚を市場を介さず直接加工場に運び、抜群の鮮度をつくだ煮に閉じ込め、旬を長く味わうことを可能にしてます。昔から続く地域との関係性と、先人たちの知恵と技術の結晶。

この商品は、みなさんが想像される一般的なつくだ煮とは違って、“からあげ”という名前のように、カラッとサクサクした食感で、スナック感覚でお召し上がりいただけます。カルシウムの塊みたいなものなので、お子さまのおやつはもちろん、ビールのアテにも最高です!

そして、もうひとつ嬉しいのは、直接的な「casane tsumugu」の商品ではないのだけど、プロデュース的な関わりで商品パッケージやパンフなど丸ごとお手伝いさせてもらっている、秋田県横手市増田の羽場こうじ店が営む旬菜みそ茶屋くらをの米麹茶も一緒に嫁ぐこと。ぼくが売り込む前に「まちのシューレ963」の若宮さんから、「くらを」の米麹茶も販売したいと相談をもらったのは、とても嬉しいことでした。

今年の6月、一緒にこの羽場こうじ店を訪ねた発酵デザイナーの小倉ヒラクくんも驚いた羽場の麹。「酒蔵が吟醸酒造りに使うくらい甘い麹。これを酒米じゃなくて食用米でつくってるなんて、めちゃくちゃすごい。ぼくが見てきた全国の町場の麹屋の中でも三本の指に入る」と太鼓判を押してくれました。

そんな羽場の麹でつくられた米麹茶。優しさに溢れた自然な甘みのお茶に仕上がっています。ノンカフェインなので、お子さまや妊娠中の女性にもおすすめですよ。

どちらの商品も四国で販売されるのは初めて。お近くのみなさま、この機会に北東北の食にぜひ触れてみてください。

まちのシューレ963「東北フェア」


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