見出し画像

遠くにあるものと思っていた

#今日の現場

年間を通じて国内外から多くの観光客が訪れる秋田県仙北市角館。観光客の目的は武家屋敷と呼ばれる黒塀が並ぶかつての武家の街並み。春は空を覆い尽くすような桜、夏は生命力に満ち溢れた豊かな緑、秋はそれらが紅葉し、その美しさは言うまでもなく、深い雪に覆われる冬もまた、冷たく澄んだ空気が与えてくれる心地よい緊張感とあいまったモノクロームの詩的な美しさがある。

JR角館駅を出て真っ直ぐ歩くこと10分。突き当たりを右に曲がると国の重要建造物群保存地区に指定されている武家屋敷の街並みが見えてくる。突き当たりを左に曲がると、すぐそこにあるのが国の伝統的工芸品、秋田の樺細工の製造元、八柳。

八柳さんを訪ねるのは、今回で三度目。偶然か必然か、いろいろな方とのご縁が重なるようなきっかけで、春から少しお手伝いさせていただくことになった。

それにしても、八柳さんの店舗は、いつ来ても本当に素敵な建物で惚れ惚れしてしまう。そして歴史のなせる技なのか、その佇まいもたまらなく美しい。小雨降る曇り空の今日のような日でさえ、美しくそこにある。

樺細工と並んで、秋田を代表する伝統的工芸品、大館曲げわっぱの商品(と言っても、お弁当箱ではなく時計と鏡だけど…)を販売しているなかで、これまで何度となくいろんな人から「樺細工はやらないんですか?」と、言われてきた。

その都度、お茶を濁すような返事を続けてきた。だけど、ずっと、何かがしっくり来ていなかった。もちろん幼い頃から自宅にそれはあったわけだけれど、樺細工と関わる接点が見出せなかった。なんだか、すごく遠くにあるものと思っていた。

ただ、いまとなっては、単に自分がその魅力や技術を理解していなかっただけなのだと、恥ずかしさで自分で穴を掘ってでも潜り込んでそのまま冬眠してしまいたいくらいだ。

でも、正直、桜の皮を貼って、それが一体何になるのかと、そんなふうに思っていた。

回を重ね、様々なことが徐々に整理されてきて、今回で、ぼんやりとだが方向性も見え始めた気がする。

伝統的工芸品が伝統的工芸品らしくあるためのこだわりと、伝統的工芸品の枠から羽ばたいていくための、歴史を経て積み重ねられてきた技術、その交差点に未来があると信じている。

白いものが白く見えるように。赤いものが赤いと受け取ってもらえ、その色に魅力を感じてもらえるように。歴史と継続の素晴らしさをそのまま伝えられるように。

#樺細工 #樺細工八柳 #樺細工は湿気と乾燥に強いんだよ #樺細工茶筒 #角館 #伝統的工芸品 #樺 #山桜 #kakunodate #kakunodatesamuraivillage #akita #japan #japaneseculture #japanesetraditionalcrafts #craft #crafts #craftsmanship

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?